クローズアップ現代「シリーズ いまを生きる女性たち(1)働く世代の本音は…」 2015.03.31


こんばんは、国谷裕子です。
きょう23年目を迎えた「クローズアップ現代」。
放送開始当初からあるテーマを追い続けてきました。

雇用機会均等法を機に進んだ女性の社会進出。
番組ではこれまで数多くの働く女性たちを取材。
時代とともに彼女たちが抱く夢や葛藤を伝えてきました。

働く女性の割合が先進国の中でも低い水準にある日本。
その理由はこれまで結婚、出産を機に仕事を辞めるためだと見られてきました。
しかし、最近の調査で仕事への行き詰まりや女性たちにチャンスが十分に与えられていないことが本当の理由だと分かってきました。

番組では独自にアンケートを実施。
働く女性が今、何を求めどんな壁に直面しているのか。
1500人の声をもとに考えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
女性の活躍推進が、この国そして企業の競争力にとって極めて大切であるという認識がこの3、4年ほどの間に急速に広がり、今、企業は競い合うようにして管理職比率を高めようと動いています。
国が掲げる目標は2020年までに女性管理職など指導的地位に占める割合を30%にすることですが人材不足から、この目標達成が厳しい組織、企業が非常に多いと見られています。
30年前男女別の差別をなくそうと男女雇用機会均等法が制定されその後、育児休業法など女性の雇用環境を改善するためのさまざまな施策が取られてきました。
この番組でも、男性中心の企業社会に飛び込んでいく女性たちの姿を、時代とともにお伝えしてまいりました。
女性の働く環境が改善されてきたにもかかわらずご覧のように年齢別で見た女性の労働力率は各国と比べると20代後半から30代で落ち込む傾向が見られます。
結婚、出産、育児を機に離職する女性たちがいまだに多い日本。
働きたいと願っている女性たちが全体のおよそ8割に上っているという調査結果もある中で早々と仕事を辞める女性たちが多いのはなぜか。
離職の原因が出産や育児など家庭の事情によるものだと考えられてきましたけれどもシンクタンクの調査で仕事への不満仕事の行き詰まりが原因で多くの女性たちが辞めていることが分かってきました。
若い女性たちの専業主婦志向が高まっているというふうにもいわれていますけれども仕事への希望が見いだせないやりがいがないと感じることで働く意欲を失って仕事を辞めている女性たちが一体どれだけいるのでしょうか。
働きたいと望んでいる人たちが全員参加、そして能力を発揮できる社会になるためにはどうすればいいのか。
今夜は20代、30代の女性たちの声に耳を傾けます。

今回、番組ではインターネットでアンケートを実施。
全国の20代から50代の男女1500人から回答を得ました。
その結果、女性たちの多くが出産後もやりがいのある仕事を求めていることが分かりました。
一方で育児をしながらの仕事に希望や展望がないと訴えています。

男性社員しか出世できない。

働き続けても先が見えない状態。

こうした回答を寄せた一人三田陽子さんです。
3歳と1歳の子どもを抱える専業主婦です。
3年前まで、金融機関の総合職として働いていた三田さん。
決算期には残業や深夜勤務もありましたが仕事が楽しかったといいます。
しかし、妊娠を機に会社を辞めることを決意しました。
出産後も同じように働くことはできないと思ったからです。

容易ではない子育てと仕事の両立。
それでも女性たちがやりがいを持って働き続けるためには何が必要なのか。
2歳の娘を育てながら仕事をする高橋美希さん。
働くことに充実感があるといいます。
毎朝7時過ぎ保育園に通う娘を連れて慌しく家を出ます。
高橋さんは総合病院で院長の秘書を務めています。

スケジュールは?
スケジュールあります。

当初は出産後も働き続けることは無理だと考えていました。
しかし、通常より2時間少ない短時間勤務を勧められ職場に復帰しました。

高橋さんはスケジュール管理だけでなく院長の判断をサポートする役割も担っています。
病院全体の状況を把握し助言を行います。

子どもの発熱などで急に早退や欠勤をするときはスタッフどうしが互いに仕事をカバーできるようになっています。
仕事と子育てとの忙しい毎日。
しかし、高橋さんは職場の期待と理解によってやりがいを感じているといいます。
働き始めて、家族との時間もより大切に思うようになりました。

今、働く女性のうち半数以上は非正規雇用です。
雇用が不安定な中やりがいを持てる仕事に就くことはさらに困難です。
パート社員として働いている鎌田美智子さん。
往復3時間かけて職場へ通っています。

お電話ありがとうございます。
長女を出産後去年7月から人材派遣会社で働き始めました。
鎌田さんがこの会社にこだわったのには理由があります。
パート社員でも経験を積むことで昇進し正社員へ登用される機会が開かれているのです。

今夜は、女性の労働問題について、長年研究を続けてこられました、日本女子大教授の大沢真知子さん、そして数多くの企業のワークライフバランス推進をサポートしていらっしゃいます、東レ経営研究所の渥美由喜さんです。
大沢さん、今、両立が難しいと思って辞められた方もいらっしゃいますけども、大変でも期待されている職場、遠くてもキャリアアップが期待されている職場では、働き続ける姿もありました。
どうご覧になられました?
そうですね、やっぱり、仕事のやりがいが感じられるか、成長が感じられるかっていうことが、女性が働き続けられる一つの条件だ、非常に重要な条件だということが分かりましたと同時に、そのことが今まであまり語られなかったことが、非常に残念だったなと思います。
一生懸命働きたい、本当に働き続けたいと思ってらっしゃる方や、そこそこでいいって思ってる方、いろんな女性がいらっしゃると思うんですけれども、どんな割合だというふうに見てらっしゃいますか?
どうしても平均値で見がちですが、実は2割ぐらいの女性は、もうどうしてもキャリア、働き続けたいと。
2割は、やっぱり家で子どもを育てることにもっと生きがいを感じる、残りの6割の女性はですね、どちらにも動くんですね。
やりがいがある仕事が与えられれば継続するし、それほど大した仕事でなければ辞めるという、そこで、どちらに向かうかっていうのは、やっぱり企業の姿勢も問われますし、本人の意識だけではなくて、やはりやりがいがある、成長が感じられる仕事をもっと振ることで、日本の、先ほどのVTRでも就業率低いですよね、やっぱりあれを見ると、多くの女性にやりがいがある仕事が与えられなかったことが、就業率を下げているんじゃないかと思わせる、そんな感じです。
でも、その6割の中に、いい人材も入ってる可能性がありますね。
そうですね、本当にそうなんですよね。
今、そこが鍵になっていって、その人たちを育てていく、人材を、プールをもっともっと広げていく必要があると思いますね。
渥美さん、自分は出世できないんじゃないかとか、あるいは先が見えないっていう、そういう感情を持ちながら、もんもんと働いてる人たちが、日本社会には多いのではないか、それによってせっかく人材育成しても辞めていく人たちが多い、何を間違ってるんですか?
企業の現場では、いまだに女性社員の6割が妊娠、出産、育児を機に辞めています。
そうすると、辞める可能性がある人には、なかなかあんまり期待しないほうがいい、あるいはチャンスを与えない。
そうすると、結果的に女性社員、やる気ある人が、あ、もう自分は期待されてない、あっ、そんなふうにやりがいがある仕事を与えられないと辞めてしまう。
負の連鎖が起きています。
そして、出産して帰ってくると、ちょっと時間が、長時間労働にならないような仕事っていうふうに、向けられることもありますよね。
おっしゃるとおりです。
こちらのほうが早く帰れる仕事だっていうふうなことを言われて。
そうですね、間違った配慮、過剰な配慮をすることによって、あっ、自分はあんまり期待されないと、貢献率を逆に下げてるってことを逆に起こしてますね。
そういったときに、どうやって企業の意識を変えるのか、もっと女性たちが自分は期待されてるんだ、やりがいがあるというふうに思えるような、どうやってそれを変えられるんですか?
女性社員を本気にする、5つのきが付くことばと言ってるんですが、1つ目は、機会を与える。
2つ目は、期待をことばで伝える、3つ目は、鍛える。
4つ目がキャリア展望を描かせる。
5つ目が、きれいな空間の提供。
トイレとか洗面所だとか、そういう所はきれいにすると男女のすごく差が出ます。
これ見ていかがですか?
そうですね、もちろん、すべて重要ですけれど、やはり、長期のキャリア展望を描くっていうところが非常に重要かなと思いました。
やはり今、見ていましても、女性は、結婚前にも、勤続年数長くなっていますし、また再就職する女性がすごく増えているんですね。
ということは、やっぱり労働市場で過ごす時間っていうのが、長くなっている。
その間に、どうキャリアを自分なりに作っていくのか、それを考えていく必要があるかなと思いました。
その前の、育児をしている期間に、両立しやすい仕事っていう、目の前の仕事だけを見がちですよね。
そうですね。
だけどやっぱり、長期にどんな働く女性になりたいのか、どういうことがしたいのか、どういうことが自分は得意なのかっていうことを考えて、自分が本当にやりがいがある仕事に就けるように努力していくっていう、女性自身の長期の展望っていうのも必要だと思いますね。
人事管理の在り方と、女性の思いのギャップっていうのは、これ大きな問題ですね。
大きな問題です。
さあ、今回の番組では、女性、そして男性に同様の質問をいたしました。
女性が輝く生き方とは?という質問です。
女性の半数がこの問いに対しまして、仕事とプライベートの両立と答えています。
そして男性の多くに、女性が輝く生き方は?と聞きますと、男性の多くが家族やパートナーとの生活というふうに答えていまして、男女の間の意識ギャップが浮かび上がりました。
しかし、男性をある年代で区切りますと、仕事とプライベートの両立が一番というふうにもなりました。
女性の意識に近づく年齢、境目となっている年齢が、34歳です。

藤本慶久さん、34歳。
大手電機メーカーで研究員として働いています。
NHKのアンケートで妻がやりたいというのならどのような働き方でも応援すると答えました。
妻の喜子さんは歯科衛生士。
慶久さんと家事や育児を分担しています。
子どもたちの食事や着替え幼稚園に送るのは慶久さんが行っています。

慶久さんたち34歳以下は男女の在り方についての意識が大きく変わった世代です。
中学生のとき、全国の中学高校で男子も家庭科が必修に。
大学生のときには女性の4年制大学進学率が3割を超えました。
慶久さんの研究室にも優秀な女性が次々と入ってきました。
8年前就職した慶久さん。
当初は研究に没頭し連日のように深夜まで働いていました。
しかし、現在の上司をはじめ同僚の女性たちが職場の理解や家族の協力を得て子育てと両立する姿を見て妻をサポートするようになりました。

妻の喜子さんにも変化が現れました。
夫と家事を分担できるようになったことで前向きに仕事に取り組めるようになったといいます。

女性の働き方について長年調査をしてきた淑徳大学の野村浩子教授です。
男性の働き方に多様性を持たせることが結果的に女性がやりがいを持って働くことにつながるといいます。

若い世代で家事、育児を分担することが自然にできる世代も生まれてきて、その中でも、女性の上司がいるってことが、意識を変えていくきっかけにもなるんだということですけれども。
でも、そうした男性が本当に理解を得られる職場になっているかどうか。
おっしゃるとおりですね。
若い世代は、やはり、雇用が不安定な中で、共働きのほうが生活が安定する、何かあってもお互いに支え合えるという気付きが生まれてます。
また、ワークライフバランスに取り組む、社員っていうのは、時間の使い方がうまいので、そこで生み出される時間で、家事、育児をする。
またそこで生まれた精神的ゆとりで、プライベートな生活で気付いたことを職場に生かす。
ワークとライフの相乗効果ということに息づいています。
夫婦の間でも、相乗効果がございます。
例えばVTRで見ていただいたご夫婦のように、妻が働いてる姿を、頑張ってる姿を喜ぶ夫。
また、お子さんのかわいらしい姿が、この子が大きくなったときに、よりよい社会にするためにと、お母さんがさらに頑張る。
そのために、お互いにいい影響を与える。
輝くっていうと、何か1人で、自分で光を放つように思われますが、家族内でお互いに光を与える、こういうのをプリズム効果って呼んでるんですけれども、そういうお互いの相乗効果ってことが、大きいかなと思います。
職場でも一緒です。
ただその職場の中で、理解してくれる上司がまだまだ少ないんではないですか?
上の世代は、やはり、妻は専業主婦っていう、片働きの方、多いですし、まだまだ固定的な性別、役割分業、女性は、お子さん小さいんだから、子育てに専念すべきだ、あるいは、男性なのに子育てするなんておかしいっていう価値観を持ってると、それを自然に部下に押し付けてしまって、職場の中では、ピラミッドの中間層、粘土層という言い方があるんですけれども、トップがこういうご時世なので女性活躍、なかなかでも現場には浸透していかない。
それは途中で、いくらレクチャーしてもしみこまないかたくなな粘土層。
そういう人たちを、どう意識を変えていくかっていうのは、非常に重要だと思うんです。
どうやって変えられますか?
例えば時間制約、場所制約がある社員というのは、決して子育て中の女性、あるいは共働きだけじゃないです。
これからはあと10年後に今の団塊世代が後期高齢者へと突入すると、一気に要介護者が増える。
確実にやって来ます。
管理職の世代も、いつかもしかしたら、自分も制約がありながら、働くときが来るかもしれない、そこを視野に入れて、少しでも効率のよい働き方っていうのを、職場で模索すべきです。
なるほど。
そして女性の問題ですけれども、女性がもっとやりがいを感じながら、例えば育児休暇に入るとか、産休に入るとか、そうしたもっと自分は期待されてるんだ、あるいはキャリアの展望が見えるようになるその仕掛け、そのトレーニングっていうのは、ありますか?
今やられているのは、入社してからですね、かなり早い時期に、いろいろな経験、特に責任を持っていろんな仕事に就いて、成長してもらうと、そういう形で、管理職になるような、そういうリーダーシップのようなトレーニングを受けていくと、出産前にもうすでに、かなりやる気が出てくる、そういうことで、もう一度戻ってきてからも、やはり、人材として活躍してくれる、そういう意味でのキャリアの前倒しっていうふうにいいますが、もっと早い時期から女性にどんどんいろんな仕事を任せて、活躍してもらおうとしている企業があるということを聞いています。
なるほど。
ただ、働く女性の6割、5割以上が、非正規で働いていて、教育訓練の機会がなかったり、あるいは、キャリアの展望が描けない、そうした大多数の女性たちが、本当に自分が伸び伸びと活躍できる社会にどうすればなれるのか?
非正規の問題、きょうはあまり触れることができなかったんですが、やはり、非正規の方、大卒でも今は25歳で3割は、非正規なんですね。
そういう意味では非常に重要で、そういった方たちがトレーニングを受けて、再就職できるような環境というのは、もっともっと整えられる必要があると思います。
VTRでも、非正規だけれど、やっぱり正社員になる道があるので非常にやりがいがあるとおっしゃってる女性もいらっしゃいましたし、そういう形で機会を与えていくことが、非常に重要だと思います。
再就職市場を作っていくということですね。
そして、セカンドチャンスを作っていく、セカンドチャンス社会も同時に作っていく必要があると思っています。
女性社員にやりがいを与える機会って、非常に重要で、配慮は必要ですけれども、遠慮をしないで、やりがいのある仕事を与えると、その仕事のだいご味を覚えることで、実質的には育児でちょっと休んだとしても、また必ず成功体験ある女性は戻ってくる、そういうところを気付いてほしいですね。
きょうはどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
渥美由喜さんと、そして、大沢真知子さんと共にお伝えしました。
シリーズ、あすは2回目です。
30年前に男性中心の企業社会に飛び込み、道を切り開いてきた均等法第1世代の女性たち。
あとに続く人たちに何を伝え、引き継ごうとしているのか、見つめてまいります。
クローズアップ現代、今夜はこのへんで失礼いたします。
2015/03/31(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「シリーズ いまを生きる女性たち(1)働く世代の本音は…」[字][再]

あなたは今“輝いて”いますか?“輝く”には何が必要ですか?男女双方への大規模アンケートから意外な結果が明らかに。男女共に“輝く”ために何が必要かデータから考える

詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本女子大学教授…大沢真知子,東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長…渥美由喜,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本女子大学教授…大沢真知子,東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長…渥美由喜,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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