【ネタバレあり】「ソロモンの偽証 前篇」を観てきました。設定がかなり強引でイマイチ。
「ソロモンの偽証 前篇」を,映画の日に合わせてようやく観てきました。
特に惹かれる映画ではないのですが,岩田華怜が出ているという理由だけで観に行きました。
正直しんどい映画と思いました。いろいろ空気が殺伐としていて。後編観たい気なくします。
せっかくだから観るとも思うけど。
事件が起こったのが1990年12月25日で,そのとき岩田華怜らの学年は中2って設定ですが,リアルの私はそのとき中3でした。
この映画では,校内暴力がはびこっていた過去を描きたかったのかとも思いますが,もう私の中学時代はそれほどでもなかったです。
私の親戚のお姉さんなんかは,それこそタバコやシンナーをやって補導されたとか聞いたこともあります。シンナーで火災になり,お友達が死んだとかいう噂まで聞きました。
さらにそういえば,自分の記憶をたどると,中2か中3だかのときに,朝登校してきたら学校の窓ガラスがいっぱい割られていたことがありました。
それでもどうせ授業はされるのだろうと思って私は窓ガラスの割れた教室に入って席にいましたが,その後全校集会になってその日は帰ったのかな?
私はけっこうフツーに思っていましたが,学校のほうは普通と思わなかったのでしょう。
その後テレビ局も来てニュース報道もされましたし。ちなみに兵庫県多可郡の中学校のお話です。
そういう状況を知っていますから,けっこう冒頭のほうで校内しかもクラス内で死人が出たのに,担任が通知表を渡している描写を見るだけで,もうそれだけでリアリティが全然ない気がします。
その上の物語ですから,リアリティがあるようには思いませんでした。
特に,レビューを見ても皆さん疑問に持っていませんが,大人たちが疑問に思うものについて捜査をしないからといって,だから裁判になるという筋書きが強引すぎると思います。
そして,藤野涼子が本当に疑問に思ったならば,本来裁判ではなくて”探偵”になると思います。真実を探す探偵に。
そこで藤野さんはシャーロック・ホームズのように,華麗に知恵を働かせて,事件の全貌を暴いていくのです。
ところがこの作品では,藤野さんはいきなり裁判することを言い出しました。
裁判って,”刑事”と”民事”があって,一般的なのは私のやっているような民事訴訟のはずですが,この作品ではいきなり刑事訴訟ありきの話になってしまっています。
そこで犯人を仕立て上げ,後篇に向かって検察側・弁護側・裁判官(判事)側それぞれが意見を言い合うようです。
私は,藤野さん自らが”犯人を仕立て上げ”ること自体に,非常に違和感を感じました。
刑事事件ってそもそも一旦,容疑が確定したと警察が判断し,逮捕された者に対して為されるものです。
然るに本作品の場合,事件の全容がよく分かっていないので,容疑も確定してないわけです。
そんな状態で刑事事件に仕立て上げ,中学校の生徒が裁判らしきものを為すこと自体が,仕立て上げられた犯人(大出)に対する冒涜であると考えます。
その上でヒロインの藤野さん,いつの間にかちゃっかり検察側に立って,公平に検討すべき自分を忘れてしまっています。
本当に自分の意思を貫くならば,”裁判”という仕組みに当てはめることを考えるだけでなくて,上にも書いたとおり,探偵となって,自分ですべての真実を暴くと思います。
そうしていないところがどうも,いまの”醒めた”世相を表しているようで,非常に居心地の悪いものを感じました。
けれども,これは仕方ないのかも知れませんね。
”裁判”だけでなく,日本ではあまり普及しているとはいえない”陪審員”を作品に最初から当てはめていることから,これは日本の裁判員制度を当て込んだ小説なのだろう,と予想がつきます。
そこで調べると,日本で裁判員制度が導入されたのが2009年5月21日,そして原作小説の連載は,2002年から2011年までに及ぶ長編小説です。
裁判員制度の制度設計は1999年7月27日から為されているので,原作はそれを当て込んだものと考えられます。
だから,裁判員制度が適用になる刑事訴訟にせねばならなかったのでしょう。
とにかく,本来探偵として全貌を調査すべき内容にもかかわらず,また仮に裁判とするに当たっても,当事者間でなにを訴えてもよい民事訴訟とすべきところ,どうしても”裁判員制度”ありきで物語を作ってしまったがために,ストーリー的にボロが出ている気がします。
役柄は,三宅樹理役の石井杏奈が不気味な役を怪演していて,主演の藤野涼子を食っている気がします。
この子調べたら,アイドル E-girlsのメンバーで,映画,ドラマ,CMと,かなりこなしているようです。
彼女以外の中学生連中はみんな,素人っぽい演技な気がしました。
私の応援するAKB48の岩田華怜もチョイ役で,とりたてて上手いとも思えるほどでもありませんでした。残念。
時代考証ですが,電車でE217系が映りこんでいます。しかしE217系は1994年登場なので合いません。
また,マンションのロックもあんなタイプ1991年頃にあったっけ?と思いましたが,他の方からもおかしいと指摘されています。
セブンイレブンの描写もあったようですが,そこまでは気づきませんでした。
また,きっと1991年にはなかったと思われるマンションが,背景にたくさん映っているようにも思いました。
最後に纏めると,小説としてゆっくりと読むには面白いのかも知れませんが,数時間の映画に詰めたら,どうしても破綻したストーリーのほころびを隠しきれていない気がしました。
最近のコメント