外交青書:韓国「価値共有」削除 「重要な隣国」と表記
毎日新聞 2015年04月01日 21時36分(最終更新 04月01日 22時53分)
政府の「2015年版外交青書」の概要が1日、明らかになった。戦後70年の歩みを振り返る項目を新設し、日本は「先の大戦の深い反省」を踏まえ、自由、民主主義などを信奉する社会を構築したと記述。韓国については「自由、民主主義、基本的人権などの価値を共有」という14年版までの表現を削除し、「最も重要な隣国」と表記するにとどめた。岸田文雄外相が7日の閣議で報告する。
青書は戦後の70年間を「アジアと世界の平和と繁栄に貢献」したと評価。「平和国家としての歩みは今後も決して変わることはない」と強調した。政府は対外発信強化の一環として、06年版以来9年ぶりに英語全訳版を作成し、「積極的平和主義」の外交理念を国際社会にアピールする。
中国に関しては「東シナ海を隔てた隣国であり、切っても切れない関係」としたうえで、昨年11月の日中首脳会談を念頭に「両国が関係を改善させるべく、さまざまな取り組みが行われた」と紹介した。半面、沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵犯を挙げ、一方的な現状変更の試みが継続していると批判。「日本の領土・領海・領空は断固として守り抜く」という安倍政権の方針を掲げた。昨年4月の日米首脳会談で、オバマ大統領が尖閣諸島を「日米安全保障条約の適用対象」と明言したことも紹介した。
国交正常化50周年を迎える韓国については、「困難な問題も存在するが、大局的な観点から未来志向で重層的な関係を構築していくことが重要」だと指摘した。島根県・竹島を「国際法上も明らかに日本の固有の領土」と明記した。
日露関係は、ウクライナ情勢の悪化を踏まえて「難しいかじ取りを迫られたが、政治対話を重ねた」と紹介。北朝鮮による日本人拉致被害者の再調査を巡っては「拉致問題が最重要で、迅速な調査と速やかな結果の通報を強く求めている」と説明した。【鈴木美穂】