ここから本文です

<牛丼>300円台、横並び…すき家15日に再値上げ

毎日新聞 4月2日(木)21時1分配信

 牛丼チェーン最大手のすき家が15日から全国1956店(沖縄県を除く)での牛丼の値上げを決めたことで、デフレの象徴だった業界各社の価格競争は沈静化する。輸入牛肉などの原材料費や人件費の上昇を吸収しきれなくなったことが要因だ。ファストフード業界は、弁当などを充実させるコンビニエンスストアなどとの競争にも直面しており、顧客をつなぎ留めるアイデア創出に必死だ。

【グラフ】牛丼(並盛り)税込み価格の推移

 ◇原材料、人件費高騰…企業努力に限界

 「牛肉価格、人件費、電気代の三つが高騰している。350円は消費者に受け入れられるギリギリの価格だ」。すき家本部の興津龍太郎社長は2日記者会見し、昨年8月に続く再値上げに理解を求めた。

 並盛りは291円から350円に、大盛りは410円から470円にするなど、牛丼関連メニューを42〜62円引き上げる。すき家によると、中国など新興国の需要増や円安の影響で、牛肉の輸入価格は昨夏に比べ1.5倍程度に上昇。景気回復による外食業界の人手不足に加え、深夜の1人勤務「ワンオペ」解消のためアルバイト従業員を増員したことで、人件費も増えている。

 牛丼業界では、昨春以降、価格の引き上げが相次いでいる。大手3社は昨年3月まで280円で横一線だったが、吉野家が昨年4月に300円に改め値上げを先導し、12月に380円に再値上げした。松屋は昨年7月に、290円の牛めしを関東の店舗を中心に380円の「プレミアム牛めし」に切り替えた。

 すき家は昨年4月に270円に値下げした後、8月に291円に値上げしたが、「300円以下」の一線を貫いてきた。すき家を運営するゼンショーホールディングスの2015年3月期の連結最終(当期)損益は102億円の赤字に転落する見通しになり、コスト引き下げ努力の限界を超えたと判断した。

 値上げに合わせて牛肉や玉ねぎを2割増量するといい、興津社長は「新しい価値は消費者に必ず受け入れられる」と強気だ。

 業界では値上げに合わせて客単価は上昇しているものの、客数は減少傾向が続いている。吉野家の1〜2月の既存店売上高が前年比マイナスに沈んだことが競争の激しさを裏付けている。

 野村証券の繁村京一郎シニアアナリストは「値上げしても業界最安値であることは変わらない」とすき家の競争力に太鼓判を押すが、「300円以下という価格が選ばれた面もあり、一時的に客足が遠のく可能性は否定できない」と指摘した。【神崎修一】

 ◇ファストフード業界◇

 牛丼やハンバーガーに代表されるファストフード業界は、2000年代以降、10円を争う低価格競争で顧客を集め、物価が下がり続けるデフレ時代の象徴だった。すき家が創業した1982年当時の牛丼並盛りは350円。90年代はほぼ400円だった。01年に他社に対抗して280円に値下げ。米国の牛海綿状脳症(BSE)問題が発生した04年に一時発売を中止したが、350円で復活。09年には280円に戻し、たびたび250円の期間限定販売を実施した。日本マクドナルドは95年、ハンバーガーを210円から130円に値下げ。02年には一時59円に下げた。13年には120円に引き上げたが、14年には客離れを止めるため100円に戻した。

最終更新:4月3日(金)0時6分

毎日新聞