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【軍事ワールド】韓国海軍“パクリ製造”の主砲暴発、実戦中に突然停止も…生かされない“人災”セウォル号事故の教訓

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韓国海軍“パクリ製造”の主砲暴発、実戦中に突然停止も…生かされない“人災”セウォル号事故の教訓

軍事ワールド更新

 韓国海軍でまた艦船装備の“パクリ改造”や偽装が明らかになった。多くの中型艦に主砲として積まれている「76ミリ砲」が伊メーカーの製品を“参考”に造られていたことが判明。メーカーの抗議にも韓国側は正当性を主張したが、改造砲は暴発したり実戦中に停止したりと考えられない事故を起こしている。また以前、救難艦がソナーの代わりに魚群探知機を搭載していて問題となったが、新たに3隻の掃海艇でも魚群探知機が積まれていたことが判明。人災とされる昨年4月のセウォル号沈没事故からまもなく1年だが、韓国では惨事の教訓が生かされる気配はない。(岡田敏彦)

“改造砲”暴発の衝撃

 暴発事故は今年1月21日午後6時20分ごろ発生。朝鮮日報(電子版)など現地マスコミによると、黄海に配備されているコムドクスリ級ミサイル高速艇「黄道顕」の76ミリ砲が誤作動し、砲弾1発が誤って発射された。この事故で付近にいた水兵1人が爆風の影響などで頭部を負傷し重体となった。現地マスコミは「砲はイタリア製で、韓国企業が性能を改良したもの」としているが、実態は「改良」とはほど遠いといわざるを得ない。

「コピーされた」と伊メーカーが訴訟

 改良されたのは、伊オットー・メララ社の76ミリ速射砲。同社は世界的に有名な艦砲メーカーで、その製品の中でも76ミリ速射砲は西側の“大ベストセラー”。生産開始は1969年と古いが、優秀な性能と堅実かつ頑丈な設計で日本やカナダ、米国など多くの国が採用している西側艦艇の「標準艦載砲」だ。

 韓国海軍でもフリゲート艦など中型艦に採用していたが、これを参考にして同国のヒュンダイWIA社が2008年に新型の国産76ミリ砲を開発、海外への売り込み活動を始めた。これに対しオットー・メララ社は「コピー品だ」として特許侵害と営業損害で同社を訴えた。しかし韓国最高裁は、波よけの防盾の形などに独自性が認められるとして訴えを退け、ヒュンダイWIAは堂々と生産を開始した。

過去にも事故が続発

 オットー・メララ社が「コピー品」と断じた韓国産76ミリ砲の性能は、発射速度が本家の毎分85発を超える同100発で、海軍が新造艦に搭載。さらに、艦艇に搭載済みの既存のオットー・メララ製76ミリ砲についても、同様の速射能力を持たせる改造を韓国製部品を装着する形で行った。しかし、その結果は惨憺(さんたん)たる有様だった。

 まず昨年4月にコムドクスリ級高速艇「徐厚源」搭載の76ミリ砲が異常動作を起こした。10月には同級高速艇「趙天衝」が、北方限界線(NLL)を侵犯した北朝鮮艦艇に警告射撃を実施している最中に76ミリ砲の動作が突然停止。実戦中に故障するという最悪の事態を引き起こした。先の暴発・重体事故も起こるべくして起こったといえる。

気がつけば偽物

 韓国の一部メディアは、こうした事故を起こしたのは「老朽化で引退する艦から移設したオットー・メララ社製の砲」だと報じているが、同社製の砲を導入している他国ではこんな事故は起きていない。そう考えると、改造に使った韓国製部品に原因があった可能性も捨てきれないのだ。

 韓国アジアニュースエージェンシーによると、2010年12月には、オットー・メララ社製の76ミリ砲に偽物部品を装備したとして、韓国・釜山に本社を置く業者などが検察の家宅捜索を受けている。問題の部品は駐退筒と復座筒という、砲弾発射時の衝撃を吸収する部品。これらは規定でオットー・メララ社製の純正品を納入しなければならないのに、業者は国内でコピー品を製造。完成した偽物をいったんアメリカに送ってから逆輸入し、輸入証明書を得て軍に納品していたという。

 かつては大統領官邸を守る対空機関砲さえも同様の手口で劣化コピー品の銃身を付け、破裂事故を起こし大問題となった。韓国では純正品さえ整備や修理で部品交換するたびに偽造部品を付けられ、ふと気づいた時にはほとんどが偽造部品に替わっていた-という可能性さえないとはいえないのだ。

軍艦にまた魚群探知機

 偽造部品や偽物の横行はこれだけではない。海軍救難艦「統営艦」に軍事用ソナーを搭載したとしながら、実際にははるかに安価な漁船用の魚群探知機を搭載し、差額を関係者が横領していた事件は以前紹介したが、3月にはそんな軍艦があと3隻もあったことが明らかになった。

 韓国KBSニュース(電子版)などによると、今年海軍に納入するはずだった掃海艇3隻に、ソナーではなく魚群探知機が装着されていた。曳航(えいこう)式ソナーも軍の要求性能に届かないものだったという。

 昨年8月には、海軍の特殊作戦部隊が使う高速小型ボート13隻が故障続きの上、設計速度の45ノットを出すと艦首が大きく波打つ「ドルフィン現象」が起き、35ノットの速度制限を設けざるをえないという問題も発生。調査の結果、製造業者が中古のエンジンを新品と偽って組み込むなどしていた不正が明らかになった。

偽造の代償

 こうした盗作や偽造、不正による安易な「モノ作り」がどんな結果をもたらすのか-。朝鮮日報(電子版)が3月27日に報じたところによると、昨年8月に進水した新型護衛艦「江原」(2300トン)が、設計と異なる状態で作られたとして、防衛事業庁が修正を要求した。

 江原は試験運航中にいかりが落ちてソナーのカバーが破損。設計ではいかりを固定するピンが2本だが、実際には1本しか取り付けられていなかった。また配管のつなぎ目も設計とは違う工法で作られていた。安易な“工作”が、試験航海でいかりを落とすという前代未聞の恥ずかしい事故につながったのだ。

 韓国内では道路陥没や工事現場の倒壊など信じがたい事故が多発。その多くが手抜き工事が原因とされるが、軍でも同様のことが行われているようだ。昨年4月16日に起きたセウォル号事故からまもなく1年。乗客乗員295人が亡くなった惨事の教訓はどうなったのだろう。