電力大手各社ごとだった電力需給の調整を、全国規模で行う新組織「電力広域的運営推進機関」が1日、発足した。

 各地の状況を日々、監視し、電力が足りなくなる地域に余裕のある地域から送電するよう指示したり、長期的な電力の供給計画や送電網の増強を決めたりする。政府が進める電力自由化の柱の一つに、電力大手による地域独占の廃止がある。広域機関はその一翼を担う。

 東日本大震災をきっかけに、首都圏は深刻な電力不足に陥った。福島第一原発をはじめ、多くの発電所が被災したためだが、他の電力会社からうまく電力を融通できないことも影響した。それまで、各社の営業区域内に限定して需給をやりくりする仕組みが基本だったからだ。

 再生可能エネルギーをめぐっては、昨年から九州電力などで接続制限が起きた。これも、自社の受け入れ能力を超える恐れが生じたためだった。

 広域機関は、全事業者と連絡をとりながら、いざという時には発電所の出力アップや需要を抑える対策の発動も含めた調整を各社に指示・勧告し、制裁も課せる強い権限をもつ。

 この仕組みは、再エネの導入量を増やすことにつながる。受け皿が大きくなれば、適地が偏り天候などで出力が変動しやすい太陽光や風力による発電を吸収しやすくなるからだ。

 ほかにも、送電網の中長期的な整備を担い、新規参入者が送電網への接続を申請した場合に審査もする。

 新規参入の審査については透明化が求められる。広域機関の職員は当初、電力各社からの出向者が大半を占める。出身母体の事情が審査に影響していないことが誰にでも分かるような手続きが不可欠だ。

 もちろん、広域機関ができさえすればいいわけではない。日本の場合、東西で電力の周波数が違う特殊事情がある。整備には数兆円かかるとの試算もあり、費用をどう負担するのか、難題も待ち構えている。

 欧州には、お金の出し手に優先的に送電網の利用権を与える仕組みや、市場の資金を取り込む手法があり、工夫を重ねて送電網の拡充に取り組んでいる。参考になる点もあるだろう。

 電力は、発電量と消費量を常に一致させる必要がある。これをクリアすることが、すべての前提になる。

 広域機関は、利用者の選択肢や事業参入の機会を増やすインフラだ。新たな司令塔として重責を果たすことが、電力自由化の成否に直結している。