日米はAIIBをどのように見ているのか

 今回、参加を見送った日米はAIIBをどのように見ているのか。

 日本政府は、AIIBの組織運営や融資条件が不透明だとして、再三、中国側に問い合わせてきたが、回答は得られなかったという。安倍晋三首相も公正なガバナンス(組織統治)などが確立できるのか不透明として「慎重な検討が必要」という考えだ。

 習近平国家主席はAIIBは日本主導のADBと補完関係にあると説明するが、実態は当たり前だが主導権争いだ。経済同友会の長谷川閑史代表幹事が「産業界からすれば、これに参加しないことによってインフラビジネスが不利になるようなことだけはないようにしていただきたい」と政府に要望するなど、危機感を募らせていることからも窺える。

 米国にとっては中国の人民元が世界の基軸通貨であるドルを脅かす怖れが現実味を帯びてきたことに警戒している。これまでも国際通貨基金(IMF)に対する中国の改革案を退けるなど、中国の影響力が及ぶ事案を極力排除してきた。

 だが、中国は世界最大の外貨準備高を保有する。そして、アジアが持つ巨額の貯蓄と、それ以上に大きなインフラ整備(新しい橋や道路その他、開発に必要なもの)のニーズのマッチングを行う新たな金融機関となるのがのAIIBだ。

 米国はこれまでロビー活動を通じて、G8をはじめとする国々にAIIBに乗らないよう働きかけてきたが、結局それはうまくいかなかった。米国オバマ政権の影響力の低下が改めて浮き彫りになった格好だ。

最終回:米中の相互不信を解くカギはあるか?
米中関係を展望する:長期

「米中新時代と日本の針路」より
米中関係には相互不信がつきまとう。米国は中国を、既存秩序の破壊者と見る。いっぽう中国は「米国は中国を封じ込めようとする」と見る。この関係が改善するか、いっそう悪くなるかは、次代を背負う若者にかかっている。[全文を読む]


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