イングレス、京都公式戦に5600人 仮想陣地争奪ゲーム
街歩きをしながら仮想空間で陣地を取り合うスマートフォン(スマホ)向けのゲーム「イングレス」が人気だ。3月28日に京都市で開かれた公式イベントには国内外から5600人以上が参加し、二条城など各地で「戦闘」を繰り広げた。現地に足を運ばないとゲームが進行しない仕組みのため、観光振興の一策として自治体などが活用する動きも出ている。
■名所も巡り、観光振興のツールに
ゲームは、謎の新エネルギーを利用して人類を進化させようとする「緑の陣営」と、それに抵抗する「青の陣営」のどちらかに加わって戦うという設定。世界各地にあるポータル(拠点)を訪ね歩き、3カ所を結んでできる三角形を自分の陣地にしてその面積を広げていく。現実の建物や碑などがポータルに見立てられており、それらにアプリを起動させたスマホを近づけて操作すると、自陣に取り込んだりアイテムを入手したりできる。
こうした特徴から、通勤やウオーキングといった日常生活や観光とあわせて楽しむ人が増えている。開発した企業によると、ダウンロード数は世界で1千万件を超え、なかでも日本の利用者は一、二を争う多さという。
普段は1人でも遊べるが、ゲーム内で進行する物語の分岐点となる年4回の公式イベントには、両陣営のエージェント(ゲーム参加者)が開催都市に集まって特別ルールで勝敗を争う。
今回、東山区の円山公園音楽堂で行われたイベントの開会式では、外国人を含む両陣営のエージェント数千人が会場を埋め尽くした。「京都は源平の時代から二大勢力による血みどろの歴史に彩られた街。イングレスに向いている」と主催者が盛り上げ、人々はスマホを片手に一斉に街に繰り出した。
エージェントたちはポータルに設定された京都市役所周辺や京都御苑、下鴨神社、二条城などを約4時間かけて巡った。ゲーム内では「血みどろの争い」でも、現実世界では社寺を鑑賞したりカフェに立ち寄ったりと、終始和やかなムード。左京区の国立京都国際会館であったアフターパーティーでは、互いに健闘をたたえ、最後に緑陣営の勝利が告げられた。
「言葉が通じなくても、普通にまちを歩くのと違ってゲームを通じたコミュニケーションができるのが魅力」と、参加した漫画家の「2C(ツッシー)=がろあ」さん(32)=東京都=は話す。旅行で訪れた台北(台湾)のポータル情報に、実在の名所や飲食店の紹介を添えた自作の冊子を会場で販売した。
イベントのために京都に来たという米ニューヨーク在住の女性は、ポータルをスタンプラリーのように巡るゲーム内のイベント「ミッション」の攻略が好きといい、「歴史やゲーム内の物語でつながっている土地を訪ねるのが楽しい」と話した。
ヘリをチャーターするなど大規模な作戦を展開するエージェントがいる一方、休日の旅行やレジャーに組み込む人もいたりと、さまざまな遊び方ができるのも人気の一因のようだ。
■イングレス(Ingress) 米IT大手グーグルの社内ベンチャー「ナイアンティック・ラボ」が開発し、2012年11月に公開した。スマホの位置情報サービスなどを用いたゲームで、世界200カ国でダウンロードされ、ゲーム参加者の移動距離は延べ1億5千キロ。各地のポータル数は未公表だが、京都府内には5千カ所以上あるとみられる。イングレスとは英語で「立ち入り、進入」の意。
【 2015年04月02日 17時04分 】