野球は青少年にとって有害か否か-…
野球は青少年にとって有害か否か-。今では考えられないような論争が、明治のころにあった。米国伝来の野球はまず学生競技として広まった。早慶戦が注目を集めると野球人気は沸騰。応援団は大騒ぎし対戦相手や審判を脅迫する事態も
▼あまりの過熱ぶりに、東京朝日新聞が1911(明治44)年、「野球と其(その)害毒」と題する連載を開始。著名な教育関係者らの意見を紹介し、反野球キャンペーンを展開した
▼著書「武士道」で知られる新渡戸稲造・旧制一高校長は「(野球は)相手をペテンにかけ、塁を盗もうとする“巾着切り”の遊戯。剛勇の気なし」とばっさり。陸軍大将の乃木希典・学習院院長も「あまりに勝負に熱中し、長い時間を費やすなど弊害が伴う」と苦言を呈した
▼連載は、選手の品行の悪さや学力低下を嘆く声などを紹介。中には「勝利への重圧が選手の脳に悪影響」「右手ばかりが発達し体育として不適当」など首をかしげたくなる見解も
▼これに対し、他紙は野球擁護の論陣を張った。有益性を主張する識者も加わって喧々囂々(けんけんごうごう)。面白いのは大阪朝日新聞だ。東京朝日に与(くみ)しないどころか、15(大正4)年に全国中等学校優勝野球大会を主催した。今に続く高校野球「夏の甲子園」である
▼さあ、待ちに待った球春到来。きょうプロ野球が開幕する。1世紀前の論争の結論は、ヤフオクドームを満員にする老若男女の笑顔で一目瞭然。
=2015/03/27付 西日本新聞朝刊=