「東京裁判のどの部分にも異議を述べない」岸田外相が政府見解示す
戦後70年談話が村山談話を否定するのではないかと懸念されるなか、安倍内閣は3月25日、「東京裁判のすべてを受け入れている。(東京裁判の)どの部分についても、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはない」との政府の見解を示した。岸田文雄外相が衆院外務委員会で、緒方林太郎衆院議員の質問に対し答弁したもの。
岸田外相は、その立場が第二次安倍内閣、第二次安倍改造内閣でも同じだったと述べるとともに、今後についても「内閣として引き続きこの立場は堅持する」と明言した。
また、岸田外相は、村山談話、河野談話の骨子を示すことについて、「慎重に検討し、しっかり確認したうえでお答えする」と、緒方氏に約束した。
東京裁判をめぐっては、サンフランシスコ平和条約11条で日本政府が極東軍事裁判を受諾したが、受諾したのは裁判全体ではなく刑の宣告部分だけだとする歴史修正主義の動きがある。最近では稲田朋美自民党政調会長が、「主文は受け入れている」として、「(東京裁判に)書かれている事実関係について、検証する必要がある」と述べ、刑の宣告以外を受け入れていず、東京裁判が認定した事実関係を否定するかのような発言が出ていた。
歴代内閣が「集団的自衛権を行使できない」としてきた憲法解釈を閣議決定で覆すなど、過去の政府の公式見解を易々と180度転換した安倍内閣だが、戦後国際秩序と日米安保体制の原点である東京裁判受諾については、見解を変更できなかったかたちになる。
緒方氏は、「サンフランシスコ平和条約第11条が受諾したのは、『判決と読むべきであり、死刑や無期懲役という刑の宣告だけを受け入れたもので、裁判全体を受け入れたものではない』という議論がある」と指摘し、1998年の政府答弁を示して、「この答弁が政府の統一見解でいいか」とただした。秋葉外務省国際法局長は「答弁で述べている政府の立場に変わりない」と、1998年の政府答弁を確認した。
1998年の政府答弁とは、同年4月7日、参議院総務委員会で政府委員が次のように答弁したものだ。
「この極東国際軍事裁判に係る平和条約第11条におきましては、英語正文でジャッジメントという言葉が当てられておりますが、このジャッジメントにつきましては、極東軍事裁判所の裁判を例にとりますと、この裁判の内容すなわちジャッジメントは三部から構成されております。この中に裁判所の設立及び審理、法、侵略、太平洋戦争、起訴状の訴因についての認定、それから判定、これはバーディクトという言葉が当てられておりますが、及び刑の宣言、これはセンテンスという言葉が当てられておりますが、このすべてを包含しておりまして、平和条約第11条の受諾が単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さないものと解しております」
岸田外相は、緒方氏の「(東京裁判のジャッジメント)その1つひとつについて、その逐一について日本は受諾しているという理解でいいか」との質問に対し、「極東軍事裁判所のジャッジメントの内容となる文書、3部から構成され、裁判所の設立ならびに審理、根拠法、侵略および太平洋戦争等における事実認識、起訴状の訴因についての認定、判定、および刑の宣告、すべてが含まれている。法的には様々な議論があると承知しているが、我が国は平和条約11条により、当該裁判を受諾しており、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはない」「どの部分についても、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはない」と答えた。
安倍晋三首相は、村山談話、河野談話を「全体として引き継ぐ」と述べており、引き継がない部分があり、侵略と植民地支配を謝罪した村山談話、河野談話を否定する内容の戦後70年談話になるのではないかと懸念されている。稲田自民党政調会長が東京裁判の内容に疑義を表明しており、国際社会から歴史修正主義への警戒が強まっている。戦後70年談話が、東京裁判が認定した中国侵略などの事実と矛盾した場合、国際的な批判が起きることは必至だ。
緒方氏の質問は、中国侵略と朝鮮半島の植民地支配という核心部分を骨抜き・否定する動きを制約する答弁を引き出したと言える。
【山本 弘之】
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