統一地方選の争点である地方創生は、自治体が地域の実情に合わせ、自らの創意工夫で街づくりを進めることがカギになる。自治体の権限が不十分では掛け声倒れになりかねない。

 その意味で注目される地方分権が、この国会での法改正で実現しそうだ。農地転用を巡る自治体への権限委譲である。自治体は、権限には責任が伴うことを自覚してほしい。

 4ヘクタール超の転用許可は国の権限。2ヘクタール超4ヘクタール以下は都道府県が決めるが、国との協議が必要。そんな現行制度を、面積にかかわらず県の権限とすることが柱だ。4ヘクタール超では国との協議が残るが、前回の部分的な分権から十数年がたつ「岩盤規制」が動くことになった。

 4ヘクタールとはどの程度の広さか。ある流通大手が全国で運営するショッピングモールでは、敷地が4ヘクタールに満たないのは12%ほどで、街づくりでは決して広くはない。

 自治体側によると、国の判断が遅れるうちに進出予定の企業が計画を中止した例もあっただけに、全国知事会など地方側は今回の案を「地方分権を大きく進める」と評価する。

 農水省が権限維持にこだわってきたのは、優良な農地がどんどん転用されると、農業や食料の供給がさらに揺らぎかねない、との理由からだ。

 街づくりと農地確保の両立は、永遠の課題と言える。これまでは対立関係でとらえがちだったが、急速に進む少子高齢化と人口減少は、両者を一体として考えるよう、自治体と国の双方に促している。

 農地をつぶしての工業・商業開発にしても、過疎化が進み、工場や大型店の誘致は無理という地域が多くなっている。地元の農業を生かし、農産物の加工・販売や飲食店・宿泊施設の経営で域外から人を呼び込もうとする自治体が目立つことが、何よりの証拠と言えまいか。

 農地転用を巡る議論の傍らで、耕作放棄地は増え続けている。地域の住民や訪問客を増やさないと、農地の維持もままならないのが現実である。

 今回の分権論議では、農地確保の仕組み作りを自治体側が国に提案するという、新たな動きもあった。国と地方が一緒に知恵を絞ることは、今後の分権・活性化に欠かせない視点だ。

 街づくりの主役は市町村であることも忘れてはならない。農地の確保に努める市町村には、国が指定したうえで県並みの農地転用権限を認めることになったが、都道府県から市町村への分権も大きな課題である。