特別企画“火の粉” 雫井脩介原作の超一級サスペンス! 2015.04.02


(的場)ああ…。
助けてくれ助けてくれ…。
ああ…。
助けてくれ助けてくれ…。
うっ…!やめて…やめて…!やめて…。
やめてー!キャー!どっどうしました?大丈夫ですか?
(武内真伍)警察…。
襲われた…頼む…。
警察…。
私が犯人?ちょっと待ってください。
何言ってるんですか?
(野見山司)確かに庭先のガラスは外から割られ犯人はそこから侵入したように見せかけられています。
でも足跡が1つもないんですよ。
これがどういう事かわかりますか!?つまり武内さんあなたが強盗に見せかけ的場さん夫婦を殺害した。
違う!私じゃない!信じてください。
被害者なんです私は。
襲われたんです私も!あっ来た来た来た。
(カメラのシャッター音)先生…。
(関弁護士)心配するな。
私が付いてる。
この関孝之介が弁護士としてしっかり君を弁護する。
これは不当逮捕だ!警察権力の横暴だ。
高瀬さん高瀬さん?どうですか?ご気分は。
(高瀬雪見)ええ何とか…。
すいません。
・あら雪見先生。
こんにちは。
どうも。
何?先生おめでた?わかった!それでまどかちゃんのパパと…。
違います。
気分が悪くなってそれで。
じゃあ私急ぎますんで。
さようなら。
雪見先生風邪のほうは?あっ大丈夫。
治ったみたい。
中野先生…。
すいませんでした。
(中野副園長)もういいんですか?はい。
たいした事なかったみたいで。
ホントに無理してないかなぁ〜。
もう…子供じゃないんだから。
ああそっか。
ははは…!あのまどかちゃんは?さっきおじいちゃまがお迎えに来ましたよ。
ああ…。

(梶間まどか)雪見先生ー!
(梶間勲)ははは…。
おじいちゃーん!はい。
ははは…。
俊郎さん言ってました。
お父様は難しい判決があると前の日はまどかちゃんと遊ぶって。
本当だったんですね。
あいつそんな事を?ははは…。
あのいいですか?訊いても。
明日ワイン評論家のご夫婦が殺された事件の判決なんですよね。
ニュースでやってました。
まあね。
でもどういう気持ちになるんですか?裁判官の方って。
死刑の判決出す時にやっぱり出したくない…とか。
死刑というのは法律で決められた事だ。
出したくないっていう事はない。
ただ裁判官は自分の感情を判決に入れてはいけないっていうのが鉄則だよ。
じゃあお父様も今までに何度か…。
はは…めぐり合わせっていうのかね。
私はこれまで一度も死刑の判決を出す裁判に当たった事がない。
当たらないまま明日40年の判事生活を終える。
えっ…でも定年にはまだ…。
いやぁ潮時だよ。
まあ今まで転勤転勤でさんざん家族に迷惑かけてきたしね…。
それと母親の介護の事もある。
聞いてます俊郎さんから。
おばあちゃま自宅での介護を望まれたって。
うん…。
どうだろう雪見さん。
みんなで一緒に暮らせる家を探そうと思ってる。
一緒に住んでもらえないかね?いやもちろん私の母親だ。
おふくろの面倒は私と家内でするよ。
君や俊郎に迷惑がかかるような事はしないよ。
何て言うのかなぁ…。
この歳になってね家族っていうものをもう一度やり直したくなったんだよ。
あたたかい家庭っていうのかねぇ。
私もずっと…ずっと憧れてました。
あったかい家族に…。
独りぼっちだったから…。
母が亡くなってからずっと独りぼっちだったから…。
ははは…。
では判決を言い渡します。
被告人は前へ。
主文被告人を無罪とする。
(ざわめき)
(池本亨)ふざけるな!そんな判決あるか!裁判長あんた一体何考えてるんだ。
こいつは犯人だ。
こいつが俺の妹と的場を殺したんだ!静粛に。
静粛に。
騒ぎ立てると退廷を命じますよ。
俺は許さねぇぞ。
そんな判決は絶対認めねぇ!こいつは死刑だ!傍聴人を退廷させてください。
おいどういう事なんだよ裁判長!えっ!?おい!退廷してください。
離せ!離せよ!何で2人も殺した人間が無罪なんだ!おい裁判長!
(池本杏子)あなた…。
(池本)武内!てめぇ覚えてろよ!武内!
(嗚咽)ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
神様いたんですね…。
ああ本当にいた…。
1つの判決がたくさんの人々の運命を大きく左右する炎を燃え上がらせた
(池本)武内!俺はお前の事を絶対許さないからな!許さねぇぞ!武内覚えてろよお前!おいこら!
火の粉…人は自分の身に火の粉が降りかからない限りその熱さがわかりません
そしてこの時私達はまだ…

(梶間曜子)尋恵さん尋恵さん…。
(梶間尋恵)まったくどうして?いつもこの朝の一番忙しい時間に。
お水だと思います。
お薬を飲む。
私持って行きますから。
あらごめんなさいね。
本当にもう…。
(梶間俊郎)よし…。
雪見ばっかり使うなよ。
雪見はお手伝いさんじゃないんだよ。
だったらあんたが行ったら?小さい時からおばあちゃんおばあちゃんって甘えてたくせに。
よさないか。
好きじゃないねぇ。
そういう押し付けあうような言い方はさ…。
ねぇ。
ありがと。
あなたがいるから助かるわ。
尋恵さんは口ばっかりで何もしてくれないし。

(まどか)ママママ!早く!ご飯冷めちゃうよ!ごめんなさい。
おばあちゃまのお食事まどかちゃん送り出したらすぐ持ってきますから。
いいのよ。
どうせ一人じゃ食べられないし手の空いた時で。
どうせ私は厄介者だから。
そんな…。
いいから行ってあげなさい。
すいません。
行ってきまーす。
行ってらっしゃい。
バイバーイ!俊郎の奴また図書館か。
ええ家じゃ集中できないらしくて。
甘ったれやがってあいつ。
司法試験ってのはね1回落っこったら2回目はないって言われてるんだよ。
あっすいません。
俊郎さんがあきらめるって言ったのを夢なんだから頑張ってって私が…。
いや雪見さんのせいじゃないよ。
いやホント言うとね私だって息子が同じ道を歩んでくれるのはうれしいんだ。
ここここここ。
この家だから。
どうもこちらのお宅の方ですか?どうもはじめまして。
私隣に引っ越してまいり…。
先生?梶間先生…?えっいやはあ…。
じゃあここ先生のお宅!?先生その節は…その節は本当にありがとうございました。
いや君…。
先生は命の恩人です。
先生…ありがとうございます。
だって先生がいなかったら私こうやって生きてないですから。
ひと時も忘れた事はありません先生の事を。
こんな偶然あるんですね。
私うれしいです。
先生のお宅のお隣に住めるなんて思ってもみなかった…。

(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)
(武内)ライアン!どうした?ライアン。
ほらどうした?はいライアンおいで。
はいこっち。
待て待て待て…。
はいはい。
はいはいはい。
よしよし…。
はいはい…。
よーしよしよし…。
よし!よーしライアンはいご飯だぞほら。
ほーらご飯だ。
なぁライアン今日からここが我が家だぞライアン。
お隣の梶間先生はな俺にとって神様みたいな人なんだよ。
仲良くしてもらおうなライアン。
ライアーン。
(俊郎)ネクタイ殺人の被告?すげぇそんな偶然あるんだ。
冤罪事件と見抜いて無罪判決を出した裁判官の隣にそういう人間が引っ越して来るなんて…。
ネクタイ殺人ってワイン評論家の夫婦が…。
そう殺された事件。
(俊郎)あの事件の犯人として逮捕されたのが被害者夫婦の隣の家に住んでいた男なんだ。
恐らく警察は拷問のような取り調べをしたんだろう。
男は自供した。
殺人の動機は被害者にプレゼントしたネクタイをボロクソに言われたから。
でもそんな動機で人が人を殺す訳ないしそれにその男には自分では作る事のできない傷が背中や後頭部にたくさんあったんだ。
で男は一転法廷では犯行を否認し警察と検察の捜査が問題になった。
もちろん連中は不当な取り調べはしていないと言い張った。
でそれを見抜き無罪の判決を出したのがうちの親父なんだ。
いや別に私が偉い訳でも何でもないよ。
検察は控訴したが二審でも控訴は棄却された。
それで無罪…。
が確定した!検察が上告するのを断念したからね。
俺あの時からなんだよな。
親父の仕事すごいなと思ったの。
もし親父が真実を見抜かなかったら無実の人間が殺人犯にされるところだったんだから。
でも警察もひどい事するわね。
さっきねご挨拶に見えたんだけどすごく感じのいい方よ。
お父さんの事ね本当に感謝してるみたい。
よし!俺明日挨拶に行くから。
およしなさいよ!何で?司法試験に対してモチベーション高めるためにそういう冤罪事件の被害者とさ…。
無罪が確定してだよせっかく平穏無事な市民生活に戻れたんだ。
そこに元裁判官の家族がしゃしゃり出て行ってさ生活を乱すような事があってはいけないよ。
(パトカーのサイレン)ご苦労さまです。
殺しだって?ええ。
鈍器で殴られたような痕があって鑑識さんの話だと死後1か月以上経ってるんじゃないかって。
身元は?それが何ひとつ持ってなくて指紋を照合するしか。
その必要はないな。
関孝之介。
うちの警部の宿敵で人権派でならした腕利きの弁護士だ。
関君が殺された?退官してからね私は彼に一度も会った事がないよ。
なぜまたそんな事を…。
実は1か月前から行方不明で捜索願が出てましてね。
それで梶間さんなら何かご存知じゃないかと思いまして。
私が?それはどういう意味だね?あなたと関弁護士は大学の同期だった。
冤罪事件で無罪を勝ち取るという関弁護士の評判を上げるためにあなたはいろいろと力を貸していた。
冗談じゃない!私はね判決に私情を挟み込むような事は…。
ネクタイ殺人はどうなんです?武内真伍の。
バカを言うなよ。
あれは無罪だ。
現に二審だって…。
一審で無罪と出たものを覆すのは裁判官として相当の度量がいる。
ましてや人を殺しておいてそれを無罪と断定した後ではね。
そうでしょ?話にならんな。
そんな事言うために君達はここへやって来たのかね?帰ってくれ!気分が悪い。
武内真伍先生の家の隣に越してきたんでしょ?用心したほうがいい。
あいつは恐ろしい男だ。
いいかい?君達のそういう偏見が冤罪事件を生むんだよ。
無罪になったのが悔しいんだったら法に則ってキチッと捜査をしたらどうなんだね!?武内は関弁護士の身辺をうろついていた。
ずっと感謝の言葉を口にしながらね。
一応お伝えしておこうと思いましてね。
それじゃあ。
ひげお似合いですよ。
で本当に梶間先生が無罪だって言ってくれた時はパーッって光明が差しましたね。
それまではもう何を言っても信じてもらえないってあきらめてましたからね。
怖いですね警察の捜査って。
何の罪もない人が犯人にされるんだから…。
先生!お帰りなさい。
あっお帰りなさい。
ただいま。

(まどか)キャー!やめてー!・
(犬の鳴き声)・
(まどか)来ないで!まどかだ。
(犬の鳴き声)
(まどか)シッシ!
(武内)よせ!ライアン!まどかちゃん!シッシ!あっち行け!あっち行け!うわぁ〜!
(武内)ライアン!まどかちゃん!頼む。
よいしょ大丈夫?怪我ない?
(武内)誰がこんな事を…!ナイフか何かで切られてる。
えっ?ううっ…!足が足が…。
ああ…。
お義父さん!大丈夫ですか?先生!親父…。
ああ。
大丈夫なのか?怪我は。
うん…。
骨折。
1か月以上はかかるんじゃないかって。
申し訳ありませんでした。
私の責任です。
私がちゃんと管理してなかったから…。
いや犬はね普段遊んでるボールが欲しかっただけなんだよ。
それをこっちが焦っちまったもんだから。
でも誰かがね犬の飼いひもをナイフか何かで切ったみたいなの。
切った…?それにご近所の人が犬の近くをうろついてる変な男の人を見たって。
いやそれでも私が悪いんです。
私がきちっと管理さえしていれば…。
あの犬こわーいまどか。
大丈夫。
大丈夫だよ。
ごめんねまどかちゃん怖がらせて。
ご心配なく。
犬は保健所に連れて行きちゃんと処分しますので。
処分!?えっそこまでは…。
そこまでする事はないよ。
ちゃんとつないでおいてくれればそのうち慣れるんだから。
いえそれでは私の気が済みません。
大恩ある先生にこんなお怪我を負わせてしまって…。
それは長年家族同様に暮らしてきた犬です。
でも私には先生以上に大切な人間は他にはいません。
本当に申し訳ありませんでした。
おい武内君!お前…。
武内さん。
武内さん。
(俊郎)武内さん頭を上げてください。
武内さん。
(尋恵)そうか石を敷き詰めるのね下にね。
先に。
(武内)そうです軽石みたいな…。
ああそうか。
でこのファイヤーヒースはツツジ科なので酸性の土が合うんですよ。
酸性?ですからこの鹿沼土を使ってやるんですよ。
へえ〜!土にまでこだわってんだ?ええ。
あはは!やだ私何も知らないんだもん。
ガーデニングやる資格なんかありゃしないわ。
そんな事ないですよ。
私だってね死んだ両親が造園業やってんたんで見よう見まねで覚えただけなんですよ。
そうか。
ええ。
奥さんは自然を愛する心がありますから…。
私?ええ。
やだそんな…。
いやいや…。
また笑ってる。
いい気なものね尋恵さんも。
あの男の犬のせいで勲が入院してるっていうのに。
それに犬のひもを切った犯人もまだ見つかってないんでしょ?ええ交番には届けたんですけど…。
でいくら持って来たの?あの男。
治療費や見舞いに…。
いや私はそこまで…。
聞いてるんでしょ?いくらなのよ?100万。
そんなに!?うん…。
治療費は別なんです。
それは後で精算するからって。
いやもちろんお義母様も断ったんですよ。
でもお義父様には大学も休ませてるしそれじゃ気が済まないからって。
そんな100万も…。
一体何やってる男なの?あの武内って…。
いやぁこれといった仕事は…。
何でも亡くなったご両親が残してくれた遺産とか不動産とかそういうのがあるらしくて。
私は嫌いよあの男。
昔ボランティアで介護の仕事をやってたからっていってこの部屋にもずかずか上がってくるけれどあの目が薄気味悪くってどうにも好きになれないわ。

(ノック)はい。
雪見さん奥様がそろそろまどかちゃんをお迎えに行く時間じゃないかって。
あっホントだいけない。
すいません。
あっどうも。
どうも。
あのお義母様は?今お台所でおばあちゃまのおうどんを。
おばあちゃまもう少しですよ。
もう少しでおばあちゃまのお食事できますから。
じゃああとお願いします。
はい行ってらっしゃい。
(携帯電話)はい雪見です。
(尋恵)「雪見さん大変なのよおばあちゃんが」「おばあちゃんがね…。
すぐ帰ってきて!」おばあちゃん…。
すいません。
おばあちゃん…。
私が悪いの。
私が悪いのよ。
おうどんを食べさせた後残りの器をねそばに置いといたらおばあちゃんもっと食べたかったんじゃないかしら…。
私が様子を見に来た時にはすでに息はありませんでした。
その容器に顔を突っ込んだようにして…。
おばあちゃん…。
(嗚咽)おばあちゃんおばあちゃん…。
おばあちゃん…。
ねえどうしたの?ママ。
何で泣いてるの?中野先生本当に今日は最後までありがとうございました。
いやいや…。
気を落とさずにね。
まどかちゃんも週明けには。
ええ行けると思います。
またよろしくお願いします。
じゃあね。
誰なんです?あの方。
ああ…。
まどかちゃんの通っている幼稚園の副園長さんです。
私も一昨年まで勤めてましたから。
でもよくないなぁ。
特定の人間だけをお送りして…。
あまり喪主の家の人間のやる事ではないですよ。
それにこんなところで親しげに話してるっていうのも…。
ちょっと待ってください。
それどういう意味ですか?いや私はただ変な噂が立つと困るから…。
噂!?何なんですか?噂って。
何言ってるんですか?武内さん変な勘ぐりやめてください。
雪見?どうしたの?いや別に…。
すいません。
何かあったの?何なのよあの人!なれなれしいっていうか無神経っていうか。
大体あの人が隣に来てからろくな事が起こらないわ。
疫病神なんじゃないの!?よせバカ!何言ってんだよ。
偏見だぞそういうの。
あの人はなそれでなくても人殺し扱いされて世間から白い目で見られてたんだよ。
少なくとも俺達ぐらいはそういう目で見ないようにしないと。
でも…。
それよりまどか見なかったか?いないんだよあいつ。
えっホント?頼むよ母親なんだからもっとしっかりしてくれよ。
ごめんなさい捜してくる。
(子供達の遊ぶ声)
(子犬の鳴き声)えいっ!
(子犬の鳴き声)まどかちゃん!何してるの。
よしなさい!だって私犬嫌いなんだもの。
いいんだもの!かわいそうでしょ?やめなさい。
離してよ!よしなさいって言ってるでしょ。
まどかちゃん!
(泣き声)ごめんね。
ママどうかしてたわね。
本当にごめんね。
ママ…ママがぶったのはママがまどかの本当のママじゃないからなの?何言ってるの?ママはまどかちゃんの本当のママよ。
まどかちゃんを愛しているからいけない事をしたまどかちゃんを叱ったの。
やっぱりちゃん付けした。
本当のお母さんならまどかちゃんて呼ばない。
それにぶたない…!だって幼稚園のみんな言ってるもの。
まどかのママは雪見先生だからまどかの事まどかちゃんって言うって。
まどか…。
そう…そんな事気にしてたの?ごめんね。
じゃあもう言わない。
まどかって呼ぶ。
約束する。
そうだよね。
自分の子供の事いつまでもちゃん付けじゃおかしいもんね。
約束するからね。

(武内)こんなところにいたんですか?私も捜しちゃって…。
あれどうしたのまどかちゃん。
泣いてたの?
(子犬の鳴き声)あれかわいいねこの犬。
(武内)う〜ん!ほらまどかちゃんかわいいよ。

(チャイム)浦島太郎という若者がいてねぇ。
ちょっと待って。
はい。
どちら様でしょうか?
(男の声)「区のほうから来たものですけど」区?どうも。
児童相談所のほうからまいりました。
児童相談所?どうしたの?児童相談所の方が…。
児童相談所?あっどうぞ中に…。
失礼します。
(女職員)失礼します。
あなたがまどかちゃんね?お父さんお母さんと大事な話があるからおばちゃんが呼ぶまで向こうで待っててくれるかな。
何ですか?うちは別に児童相談所に訊かれるような事は何もありませんよ。
実は相談所のほうに通報があったんです。
奥さんがお子さんを虐待してるんじゃないかと…。
何ですって!?バカな…何言ってるんですか!まどかちゃんおばさんに本当の事話してくれないかな。
お母さんにぶたれた事ある?ある。
まどか違うでしょあれは。
(尋恵)あの…。
通報って何回ぐらいあったんですか?お義母さん。
詳しくは言えませんがまあ複数回としか…。
そんなに!いいえこの間からまどかの事をまどかまどかと呼び捨てにするようになって変だと思ってたんだけど…。
あなたそんな事を。
違うんですお義母さん誤解なんです。
これには訳が…。
そうだよ母さん。
雪見に限ってそんな…。
まどかちゃん。
さあおばあちゃんと一緒に今夜は寝ましょう。
ねっいらっしゃい。
ママまどかママにいけない事言ったの?いいのよ。
さあいいわね。
さあいきましょうはい。
でも誰が一体そんな虐待だなんて噂…。
だけどよかったじゃないか誤解が解けたんだから。
あの人が言ったのかもしれない。
まどかから聞き出して。
あの人?だから武内さんよ。
この間揉めた時の事を根に持って…。
よさないかやめろよ。
何度言えばわかるんだよ。
変だぞお前。
武内さんの事ばっかり目の敵にして。
ごめんなさい。
まあとにかくおふくろには俺から言っとくよ。
さあもう今日は早めに寝よう。
明日は納骨式の打ち合わせと墓掃除だ。
何で虐待だなんて…。
ちょっと母さんもっとゆっくり歩けよ。
それに変だよ。
今朝から一言も口利かないなんて。
あらそう。
私は別に…。
普通に自分のペースで歩いてるつもりだけど。
どっかの誰かさんがやましくて付いて来られないんじゃないの?だから言ったろ。
虐待っていうのは誤解だって。
でもねぇそういう通報が児童相談所にあったっていう事はそれに似た類の事を多くの人間が目撃してるっていう事でしょう。
違います。
私はそんな…。
私ねぇ昨日まどかの寝顔を見ながらしみじみ思ったの。
あの子私のそばでもう安心しきって寝てるのよ。
やっぱり子供には血を分けた人間が必要なんだって。
よせよ母さん。
それ以上言うと怒るぞ。
いくら俺でも。
(尋恵)あらっ!?これなあに?嫌だわ。
これ水子地蔵じゃないの。
何でこんなもんあるの?あら裏に何か彫ってあるわ。
「平成15年4月22日中雪水子」15年4月…。

(俊郎)あれっ!?これ中野先生とお前…。
あっ!?何よこれ!中と雪。
そうなのか?お前中野の子供を。
違うわよ!何言ってんの。
そんな事ある訳ないじゃない!じゃあなぜそんなにうろたえんの?あっそういえばあの副園長さん独身でいらしたわね。
違うんです。
信じてください。
お願いします。
じゃあこの4月22日っていうのは何なんだい?一年前ちょうど俺たちが結婚する直前だよ。
その直前にお前は中野の子供を堕した。
違うの!堕したのはあなたの子供よ。
(俊郎)ええっ!?あなたの子供なの。
それに中絶したんじゃないの。
お腹の中で流産したのよ。
稽留流産っていうの。
お腹の中で赤ちゃんが育たずに死んでたの。
俺の子供ならなぜその時に言わないんだよ。
できたって。
言えなかった!まどかちゃんの母親になれるかどうか不安だった。
そんな時に赤ちゃんができて心の中で呪ったわ。
何でこんな時にできたのよって。
その声が赤ちゃんに届いたのかもしれない。
だから赤ちゃん生まれてこなかったの。
そんな話信じられるか…。
信じられないね!あなた…。
私も信じられないわ。
どっかの誰かさん随分作り話がお上手みたいだけど…。
お義母様。
あなたにお義母様なんて呼ばれたくない。
前の事といい今度といい俊郎さんあなたに女を見る目がないからこんな事になるのよ。
とにかくねぇこんなもののある中で墓掃除なんかできやしないじゃない。
始末しといてちょうだい。
お義母様。
俺も帰る。
虐待の事赤ん坊の事俺なりに考えさせてもらう。
ねえあなた。
どうして?どうしてこんな事に…。
《やっぱり武内さんよ》《あの人は私と中野さんの事を変な目で見ていた》《だからこんな嫌がらせを…》あなたもこれでやっと気付き始めたでしょう。
これは武内の仕業ですよ。
すべて。
誰なんです?あなた達。
私は池本というものです。
でこっちは妻の杏子です。
私達はこの事件で妹夫婦を武内に殺されたんです。
でもあの人はこの事件で無罪に…。
それは奴が何か巧妙なトリックを使ったからです。
お願いします。
私達はあの男をどうしても弾劾したいんです。
力を貸してください。
話を聞いてください。
お願いします。
お願いします。
お願いします。
(池本)あの武内真伍って男は恐ろしい男です。
妹夫婦はワインの買い付けに行ったフランスで財布を落とし困ってる武内を助けたんです。
そして帰国してしばらくすると…。

(武内)あのお隣の方ですか?そうですそうです。
私今度隣に引っ越して来ました武内…。
あれ…?的場さん!?たっ武内さん?ああ!武内です!偶然。
偶然偶然!どうも!いやお世話になりました。
こちらこそホントに。
同じ…うちとまったく同じだわ。
それだけじゃないんです。
お宅の家の前には関弁護士の家の近所に…。
関弁護士?妹夫婦の事件の時に武内を弁護した弁護士です。
関弁護士の場合はたまたま隣近所の家がふさがってた。
それで同じ街のすぐ近くにマンションを買って…。
なぜなんです?なぜあの人はそんな事を…?甘えたいんです奴は。
自分を庇護して助けてくれる人間を見つけてはそのそばに行き家族になりたがる。
そして妹夫婦の場合はあまりに自分達の生活に割り込んでくる武内に嫌気がさし私にその旨を伝えてほしいと頼んできた。
その結果これですよ。
主人は遠回しにその事を武内に告げた直後ひき逃げに遭ったんです。
使われたのは盗難車で犯人は捕まっていません。
あなたのおばあさんが亡くなった。
私はあれも武内がやったと思ってます。
何か心当たりありませんか?あの目が薄気味悪くってどうにも好きになれないわ。
あるんですね?それであなたはどうなんです?この頃奴の狙いはあなたに向いてるようにしか見えない。
児童相談所への通報とかあの水子地蔵とか。
あるんでしょ?思い当たる事。
思い出して。
その…祖母があの人の批判を口にした時私もそばにいた。
そして…。
何なのよ?あの人。
なれなれしいっていうか無神経っていうか…。
大体あの人が隣に来てからろくな事が起こらないわ。
疫病神なんじゃないの!?あなたのご家族に会わせてください。
武内は巧妙な奴です。
ちょっとやそっとの事じゃ尻尾を出さない。
こういう事は家族が団結して一致協力しないと大変な事になる。
お願い。
あなただって家族を守りたいでしょ?私達は守れなかった。
だから敵を討ちたいんです。
力を貸して。
お話はわかりました。
ホントに?ホントにわかってくれたの?でもあなた方の話を聞くだけでは公平さを欠く。
だから武内さんにも今の話を聞いてもらったんです。
武内さん頼みます。
武内…!どうしてあなたこんな事…。
電話かけた時ちゃんと話聞いてくれるって言ったじゃない。
私が武内さんを呼ぶように提案したのよ。
あなたが連れてくる人信用できないんですもの。
そんな…。
武内さん反論をお願いします。
いや…正直言って反論したくもない。
池本さんあんたがここまで卑劣だとは私は思ってもみなかった。
何が卑劣だよ。
全部事実じゃねぇか!そうよ。
全部自分が仕組んだ事だと認めなさいよ!じゃああんたが妹さん夫婦から借りてたお金はいくらになるんだ!?1千万か?2千万か!?借りてたお金…?いやそれは…。
(武内)的場さん達夫婦は言ってたよ。
あんたに趣味の釣具店をやる資金だといって2千万近く貸したって。
でも返ってこない!お兄さんの手前そんな話を奥さんにする訳にもいかないしどうしたらいいんだろうって。
そんな…そんな事が?だから私は目出し帽を被った男が私と的場さん夫妻を襲ってきた時真っ先に疑ったのは池本さんあんたの事だ。
でも私はその事は言わずに人に罪を着せる事なく自分の無実を証明しようと思ったんだ。
ふざけるな!何で俺がそんな金の事で妹を…。
それだけじゃない!私は知ってるんだ。
今なお的場さん夫妻にかけられていた生命保険が支払われていない事を。
ええそうよ。
私達は正当な相続人なのに事件がまだ未解決という理由で支払われてないわ。
でもそれはあなたが犯人だからでしょ!だから未解決なのよ。
結局そうなんですよねぇ。
結局あなた方はお金のために事件を解決しようと焦ってる。
そのために私を犯人に仕立てたいだけなんだ!違う!!違う。
俺はなぁ…!ちょっ…ちょっと!あなたやめて!あなた。
口ではこの男にはかなわないわ。
この男は巧妙なのよ。
本当に悪魔なのよ。
雪見さんこれでわかったでしょ?誰が正しいのか。
いいえ。
あなたは答えてないわ。
なぜ偶然が三度も続いたのか。
偶然的場さんって方の隣に引っ越してきて偶然関さんって弁護士さんと同じ街に住みなぜ偶然うちの隣に引っ越してきたのか。
それは…。
さあ答えなさい!答えるべきよあなたは。
それは…。
的場さん夫妻に頼まれたからです。
(武内)お兄さんが怖い…。
偶然を装って自分達を守るために隣に住んでくれないかって。
バカな!何言ってんだよ?妹達はなお前の事を嫌ってたんだよ!でも私はそれを守る事ができなかった。
その後も私はこの男が逆恨みして関先生や梶間先生を襲うんじゃないかと心配で…。
嘘つけ!そんなデタラメ…。
じゃあ皆さん思い出してください。
うちのライアンの皮ひもが何者かによって切断されていた事を。
そして見かけない男がライアンの周りをウロウロしていた事を…。
そうだよ武内さんの言うとおりだよ。
違う…違うんだ!それもこいつが仕組んだ事なんだ。
虐待も水子地蔵の事もこいつがどっかで調べて…。

(まどか)どうしたの?おじいちゃん。
お義父さん…!ただいま。
まどか2階行ってなさい。
はーい。
いや納骨の日に病院へ寄ってもらうのも何だから…。
1日早く戻ってきたよ。
それだけだ。
ああありがとうよ。
なあ親父聞いてたろ?今の話。
元裁判官としてどう思う?どっちの話が信憑性ある?家庭は法廷ではないよ。
揉め事を持ち込むな。
争い事も持ち込むな。
すまんがね皆さん今日はこれで引き取ってもらいたい。
すいません。
お騒がせして申し訳ありませんでした。
失礼。
《どうしたんだ?なぜ動揺している?》《私は自分の下した判決に自信がないのか?》《自信が…》
(尋恵)はいこっちいらっしゃいいらっしゃい。
いいよな?納骨式には親戚も来るし。
おふくろのさ不機嫌な顔見せたくないから。
ええ。
私も体調がすぐれないしできたらやめたいなって思ってたから。
じゃあ行ってくる。
じゃあねママ行ってくるね!ほら危ないわよまどか。
こっちいらっしゃい。
《私は許せない》《誰かが私をおとしめようとしている事は事実だ》《それは誰なのか?》あの地蔵ねうちが建てたんですよ。
でもそれが昨日いきなり撤去だなんてね。
で誰なんです?誰が注文を?ええ。
梶間雪見…。
あれ?女の名前になってんな…。
電話で注文してきたのは男だったんですがね。
電話?電話で注文受けたりするんですか?お宅は。
いや初めてですよ。
それも前金で代金すぐに振り込んできましたからね。
で墓碑銘や設置する場所は向こうの指示どおりに?うん。
でも何か不都合があっちゃまずいですからね向こうの電話は聞いておいたけど。
ホントですか?
(電話)
(池本)「もしもし池本ですが」「もしもし?」池本ですけどどちらさん?「私です。
梶間雪見です」雪見さん…何であんたうちの電話番号…。
水子地蔵を作った石材店がわかったんです。
それで注文した人間の電話番号にこちらの番号が…。
何だって!?違う俺じゃない。
信じてくれ。
俺じゃないんだ!
(電話の不通音)もしもし!もしも…!クッソ…。
石材店に武内がうちの電話番号言ってたらしい。
本当に水子地蔵注文したの武内だったのかしら?妹さん夫婦から内緒で借金をしていたっていうあなたの話を聞いて私誰も信じられなくなった。
誰も…。
杏子!《その頃私も誰も信じられなくなっていた》《誰も…。
誰かの悪意…》《何だかそんなものと戦うのがばかばかしくなって…》《ばかばかしく…》「私の夢5年1組高瀬雪見」うわーっ!お母さんお願いやめて!もうやめてよ!あっち行け!お母さんお願い。
うわーっ!ああっ!「私の夢はあたたかい家庭を作る事です」「誰も病気で死なない事故に遭ったりしない」「いつもお互いの健康に気遣ってにこにこ笑って楽しい家庭を作る事です」お母さんお母さん…!お母さん…。
「その家庭を作るためならそういう家族を作るためなら私誰にも負けない」「絶対絶対作ります」「絶対絶対絶対作るから」ママ。
ママはホントにまどかのママだよね?もう雪見先生じゃないよね?まどか…。
梶間判事の娘さん?はい。
今日は義父に頼まれて来たんです。
例の4年前に起きたネクタイ殺人で武内真伍の取り調べをなさったのが野見山警部だから武内の事をいろいろ聞いてこいと…。
そう。
あの判事がね。
でも変だなぁ。
聞いてこいと言うのに本人も来たみたいだ。
お義父さん!?雪見さん。
君はどうしてここ…?そうか。
君も…。
そうか。
いよいよ大変な事になってる訳ですね梶間家も。
それで慌ててご家族総出で私のところに武内真伍の事を聞きに来た。
いいえ私は…。
梶間さん捜査用語でジョーカーっていうの知ってますか?ジョーカー…つまりババです。
裁判でね冤罪事件の被害者だったってレッテルを貼られた武内真伍は我々にとって一番めくりづらいカードなんですよ。
二度お手つきはできない。
そしてその奴をジョーカーにしちまったのが梶間さんあなたの無罪判決だ。
何を言ってるんだ君は!冗談じゃないよ。
出された証拠を見ればあの判決が間違ってないって…。
それじゃなぜそんな慌ててるんです?当ててみましょうか?あなた今まで裁判官という風上から事件を見ていた。
しかし今度は風向きが変わり火の粉が自分のほうにかかってきた。
私は知ってるんです。
なぜあなたが裁判官を辞めたのか。
調べたんですよ。
あなたあの後死刑判決を出さなきゃいけなそうな事件を抱えていた。
そしてあなたはそれが怖くなって裁判から逃げ出したんだ。
だから母親の介護のためとか大学教授にならないかって話がきたからとかそんな話は全部嘘っぱちだ!あんたは逃げ出したんだ。
手を汚したくないから武内の事件を冤罪事件にしてそれを花道にあなたは逃げたんです!何を言っとるんだ君は!?お義父さん…。
・警部!どうした?これが現場にあった靴跡から割り出したシューズの写真です。
(野見山)珍しい形だな。
ええ。
外国製なんですが日本ではインターネットの個人輸入をしないと手に入らないらしいです。
よし。
それを洗い出せ。
それを購入した人間の中から関弁護士と関係のある人物がいないか調べるんだ。
了解。
私は家族が好きなんです。
父が早くに亡くなって子供の時から家の中がめちゃくちゃだったからごく普通の平凡な家庭が持ちたいんです。
家族がごく普通のお正月迎えたり節分で豆まきしたり鬼は外福は内って言って歳の数だけ豆を食べ合ったり…。
雪見さん。
あの刑事さん火の粉って言いましたよね。
だから私自分の家族に降りかかった火の粉なら自分で払います。
私大事だから…。
家族好きだから…。
《小田原市。
この街で武内真伍は生まれ育った》《ここにはきっとあの男の秘密が隠されているはず》私だって死んだ両親が造園業やってたんで見よう見まねで覚えただけなんです。
《造園業…》さあ武内…?うちみたいな商売で?う〜ん…わかんないなぁ。
そうですか。
ありがとうございます。
うちは2年前に事業始めた会社だからねぇ。
昔の事はどうも…。
そうですか…。
武内さんねぇ…ちょっとわからないですね。
武内さんってご存知ですか?知ってるか?ううん。
いやぁ知らねぇ。
すみません。
武内さんって方ご存知ないですか?いや私じゃわかりませんけど。

(野見山)結局あんた一人か。
あの判事先生は手も汚さなければ汗もかかない。
やめてください義父の悪口は。
ホントにまだ足の具合が…。
腹立たしいんだよ俺は。
書類の上でしかあるいは法律の枠の中でしか人を見ようとしない人間が。
義父は一生懸命やったと思います。
与えられた証拠の中で一生懸命判断を下し…。
伝聞という事でな証拠として取り上げられなかったものがある。
奴の性癖だ。
性癖?自傷行為。
自分で自分を傷つける行為だ。
武内真伍はそんな事を?小さな頃から人の関心を買うためにしょっちゅうやっていたらしい。
親の愛に恵まれなかったんで寂しかったんだろう。
奴の父親は奴が中学の時に死んだ。
ひどいもんでな奴の母親は葬式の日に手伝いに来てた父親の知り合いと関係を持ったそうだ。
でもよくないなぁ。
特定の人間だけをお送りして…。
あまり喪主の家の人間のやる事ではないですよ。
(野見山)そしてその母親と男が車の事故で死んだ。
ところが奴だけが車に乗っていたのに奇跡的に助かった。
みんな噂したらしい。
奴がブレーキに細工をし事故に見せかけそして自分は乗っていなかったのに傷を作り乗っていたように見せかけたと。
(野見山)そういう伝聞証拠を拾い集めていくうちに俺は奴が悪魔だと思った。
じゃあその悪魔を作ったのは一体誰なんだ!?母親か?それとも奴の心の中にあった寂しさか?結局それがつかめなかった。
悪魔…。
ちょっと…。
あっ私この家の者です。
何があったんですか?入れてください。
はい。
あなた!?お前がなあんな池本なんて男連れて来るからいけないんだよ!何が?何があったのよ?ねえ教えて。
関弁護士殺しであの池本に逮捕状が出たんだよ!何ですって…?
(杏子)違います。
夫は確かにこのシューズを持っていました。
でも盗まれたんです!だが結局池本は行方をくらましそして逆恨みしおふくろを襲った。
えっなぜなの?なぜ池本さんがお義母さんを襲わなくちゃいけないのよ!?そんな事知るか!襲うなら武内さんでしょ!武内さん襲うならわかるけど…。
私がこの家にいると思って入ってきたんじゃないですかねぇ。
それでお母さんに見つかり突き飛ばした。
その包帯…。
この家から飛び出してきた奴と出くわしてナイフで切られたんです。
残念ながら逃しましたが…目出し帽は奪った。
違うわ。
池本さんのせいにするためにその怪我は自分でつけたんじゃないんですか?何言ってんだ!バカな事を。
だってこの人は…。
(尋恵)私見たわ…。
気を失う直前に…。
杖をついた池本がそこを出てったわ…。
何が自分でつけただ?血迷った事言うのもいい加減にしろ!いいんです。
雪見さんはあの池本の巧みな話術に騙されてるだけなんです。
いつか目を覚ましてくれますよね雪見さん。
私はそう信じてますから。
《何かが違う》《すべては武内の思うとおりのまま動いてるような気がする》《でもなぜなんだろう?》《なぜ義母を襲った?》《関弁護士殺しの犯人にされそうになった池本さんは思い余って武内を襲う》《その時武内は傷を負った》《でも武内はあのとおりの大男だ》《逆にその時池本さんを殺してしまったとしたら?》《そうだ。
きっとそうだ》《それをごまかすためにいかにもやけになった池本さんの仕業に見せかけた》《じゃあ今池本さんはどこに?》・
(でんでん太鼓の音)ちょっと…ごめんまどか。
ママ考え事してるの。
うるさいその太鼓!大体こんな太鼓あなたどこから持ってきたのよ?大きいおばあちゃまのお部屋。
尋恵おばあちゃまが好きな物持って行っていいって言うから。
ああ…。
今日遺品の整理するって言ってたもんね。
でねその時まどかあのいつか来た足の悪いおじさんがお隣のおじちゃんの車に乗せられたとこ見たよ!何ですって!?それホント?うん。
あの足の悪いおじさん病気だったのかな?ぐったりして横になってた。
車…車の中…!《あれだわ。
池本さんの遺体…》何してんだよお前こんなとこで。
いや…あっその…。
いえ言うわ。
まどかが池本さんの死体が車に乗せられてるところを見たって言うの。
何言ってんだお前!正気か!?あの…。
まどかちゃんが?不思議ですね。
私の車はここのところずっとガレージに入れっぱなしです。
どうやって見たんですか?とにかくここ開けて!現に足みたいなのが見えるじゃない!いや。
いいです武内さん。
相手にしないでください。
いやそれで雪見さんの気が済むならお安いご用です。
(鍵の開く音)早く!えっ…。
武内さんすいませんでした。
このお詫びはきっと。
お前には話がある。
来るんだ。
お前にはほとほと愛想が尽きた。
俺は明日からまどかと母さんを連れて知り合いの別荘に行く。
その間に荷物をまとめてこの家から出て行ってくれ。
聞きたくない。
お前の話はもう何も聞きたくない。
めちゃくちゃだよ。
我が家はお前のお陰でめちゃくちゃだよ。
とてもじゃないがなこんな環境じゃ司法試験の勉強にだって打ち込めない。
あなた…。
鍵はポストに入れてってくれ。
大きな荷物は住む場所が決まりしだい送る。
それとまどかには何も言わないでほしい。
あの子は俺の子だ。
俺が後で話す。
じゃあそういう事だから。
いってらっしゃい。
はい行って来ます。
気をつけて。
ねえママは行かないの?えっ?どうしてママは一緒じゃないの?ママは行かなくていいの。
さあ車に乗って。
向こうへ行ったらねおもしろい事がいっぱいあるんだから〜。
じゃあ行って来ます。
気をつけて。
雪見さん。
お義父さん!?君もここへ?雪見さん信じて。
主人は池本は人なんて殺していない!ましてやあなたの家のお義母様を襲ったなんて嘘よ!全部武内が仕組んだ事なのよ。
だと思います。
私も。
それで私最初の事件のあった的場さんご夫婦の家を見せてほしいんです。
どうやって武内が自分の体を傷つけたのかその方法を解明したいんです。
どうしたんです?何か?いえ…。
あなたのお義父様も同じ事を。
えっ!?雪見さんこれ運んでくれ。
裁判所の知り合いをちょっとごまかしてな。
当時の証拠写真や何かは借りてきたよ。
真面目一筋で生きてきたこの私がこの歳になって初めて犯罪者の仲間入りをしてしまった。
はははっ…。
でも何でこんな事を?私の父はね仕事だけの男だった。
酒を飲むとよく酔っぱらって母親に暴力を振るっていた。
それを見た私は子供心にこんな家庭は絶対に作るまいと誓った。
もっと家族を大事にする家庭。
あたたかい…あたたかい家庭を作ろうと思った。
ところが今の私はどうだ。
そう思ったらねいても立ってもいられなくなっちまったんだよ。
私も…私も同じ…。
バカだねぇ…泣いてる場合じゃないだろ。
火の粉を振り払うんだろ?家族を守るためにさ。
(俊郎)こっち見て。
はいチーズ。
(カメラのシャッター音)富士山入ってる?うん。
入った入った。
ああきれいだ。
そろそろ来る時間なんだけどな。
誰待ってるの?誰か来るの?あっあれ違う?あれじゃない?いやすいません。
遅くなっちゃって。
いえいえ。
こっちこそこんな手の込んだ事してもらっちゃって悪いなって思ってるんですよ。
しょうがないじゃないの。
武内さんと一緒に別荘行ったなんて言ったらあの人また何を騒ぎ立てるか。
母さん。
じゃあ行きしょうか?僕が先行きますから付いてきてください。
はい。
これはどうですか?そんなんじゃ力は入らないしこんな傷はできない。
でもこれを見ると…。
とても1人じゃつけられない傷ですよね。
だから私もね無罪の判決を下したんだ。
もちろん奴が子供の時から自分で自分の体をこう傷つけるそういう性癖を持っているのを知っておった。
しかしねその傷はね自分1人ではつけられんよ。
そうですよね。
勝手よね。
私達があれだけ武内が犯人なんだって言ってたのに何も聞いてくれなかったくせに。
今頃になって火の粉が自分の家族に降りかかると慌てて…!やめて杏子さん!気持ちはわかるけど今は…。
今言わなくていつ言うのよ!ずっとずっとあの人の事恨んできたんだから。
恨み続けてきたんだから!でもなこの証拠を突きつけられたら誰だって裁判官は…いや今だってこの証拠で判断しろって言われたら私は…。
あきらめないで!あきらめないでください。
今こうしてる間にも武内は私達の事を狙ってるんですよ。
それだけじゃない。
お母さんや俊郎さんが武内という男の本性に気づいた途端に命を狙われるかもしれないんです。
まどかだって。
だからお願いします。
あきらめないでください。
頼みます。
お義父さん。
ネクタイ…。
うん。
何かもう一工夫いるな。
お義父さんこれ!でんでん太鼓か。
何か支柱がいるな!あっこの柱!うん。
ちょっとやってごらん。
それをもっとこう勢いよくやってごらん。
(武内)うっ!そうだ…そうだよ!これだよ!じゃあもう一度裁判やり直す事が!いや…。
どうしたんです?何か不都合な事でも?ダメなのよ。
一事不再理といって一度確定した裁判をもう一度提訴する事はできないの。
そうですよね?ああ。
そんな…じゃあどうするんです!?おばあちゃん殺したのかもしれない。
関弁護士を殺して埋めたのかもしれない。
池本さんだって殺したのかもしれないのに…。
まどかがぐったりした池本さんを武内が車に乗せてたって言ってたんです。
でも実際車のトランクを開けたら死体は入ってなかったし…。
今何て言った?まどかが見たって話です。
池本さんを車に乗せてたって。
そうか…車か!車だ。
まどかがね以前武内の家の庭のガーデニング用の手押し車の事をねお庭の車って呼んでいたんだよ。
お庭の車?だからね武内は池本さんの遺体をねその手押し車に乗せてどっかに運んだんだ。
まどかが見たものは嘘じゃなかったんだよ!じゃあ池本さんの遺体はあの家のどこかに!?いやそれは一時的なものだ。
用心深い奴の事だよ。
いつまでもそんなとこに隠せるとは思ってない。
どっかもっと人目の付かないところに運んだに違いない。
別荘…。
武内は朝霧高原に別荘を持っています!恐らくそこに…。
待って。
別荘って…。
まさかそんな…。
どうした?俊郎さんは知り合いの別荘を借りたからってまどかとお義母さん連れて出かけたんです。
まさかその別荘ってのが…。
ええっ!?急いで!うちの車使っていいから。
杏子さん…。
私は行かない。
万に一つの望みに懸けてるから。
主人が生きていて私に電話してくれるって。
ここです。
すごくいいとこですね。
本当。
森に囲まれて空気がおいしい。
それに静かだし。
さあどうぞ!うわぁ…!わあ…。
ああいいな。
俺こういうとこ住みたかったんだよな。
今日から3日間もう自分の家だと思って思う存分使ってください。
いやぁ気に入ったら3日と言わずいつまでいてもらっても構いませんから。
あのお風呂は?お風呂?あっ温泉ですよ。
あの向こうにあるんですけどね本当に自由に使ってください。
じゃああの僕ちょっと買い出しに行って来ますから。
あっそれじゃ私も。
あっいや1人で大丈夫ですよ。
それよりおかあさんは温泉で骨休めするのが夢だったんですからもうゆっくりつかってください。
まあ…。
じゃあ。

(尋恵)まどか〜とってもいいお風呂だからおばあちゃんと一緒に…あら?まどかは?うん?いない?表でも行ったのかな。
ちゃんと見てないんだから。
あら?まどか〜?まどか〜!おばあちゃん…。
(鳥が羽ばたく音)奥さんやめましょうよ。
せっかく家族みたいに仲良くなれたのに裏切るのは。
うっ裏切るなんて…。
なっ何の話かしら?ですよねぇ。
奥さんは何も見なかった。
もし見たとしても忘れてくれますよね?やさしい人だから。
もっもちろん…。
もちろん。
ああっ…。
(ドアの開く音)まどか。
どこ行ってたんだよ。
ダメじゃないか。
1人で出歩いちゃ。
どうしたの?母さん。
顔色悪いよ。
何?ああっ!うっ!ああっ!
(まどか)きゃあ!
(武内)ついてないよなぁ俺も。
本当にあんた達とは家族みたいな付き合いができると思ってた。
きっかけをつかもうと仕掛けたシェパードはちょっとやり過ぎて梶間先生傷つけちゃったけどあとは全部うまくいったのに…。
おばあちゃんもうまく消したし俺を疑い始めた雪見はちゃんとあんた達から孤立させた。
全部うまくいって池本になすりつけてこれからって時だったのに。
もう…。
ううっ!うーっ!あんた達には一酸化炭素中毒で死んでもらう。
その後上に運んで火をつける。
慣れない別荘で失火。
家族3人一酸化炭素中毒で焼死。
しょうがないよね。
ねっ。
家族になれなかったんだから。
そうでしょ。
ねえ。
ううっ!うちの家族はどこ?どうしたんですか?血相変えて。
何かあったんですか?とぼけないで!あなたのやった事はもうすべて何もかもわかったのよ。
どんなふうにして背中に傷をつけたのかも。

(物音)雪見さん!この中だ!うっちょっと…うっ!あいつ!離せ!この野郎!こらっ!急げ!急いで!はい。
来るな!来るな!・この野郎!えい!えい!やっ!あっ痛い痛い…!・わあー!あなた!お義父さんが武内と!わかった!やめろ!やめろー!ああ!やめてくれ!ああ…!うわー!!お義父さん!やめてください!お義父さん!離せ!こんな悪魔みたいな奴は…!殺したら負けちゃう!私が!殺したら負けちゃうんです!私達の作りたかった守りたかったあったかい家庭ができなくなるんです!あんたなんかに負けてたまるか。
あったかい家庭作るのが私達の夢だったんだから!お正月におせち囲んで節分に豆まきしてお鍋囲んでみんなで海水浴に行って!あったかい家庭作るのが私の夢だったんだから…。
あんたなんかに殺されてたまるか。
ママー!・
(まどか)ママー!絶対…壊させないよ。
あんたなんかに…壊させるもんか!武内君。
1年前私があの裁判の真実を見抜く力があったならば君は関弁護士も私の母も池本君も殺さずに済んだのかもしれない。
私は自分の力不足が残念でたまらない!すまなかった。
みんなにも恐い思いをさせてすまなかったなぁ。
親父。
雪見。
俺が…俺が…。
ごめんなさい。
雪見さん…。
2015/04/02(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
特別企画“火の粉” 雫井脩介原作の超一級サスペンス![再][字]

詳細情報
◇出演者
原沙知絵、村田雄浩、愛川欽也、朝丘雪路、石黒賢、柳沢慎吾、相本久美子、高松英郎、嶋尾康史、風見章子、森迫永依 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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