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【放送芸能】

NHK語学講座 手軽に世界広げて90年

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 「ラジオ英会話」や「おとなの基礎英語」など、NHKの語学講座シリーズが始まってから今年で九十年となる。手軽に外国語の勉強が始められるとあって、二〇一四年度のテキスト発行部数は累計千六百万部に上る人気。受験や外国語検定、海外留学の準備に、お世話になった人も多いのでは? ラジオからテレビへと発展してきた語学講座は、今やスマートフォンにまで活用の場を広げる。九十年の歴史をひもとき、番組の舞台裏に迫る。 (前田朋子)

 シリーズ第一号の「英語講座」が始まったのは、NHKがラジオ放送を開始したわずか四カ月後の一九二五(大正十四)年七月二十日。講師は思想家岡倉天心の弟で英語学者の由三郎だった。NHKが、なぜ放送黎明(れいめい)期に語学講座に乗り出したのか資料は残っていないが、時代は大正デモクラシーが台頭し、大衆文化が花開いたころ。西洋文化へのあこがれが急速に高まる中、政府の指示ではなく、自発的な企画だったとみられるという。

 番組を担当するNHKエデュケーショナルの手島雅彦・語学部統括部長は「先見の明があったとしか言いようがない」と話す。

 英語に続いて、戦前には独・仏・中国語が始まり、戦後はスペイン語やロシア語、ハングルなどに拡大。現在はラジオとテレビで十一言語(日本語含む)三十九番組を放送中だ。今期は来年のリオデジャネイロ五輪を控え、ラジオでポルトガル語講座が復活するほか、二〇二〇年東京五輪を意識して「訪日客向けの会話」を盛り込むなど、その時々の話題や需要を考慮して制作する。近年は日本企業が進出し、リタイア後に移住する人も多いことから、タイ語講座を望む声が増えているという。

◆芸能人が生徒役

 準備にはほぼ一年がかけられる。四月に放送開始の場合、前年の五月ごろに制作陣が講座の方向性を決めて、企画に合う講師をリサーチ。八月には講師と共にカリキュラムを作成、十月ごろからテキストの執筆に入るという。制作側には語学が得意な人もいるが、「経験のない言葉を担当することになり、慌てて語学学校に通うということもよくあります」と語学部部長プロデューサーの鵜川陽一さん。つまずきやすいポイントなど、語学学校の実体験が番組に生かされることもある。

 戦前は講師が一方的に授業を進めることが多かったが、戦後まもなくして、生徒となる進行役を置くなどの工夫もされた。フランス語のフランソワーズ・モレシャンさん母娘や、イタリア語講座のパンツェッタ・ジローラモさんは、講座を経て人気者となった。ここ十五年ほどはテレビ講座を中心に、初心者の芸能人を生徒役に起用。なじみの薄い言語に親しみを持ってもらう狙いがある。

◆スマホも活用

 テキスト千六百万部のうち千百万部は英語。一番人気は「ラジオ英会話」で、月二十三万部を発行する。

 一方、テキストと併せて発売される音声媒体は時代とともに進化する。古くはLPレコードやフォノシートに始まり、カセットテープやCD、DVDへと移り変わってきた。

 さらに現在は、ネットラジオ「らじる★らじる」でも聴けるほか、NHKやNHKエデュケーショナルのホームページでストリーミング再生が可能で、スマートフォンからも見ることができる。講座によっては電子版テキストも利用できる。

 今春からは「テレビで中国語」の受講者に向け、新たに声調を波形で見て確認する、その名も「声調確認くん」というストレートなネーミングのソフトも登場する。NHK放送技術研究所が開発したもので、パソコン版が五〜六月に利用可能となり、その後、スマートフォンでも使えるようになる予定だ。

 鵜川さんは「話せることがゴールではなく、それで何をするか。例えばアメリカでラーメン屋さんを始めたいなど、目標の第一歩になれればいい」などと話している。

 

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