じゃあ、行きましょう。
今後ますます必要とされる介護の仕事で今、都市部を中心に人手不足が深刻化しています。
中にはサービスを休止する事業所も出てきています。
都内でグループホームなどを運営する社会福祉法人です。
昨年度採用した63人のうちすでに3分の1が退職し3つの事業所が閉鎖に追い込まれています。
背景には、介護職が直面している不規則な勤務や伸び悩む収入などの課題があります。
なんとか介護の人材を定着させたい。
働き方や待遇を改善する取り組みが各地で始まっています。
やる気を高め質の高いサービスにもつなげようとする試みです。
介護人材を確保するにはどうすればいいのか。
今夜は模索を始めた現場の取り組みから考えます。
こんばんは「クローズアップ現代」です。
今夜は国谷キャスターが取材のため、西東が担当します。
介護現場で深刻な問題となっている人手不足。
特に都市部では職員を計画どおりに配置できない特別養護老人ホームが半数近くにも上っています。
そしてこの職員不足がサービスの休止や事業所の閉鎖を招くケースも出ています。
そもそも介護の現場はなぜ人手不足になっているのか。
介護は命を預かる責任の重い仕事。
徹夜の泊まりも重労働もあります。
きつい仕事です。
しかし、そのわりに給与が低く平均年収は全産業と比べて100万円余り下がります。
ここ数年の離職率は16%から17%余りと人材が定着しにくいのです。
そこで国はこうした事態を打開しようと4月から介護職の給与を引き上げる方針を示しました。
月給でプラス1万2000円の処遇改善を行うなどして10年で介護職を215万人に増やすとしています。
しかし、実は10年後この2025年には団塊の世代がすべて75歳以上になります。
たとえ今の国の対策がすべて行われたとしても介護職はあと30万人余りが必要だといわれます。
一方の介護施設に対しては介護報酬の削減で収入は減少。
大きな影響があると見られます。
介護職を増やしたくても難しい現実の中で、工夫して待遇や勤務体制を見直すことで人材確保を実現している施設がありました。
まずはその取り組みからご覧いただきます。
東京・町田市にある社会福祉法人が運営する介護施設です。
およそ430人の介護職員が働く、この法人。
かつて正職員の離職率は20%を超え大きな問題になっていました。
負担の重い介護の職場環境を改善しようと、2年ほど前から夜勤専門のシフトを設けることにしました。
それまでは1人の職員が日勤と掛け持ちする不規則なシフト。
しかも夜勤は16時間の長丁場。
肉体的、精神的にも大きな負担となっていました。
そこで夜勤だけを専門に週3日から4日担当させることにしました。
勤務を7時間短縮。
それでも月収は40万円を確保。
夜勤との掛け持ちをやめることで日勤の負担を軽くすることができたのです。
さらに負担軽減の取り組みとしてスタッフ間で一斉に会話ができる通信機を導入しました。
現場では、高齢者に対し職員が1人でケアする機会が増え精神的な負担は増していました。
この通信機を使うことで助けが必要なときには手の空いた職員がすぐに駆けつけられるようになりました。
退職の最も大きな原因だった人間関係の悩みに対しては上司が個人面談を行うことにしました。
グループ全体ではこうした面談を年に延べ6000回行い職員の悩みを聞いています。
こうした取り組みで離職率は、およそ10%にまで下がりました。
昨年採用した新人職員の場合一人も辞めていません。
人手不足に直面する介護の現場。
平均月収は全産業よりも10万円ほど低い水準に置かれています。
責任の重さに比べ、働き続けても給与が思うように上がらずそれが退職の主な原因になっていました。
そうした中、介護職の待遇を改善する試みも始まっています。
職員のキャリアアップ制度を導入した社会福祉法人です。
ここでは、職員全員が年1回介護の技能や知識を問う独自の試験を受験。
合格すれば、給与が上がります。
ケアマイスターと呼ばれる制度で技術力や指導力などの評価に応じ6段階のランクがあります。
例えば、ゴールドを取得した場合基本給と手当に加え、月収が1万5000円アップします。
経験者ですら合格が難しい最高ランクのマイスターでは月収が3万円アップ。
基本給や手当を加えれば、年収が600万円に達する職員もいます。
職員にはランクごとに色の異なる職員証を配付し着用させています。
この日行われたマイスターの実技試験。
700人中10人しか合格者のいない難関です。
課題は利用者をみとったあとケアをどのような手順で行えばよいか後輩職員に実演指導を行うというものです。
この社会福祉法人では高いランクほど高度な技能と指導力が求められています。
こうした介護職の能力と月々の給与を結び付けています。
ありがとうございました。
技能に応じた給与水準を維持するために、この法人では利用者の数を増やすなどして事業の拡大を行ってきました。
確保した職員のやる気を高め利用者サービスの充実につなげています。
若手職員が取り組んでいるのは人生の最後に一番好きだった食べ物を口にしてもらう企画。
利用者が満足できるサービスを提供することでさらなる利用者を呼び込むという循環を作り出しています。
おいしいですか?
スタジオには、介護保険制度にお詳しい、淑徳大学教授の結城康博さんにお越しいただきました。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
結城さんは、ケアマネージャーとして現場の経験も豊富なんですけれども、この2つの、2つじゃないですね、勤務体系の見直しであったり、さまざまな工夫を凝らした取り組みについて、どうご覧になりましたか?
非常に高く評価していると、私は思いますね。
やっぱり、勤務体系とか、例えば日勤なら日勤、夜勤なら夜勤とか、あと職場の人間関係でちゃんと管理職の方が話を聞いたりとかですね、そういう人間関係をちゃんと調整しているという評価、それからもう一方で、ちゃんとキャリアアップに応じて、賃金体系をきちっと決めていると。
やっぱり介護の仕事とか、福祉の仕事っていうのは、どうしても、賃金体系について少し遠慮しがちなんですけれども、やはり賃金が上がっていくということは、それなりの技術が上がっていくというのは、やっぱり物差し的な意味合いもありますから、それに応じて、やっぱり賃金が上がっていくという方式をしないと、やっぱり人材確保というのは難しいと思いますね。
やりがい、そういうマネジメント、賃金っていうのは、両方大事だということなんですね。
そうですね。
こういったことというのは、実際、使う側、利用者、高齢者の皆さんにはどういう影響を及ぼすと思いますか?
やっぱり職場の介護士さんたちの人間関係がよくなるということと、きちっと賃金が保障されて、評価も高くなるということは、結果的には介護サービスがすごく質が向上していきます。
やっぱり介護の職場の待遇がよくなるということは、やっぱり介護って人のサービスで決まってきますから、やっぱりですから、サービスの質が向上するのに、非常に私は効果的だと思いますね。
一方で、一生懸命に取り組まれている現場もある一方で、なかなか厳しいという所も多いと思います。
実際の現場っていうのは、どのようになっているんでしょうか?
確かに全国的な介護現場を見ますと、介護っていうのは肉体的にも精神的にも非常に大変な仕事です。
かといって、賃金体系が必ずしも全産業と比べると高くないと。
そういう意味では、非常に今、介護人材不足が深刻化しています。
特に他産業でも、人材をかなり欲しいと思われていますので、他産業との人材の奪い合いの観点で、人材不足が深刻化して、例えば賃金があまり高くないので、男性が30歳ぐらいになって、なかなか家庭を持つのに大変なので、介護職を辞めてしまうというのは、実はこれ、10年来ずっと続いていて、今も深刻な状況ですね。
男性が寿退社をするという?
これはもう、ずっと改善すべきだといわれていながら、なかなかないということが、今回、介護報酬がマイナス改定になりましたので。
きょうからスタートですね?
ですから、このマイナス改定というのは確かに月給ベースだけでは介護士さんに1万2000円、少し上がる措置はなされていますが、介護事業所全体が、そのマイナスで減収になるということは、体力がなかなかなくなりますから、VTRのような2つの一生懸命やっているところでも、今後、水をさすような私はマイナス改定が影響してくる、非常に心配をしているということですね。
いずれにしましても、施設はどうやって収入を増やして、介護職、人材を確保していけばいいのか。
大きなテーマです。
こちらをご覧ください。
介護保険制度のサービスの中には、使っていいものと、そうではない、適用外、限界もあるんです。
例えば高齢者の自宅の庭の掃除。
友人の冠婚葬祭の付き添いなどは、原則対象外です。
しかし、ここの部分についても、サービスを提供することで、運営を軌道に乗せた取り組みがありました。
東京・三鷹市。
NPOから派遣された訪問ヘルパーが高齢者の自宅を訪ねました。
こんにちは。
よろしくお願いいたします。
利用者は85歳の女性です。
生活面での援助が必要な要支援2の介護認定を受けています。
この日、ヘルパーが行ったのは、部屋の片づけです。
長年の間に使わなくなったものがあふれ転倒してけがをするおそれがありました。
この女性の場合、介護保険で受けられるサービスは月におよそ2600円の自己負担で週2回だけ。
洗濯、身の回りの掃除などに限られていて部屋の大掃除まではできません。
そこで活用したのが介護保険外のサービスです。
1時間3600円の全額自己負担ですが保険ではできない、時間のかかる大掃除をヘルパーに頼んだのです。
以前は散らかっていた部屋。
きれいに整頓されました。
しかも女性が自立して生活できるようヘルパーの専門性を生かして動線を確保。
つかまり立ちできるように家具の高さまでそろえるきめ細かな配慮がなされています。
保険外サービスはヘルパーにとってもメリットがあります。
指名を受けるとヘルパーの時給は2割増しになります。
利用者の側も、信頼できるヘルパーに毎回頼めることが安心感につながっています。
このサービスを提供しているNPOの代表、柳本文貴さんです。
介護保険の原則に縛られると提供できるサービスの幅が狭くなるという問題意識から7年前から保険外サービスを中心とした事業を展開しています。
これはだめなんじゃない?
これはだめ。
介護保険だめ。
このNPOには多様なサービスを提供できる介護職が集まりました。
趣味の和装を生かし着付けの介護もできるヘルパーや人生最後の旅行に付き添いみとりまで介護するヘルパーまでいます。
利用者の多様なニーズに応えられ頑張ればそれに見合う報酬も得られる。
この仕組みに魅力を感じた人たちが集まりその数は50人にまで増えました。
こういったニーズに合わせて、介護保険とは違う外側のサービスをしていくという施設、それで運営をしていくという施設の取り組みについてはどう見ましたか?
こういう、介護保険が使えるサービスと、介護保険が使えないサービスをミックスするサービスですね。
私はこれは一定程度評価ができる。
やっぱり介護保険が使えるサービスっていうのは、介護保険っていう財源制約がありますから、なかなか賃金の財源確保が難しいんですけれども、介護保険が使えないサービスっていうのは、ある意味、完全市場経済でやりますから、利用者さんと提供者側が契約である意味、普通のお金でやっていけるわけですから、そういう、その分を賃金として補填するという点は非常にいい点ですし、もう一つは介護保険で使えるサービスっていうのは、ある程度、法律で規制があるんですけども、使えないサービスの場合、完全市場のサービスっていうのは、利用者の趣味とか、いろいろなことのバリエーション豊かに使えますので、ヘルパーさんもVTRで言っていたように、非常に楽しくやりながらできるという点ではいいですね。
笑顔が見えてましたね。
ただ、評価としては一定程度だということは、懸念される部分もあると?
私はこのへん、3つの課題があると思います。
1つ目は、やっぱりこの経済格差という問題からすると、お金がある人は、保険というか、保険内の要するに介護保険の使えるサービスしか使えないんですけれども、お金のない人は介護保険が使えないサービスっていう自己負担が高いので、なかなか難しいので、そこで格差が生じてしまうと、それから地域格差の問題も私は指摘できて、こういう介護保険が使えるサービスと使えないサービスをセットでやる事業所っていうのは、なかなか都市部を中心にはできますけれども、地方ではなかなか生じないんではないか、3つ目としては、やっぱりこの介護保険が使えないサービスをどんどん進めていきますと、過剰な供給をする営利企業が出てくるということですね。
今、認知症の高齢者も多いですから、そういう判断能力が少し難しい人にも、むだなサービスを提供してしまう事業所も出てくるということはちゃんと注意しないといけないと思いますね。
現段階で言いますと、そういうのをチェックするシステムっていうのはない?
なかなかその介護保険が使えないサービスのところっていうのは、自費のサービスですから、完全市場なので、提供側と使う側の民民契約なので、なかなか自治体や国が関与できないので、もしその並行して使えるような、なんらかの規制は必要かなと思います。
これからしっかりチェックしていかないといけないですね。
でも2つをミックスしていくというのは、有効な手段だとは思いますね。
さて、9年ぶりの介護報酬引き下げがまさにきょうから始まったという中で、一方で、今の対策をしっかりやれたとしても、10年後、30万人の介護職の皆さんを、獲得しないと立ち行かなくなるという中で、これ、どう考えていけばいいんでしょうか?
今回も、先ほど申し上げたように、マイナス改定っていうのは、一部、事業所が収益を上げているとか、内部留保とか基金を持っている方、いろいろありましたけども、やっぱり、私は一部の事業者はそうですけれども、大部分の事業者はなかなか厳しいと思います。
じゃあ、介護保険の財源が厳しい中で、現場でやりがいとか、創意工夫でやりなさいと言っても、それも限界があると思うので、やはり私は介護報酬を大幅アップするとか、公費負担をするとか、収益を上げている所は、会計検査をするなりとか、やっぱり公費とか保険料を上げて、介護財政を豊かにしないと、最終的には、介護人材を確保するのは難しいですから、現場の創意工夫に依存していくという体質、このへんだけでは、できないので、やっぱり両方、財源と現場と両方組み合わせることが必要だと思いますね。
とにかく現場だけの努力には任せずに考えていきたいと。
その辺で国もぜひ方向性を示してほしいと思いますね。
2015/04/02(木) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「介護の職場に人を呼び込め!〜介護事業・人材確保の最前線」[字][再]
慢性的な人手不足や低賃金が続く介護の仕事。介護報酬引き下げのなか、給与や昇進など処遇を改善し人材確保につなげる各地の取り組みを通して介護制度のあり方を考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】淑徳大学教授…結城康博,【キャスター】西東大
出演者
【ゲスト】淑徳大学教授…結城康博,【キャスター】西東大
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ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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