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 神宮にいる誰もが、阪神・福留のプレーにだまされた。

 1日のヤクルト―阪神戦。2―1で阪神リードの八回裏、2番手の松田が1死一、二塁のピンチを作る。打者は左の川端。芯でとらえた打球が、右翼に飛んだ。

 右翼の福留は、あたかも捕球するかのように、こちらを向く。だが「打った瞬間、自分の守備位置と打球を見て、届かないと思った」。ならば、せめて走者の判断を鈍らせようと、ウソの動きをしたのだ。

 打球は福留の頭上を越えてフェンスに当たり、跳ね返る。スタートが遅れた二塁走者の荒木は、右―二―捕と中継をつながれ、本塁でタッチアウト。後続も倒れ、同点機を逃した。「捕られる打球だと思った」と荒木。阪神の和田監督までが「ベンチから見てても、捕るんだと思った」と驚嘆するプレーだった。

 これを実際に行うためには事前に、球場の広さ、風向き、自分の守備位置を頭に入れておく必要がある。そして、バットの芯に当たるや否や打球の角度を踏まえて、瞬時に判断しなければならない。福留は「練習中も打球を追いながら、『この高さなら届く』と考えている。初めてやる球場でもないし」と言った。

 この日の風は、逆風だった。右翼の前に落ちるポテンヒットも複数出ていた。それだけに荒木は「打球が戻ってくるんじゃないかと思った」。阪神は岩本の好投も光ったが、それ以上にベテランの“技”で勝ちをもぎ取った。(井上翔太)