【積層ゴム不法認定問題】色々延焼しそうな気配です

sekisou

http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2015/03/33207/0319_n1/

先日(3月13日)、免震建物に使用されている東洋ゴム工業製(子会社製造)の免震ゴムが、性能において偽装のあったことが発覚し大きな社会問題となっている。55棟の建物への使用が確認されており、メーカーには建物の所有者や住民からの問い合わせが殺到している状況だ。
メーカーは、「1カ月以内に調査を終え安全性に疑念があれば交換や修理を行い、1年以内の作業完了を目指す」とコメントしているが、現実的に全体の対応は不可能な時期設定だと思われる。メーカーと国は落としどころを探して、何とかお茶を濁して乗り切るつもりではないか。

ここで問題となるのは、仮に不良品であっても、「調査の結果、法的安全性を確認できれば、それで良いのか?」という問題である。ビルやマンション(区分所有者)のオーナーは、建物の構造耐力も含めた総合的な価値への対価を支払って購入しているのである。仮に、現在、法的かつ工学的に150%(50%の余力)の構造耐力を持っていた建物(通常、免震建物は一般の建物よりもかなり余力を持たせる場合が多い)が、今回の免震ゴムの性能偽装のため構造耐力が110%という評価となった場合、法的な安全性は確認されるが、想定を大きく上回る巨大地震等に対する余力としての40%の性能(構造耐力)を、一方的に毀損(略奪)したことになる。
「免震建物は一般の建物よりもかなり余力を持たせる場合が多い」という理由は、免震装置に不具合があった場合、建物の危険性が非常に高まるからである
構造耐力の面から見れば、当然のことながら建物の価値は減少しているので、将来に向けての改造・改築などに、現時点において多大なブレーキを踏んだことになる。メーカーおよび元請施工業者は、減少した価値について、オーナーへの責任を誠実に果たすべきである

私は、これまで欠陥マンション等の建築紛争に関して、オーナーや住民の技術支援を行ってきた。だからこそ、この事態にエンドユーザー目線で取り組み、毀損した損害を取り戻すべきだと思う。免震建物は、建物に取り込む地震力をかなり低く作用させる設計をしているため、一般的な建物(耐震設計)よりも部材等が極端に小さく設計されている。免震要素である肝心要の免震ゴムの性能が悪ければ相当危険な状態になり、建物の安全性・価値を大幅に損なってしまうのである。東洋ゴム以外の製品も同様だという情報も入ってきており、さらに問題が拡大するのではないかと懸念している。

安全の確認に、時効などは存在しない。公共建築物も、税金を投入しているのであるから同様である。
柱脚のゴム部分を交換する場合、すべての柱脚のゴム交換作業の期間にわたり、ジャッキアップした状態が続くのである。たとえるなら、ゴム交換期間中、ずっとフォークリフトで建物を宙に浮かせた状態が続くのである。もし、この宙に浮いた期間中に震度5以上の地震が発生した場合、上部建物が脆弱であるため、想像を絶する被害が想定される。ちなみに、この程度の地震は日常茶飯事と言っても良いほど頻繁に発生している。
このことを考慮に入れると、メーカーである東洋ゴムの不具合対応は、実用上の意味を成さないものであると考える。

【福岡在住 N建築士のつぶやき】

 

我が家で使われているのはこのシリーズの高減衰ゴム系積層ゴムです。

http://www.toyo-ci.co.jp/product/isolation/construction/construction_01_01-1.html

HRBシリーズ
せん断弾性係数G:0.35N/mm2
認定番号:MVBR-0437

同様の製品を製造しているブリジストンのHPでは、高減衰ゴム系積層ゴムに使用されている特殊ゴムについての解説として以下のように述べています。

高減衰ゴムでは、天然ゴムと合成ゴムを混合したゴム高分子に、カーボンブラックや樹脂系材料を充填することで高い減衰性を与えています。 充填材とゴム高分子は物理的・化学的な結合によって一種の凝集体からなる不均一構造を形成しており、この凝集体に外部から応力が作用し た場合、物理結合が一時的に切断されたり、化学結合が切断されるため、ゴム高分子とカーボン界面、ゴム高分子と樹脂界面、高分子同士間での摩擦が生じま す。さらに不均一構造の変形(カーボンの再配置化や樹脂の塑性変形など)が加わり、高減衰ゴム材料は減衰性能を発現します。

荷重履歴依存性

と、乳化したラテックス(ゴム原材)に色々な素材を混ぜ込んでにコロイド状にしたものを固めているために、通常の天然ゴム系積層ゴムより遥かに高い不純物による内部摩擦が発生し減衰性能を発揮するという仕組みのようで、素材のブレンドや均一性をいかに保つかのノウハウがかなり要求される素材だそうです。

一方、天然ゴム系積層ゴムはこれらのブレンドノウハウが必要でない柔らかいゴムなので製造は比較的楽との事。

つまるところ製造難易度は

高減衰ゴム系積層ゴム>>>>天然ゴム系積層ゴム

で、国内で高減衰ゴム系積層ゴムを製造できるのはブリジストンと東洋ゴムのみです(シェアはブリジストン80%東洋ゴム20%)

でもって東洋ゴムが果たしてまともな高減衰ゴム系積層ゴムを製造する能力があったのかが怪しくなってきたのが、この報道です。

 

http://www.kanaloco.jp/article/86067/cms_id/133432

同社の担当者は「今、いろいろ対応しているが、国の認定を受けた性能のゴムを再現できていない」と説明。「再認定される技術を早期に確立して生産対応する とともに、他社にも生産をお願いしている」とした。ただ、ゴム交換に協力する方針のブリヂストン社の製品は取り付けボルトの形状が異なるなどして「そのま ま入れ替えられるわけではない」とも指摘した。こうした状況を踏まえ、交換時期は「読めない」と述べるにとどめた。

 

この報道を見るに製造能力については相当品質や歩留まりに問題があるか、最悪製造能力がないのに製造していた事が伺えます。

また、別の報道では、全ての東洋ゴム製「高減衰ゴム系積層ゴム」について以下の様な厳しい現実であることが報じられています。

 

http://mainichi.jp/select/news/20150330k0000m040127000c.html

東洋ゴム免震不正:「高機能型」129棟焦点

東洋ゴム工業(大阪市)の免震装置の性能改ざん問題は、データを改ざんしたとされる担当者が、最初に判明した55棟以外での不正を認めたことで、性 能不足の物件が増える恐れが強まった。同社は過去に納入したすべての免震装置について調査を進めているが、焦点となるのは129棟に使用されている「高減衰(こうげんすい)ゴム」の免震装置だ。【安高晋】

 「担当者にヒアリングした法律事務所から、『他にも困った事例がある』と(報告があった)。弊社の聞き取りのやり方がまずく、情報をキャッチでき なかった」。東洋ゴムは25日、50代の担当者が最初に判明した55棟の他にもデータ改ざんをほのめかしていると公表。記者会見した役員が謝罪した。

 同社は1996年から今年2月までに、250棟に免震装置を納入。最初の判明分の55棟を除く195棟全てを新たな調査対象としている。この担当 者が関わったのはこのうち191棟。なかでもデータ改ざんが疑われているのは、高減衰ゴムが使用されている129棟の装置だ。マンションが多く含まれ、病 院もあるという。

 高減衰ゴムは、建物に伝わる揺れを小さくすると同時に、揺れを早く止めることができる「高機能型」だ。天然ゴムに特殊な成分を混ぜて作るため、性能基準を満たした製品を作るには高い技術を要する。最初に判明した55棟の装置も高減衰ゴムで作られていた。

 ただ、同じゴムでも55棟と129棟では製品のタイプが異なる。使うゴムは、建物の高さや構造で変えるという。55棟に使われたのは、中間的な硬さのゴム。支えられる重さと揺れの伝えにくさの両方に優れる。ただし「硬さをバランスよく保つ必要があり高減衰ゴムの中でも製造が難しい」(同社担当 者)。

 一方、129棟には軟らかいゴムが使われている。「比較的作りやすいので、改ざんの必要がないものもあったはず。実際、先に調べた51棟の中から『シロ(改ざんなし)』も出ている」(同)という。国土交通省の担当者も「すべてを改ざんしているとは考えていない」と話す。

 ほかの62棟は天然ゴムなどを使った装置。同社関係者は「高減衰ゴムより製造が簡単で、性能の基準を満たした製品を作りやすい。その分、改ざんの可能性は低い」と言う。

 だが、同社の信頼は失墜しており、製品の安全性への不安は拡大している。最初の55棟について同社は「震度5強程度で倒壊の恐れはない」との調査結果を 出し、国交省も確認した。今月末までに震度6強〜7程度の巨大地震に対する安全性を調べ、結果を公表するとしている。新たな調査について同社は「129棟 のデータの解析に2週間ほどかかる」としている。

toyo

我が家の物は129棟のうちの一つと思われますが、ぶっちゃけ、最初の55棟の対応を考えるに、一つでも不適合品が出たら全部交換ですよね。

となると交換か、住民を一時退去させてジャッキアップして交換となると、相当面倒な事になりそうです。

 

とりあえず今は以下のような技術資料を漁って積層ゴムの構造や製造法、物理的特性などの理解を進めていますが・・・

http://4menshin.net/report/index.html

ムズっ :-D

コレを住民に判りやすく説明するのは大変骨が折れそうです・・・ :cry:

次回はこれら調査結果をまとめて「工学的素人でもわかるやさしい積層ゴム&免震建築物講座」をやりたいと思います。

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