中国がAIIBに込めた狙いとは

 そもそも中国はこのAIIBをどういう狙いで提案したのか。それを読み解くには中国の覇権主義からみていくと分かりやすい。

 中国の習近平国家主席は昨年11月、「中央外事工作会議」を北京で開き、「重要談話」を発表した。そこで「『一帯一路』建設を積極的に推進し、各方面との利益の融合点を模索し、ウィンウィンの関係を促進する」と宣言した。

 「一帯一路」(One Belt and One Road)とは、北京からカザフスタン、ウズベキスタン、イラン、ギリシャ、トルコ経由でロシアやヨーロッパにまで繋がるシルクロード経済帯(One Belt)と、南シナ海からインド洋を抜けてケニア、アフリカ大陸に至る海洋ルート(One Road)を指す。2013年9月に発表したこの構想は、中国の貿易ルートであるこのエリアを開発し、発展させるというものだ。

 さらにAIIBを補完する形で2014年11月8日、中国が400億元(約7600億円)を出資して「シルクロード基金」が設立された。この基金の目的は、「一帯一路」沿線国の基礎インフラ、資源開発、産業協力に関するプロジェクトへの融資である。

 だが、この基金だけでは「一帯一路」構想を実現することはできない。そこで欧州勢も参加するAIIBがシルクロード基金に融資し、シルクロード基金が直接投資を行う窓口となって、この構想を実行する。

 AIIBとシルクロード基金については人民元決済が優先される計画で、これにより人民元の国際通貨への道も切り開く狙いだ。

“習近平外交”の幕開け
外交方針を決める会議で示された「習近平重要談話」を読む

「米中新時代と日本の針路」より
習近平国家主席は11月28〜29日、8年ぶり、史上2回目の「中央外事工作会議」を北京で開催し、重要談話を発表した。今回はこの談話の内容を分析する。そこからは“習近平外交”の幕開けが読み取れる。[全文を読む]


中国主導のアジアインフラ投資銀行の行方
米国とも中国とも対等であるための方策を

「中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス」より
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード基金に、日本はどのように関わるべきか。それを考えるには、その先にある「一帯一路」政策が狙う地政学的意味を、もう一度整理しておいた方がいいだろう。[全文を読む]


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