2015年12月に正式サービス10周年を迎えるPC用オンラインRPG『エミル・クロニクル・オンライン』(以下、ECO)。かわいらしさを追求した本作ではあるが、10周年という節目を前に、『ECO』運営 チームはついに禁断の領域に手を出してしまった。
『ECO』運営 チームの新作『iECO2』は、確実にMMORPG界を震撼させる。いや、その衝撃はゲーム業界のみならず、エンターテイメント業界全体に及ぶだろう。本稿を執筆するにあたり、ガンホー本社で開発中バージョンのテストプレイをさせていただいた。プレイで判明した要素をあますことなくお届けする。
まずはキャラメイク画面で『ECO』(左)と『iECO2』(右)を比較。その違いは一目瞭然だ。
『iECO2』の基本システムは『ECO』を踏襲している。そして、そのすべてがグレードアップしている。もっとも大きく進化したのはグラフィックだ。陳腐な表現で恐縮だが、生命の息吹すら感じてしまう。
このリアリティーを支えているのが、独自開発の“Enjoy Corn potage Oishii Engine”(通称、ECOエンジン)。中世ヨーロッパの哲学者ジャン・アレクトラウッドが残した「コーンポタージュの味わいはすべての深淵に通ずる」という思想に共感し、2~3日もの期間をかけて開発された至高のグラフィックエンジンである。開発理念が深すぎて凡人にはちょっと理解できない。
ECOエンジンの性能を引き出すためにモーションキャプチャーを活用。およそ7億ヵ所に人間の動きが
取り入れられている。
実写に迫る映像美で繰り広げられる戦闘は、とにかく大迫力。ダメージを受けたときなどは、痛みが伝わってくるようだった。僕が思春期の乙女だったら辛くて泣いていただろう。危ない危ない。テストプレイに同席していただいたスタッフさんに恥ずかしい場面を見られるところだった。35歳の大人で本当によかった。大人は少し痛いくらいでは泣かないのだ。
世の中には多彩なアート、エンタメ作品が存在するが、“痛み”まで表現できる作品はほんの一握り。ゲームを愛する若い世代が「最近の子は人の痛みを知らない」などと揶揄されることへのアンチテーゼなのかもしれない。
戦闘シーンは撮影NGだったので、代わりにうまそうな牡蠣と馬肉ステーキの写真をご覧ください。
『ECO』と同様に、『iECO2』もファッションのパターンが豊富だった。少し驚いたのは、アバターを着替えさせるとキャラクターがいったん更衣室に移動する点。極限までリアリティーを追及しているので、「クリックで一発!」というわけにはいかないのだ。職人的なこだわりを感じる。
髪型を変更するとヘアメイクさんが出現。細やかなこだわりが迫真のリアリティーを生む。
近年の『ECO』を象徴する要素“パートナー”は『iECO2』でも健在だ。パートナーにはクエストを通じて出会うことができた。そのクエストが難しく、お互いを意識しながら生活したり(幼馴染タイプ)、夕暮れの河川敷で殴り合ったり(親友タイプ)、三度に渡って家を訪ねたり(諸葛亮タイプ)と、どれも一筋縄ではいかない。スタッフさんに「金で解決できませんか?」と聞いたら「そういうこともできます 」との返答が。できるのかよ。
あらゆる手段で親睦を深めるのがパートナー獲得への第一歩と言える。
忘れてはならないのが、『ECO』ならではのハウジングシステム“飛空庭”。こちらももちろん大幅な進化を遂げている。ただし、飛空庭の入手方法は『ECO』とは異なるので注意が必要だ。
まずは不動産屋に希望の条件を伝えることから始まる。家賃は月収の3分の1程度がベター。焦って即決せず、2~3件ほど内見してから決めるといいだろう。入手の際には連帯保証人が必要となるが、センシティブな部分なので肉親にお願いするのが確実だ。
言葉での説明が難しい場合はイラストで伝えるのもアリ。不動産屋の担当さんにうまく伝わらないと
段ボール箱などに住むことに。
また、入居時にはお隣りさんや大家さんに挨拶をしておくとトラブルがあったときに心強い。仲よくなれば煮物をおすそ分けしてもらえるし、何より顔を合わせたときに挨拶をすると気分がいい。人と人とのつながりを実感できるシステムである。“ハートフルオンラインRPG”の系譜はこんなところで受け継がれているのだ。
残念ながら、美人なお姉さんと隣人になれる可能性はかなり低いとのこと。とはいえ、正式サービス開始後のアップデートで調整される可能性もある。美人なお姉さんは夜中に訪ねて きてテレビの配線を頼んでくると相場は決まっているので、AV機器に強くなっておくといいだろう。
出会いはいつも突然だ。ひと口にお姉さんと言っても世間には多彩なタイプがいるので油断できない。
基本的なシステムに触れてみて感じたことは、あらゆる意味で革新的かつ可能性を感じさせるタイトルだということ。興奮を隠しきれない。興奮のあまり原稿執筆中に「おおおおおお」と変な声を出し、同僚に奇異の目で見られてしまった(軽く会釈をして事なきを得ました)。
プレイヤーとして、そしてゲームメディアの編集者として、『iECO2』が産声を上げる瞬間が楽しみでならない。そのときはほら貝でも吹いて祝福したいと思う。
ガンホー・オンライン・エンターテイメントが運営する『エミル・クロニクル・オンライン』(以下、ECO)と言えば、可愛らしいキャラクターがウリのPC用MMORPGだ。このたび、その魅力的なキャラクターを使ったスピンオフタイトル『アリスと記憶の書架』を開発したという。ゲームの中身について、『ECO』運営チームの寺田教授とブリキング榊田氏に話を伺った。
ブリキング榊田氏(左・文中では榊田)と寺田教授(右・文中では寺田)。
――『アリスと記憶の書架』とはどういうゲームなのでしょうか。
寺田一般的に“ノベルタイプのアドベンチャー”と呼ばれるジャンルに近いですね。プラットフォームには“G(がんばってる)S(すげぇやつの)beta版”という新筐体を選びました。『ECO』には“ロア”というタイプのキャラクターがいて、その子たちを中心に話が進みます。お話はけっこうダークな雰囲気で、ゲーム内時間で7日を過ぎると理不尽な終焉 を迎えてしまうんです。
榊田選択肢や行動、推理で彼女たちの運命を変えて、バッドエンドを回避するのがプレイヤーの目的です。恋愛シミュレーション的な要素もあるので、好きなロアとの会話も楽しんでいただきたいです。
――“行動”というと、たとえば何をすればいいんですか?
榊田話の流れで入手したアイテムを使うこともあれば、RPGのように敵と戦うこともあります。ゲーム全体を通して“理不尽”がキーワードになっているので、戦闘で理不尽なアクシデントが起きることもあります。攻略法に悩んだらロアと会話してヒントを聞くこともできるんですよ。
寺田ロアとの会話の仕方は画期的ですよ。スマホを使って直接話しかけるんです。
――それはすごい! でも、人前では少し恥ずかしいですね。
寺田大丈夫です。会話はモールス信号で行うので、スマホをいじる人にしか見えません。ただ、スマホをいじりながらニヤニヤするのは少々危ういので、平静を装う練習はしておいたほうがいいかもしれないですね。
電車の中でテストプレイし、ニヤニヤしていたら小さな女の子を連れたお母さんが離れていった。
――安心しました。アドベンチャーゲームということは、BGMやボイスを使った演出にも力を入れているのでしょうか?
寺田ロアはもちろん、ムービーにちょっとだけ出てくるようなキャラも全員しゃべります。「全員フルボイスじゃあ~!」と息巻いてキャスティングしたら、セリフのないキャラにも声優さんを割り振っていました。
榊田張り切り過ぎて、キャラどころか無機物にも声を割り振ってましたからね。道路やドアの釘、食パンの袋を止めておくやつなんかにも。
寺田あのときはどうかしてました。
榊田釘役の声優さん、収録現場でぼーっと椅子に座ってたね。
寺田悪いことをしたなぁ・・・。
――そんなミス、聞いたことないですよ。BGMはどんな感じですか?
寺田BGMはフルオーケストラです。こっちもがんばりました。じつはSE(効果音)も生音なんですよ。
――演出にはそうとうこだわっているんですね。臨場感がすごそう。
寺田公園にブランコの音を録りに行ったんですけど、昼間はお子さんが遊んでるじゃないですか。邪魔するのも悪いので、夜中に収録スタッフを引き連れてもう一度行きました。不審者情報が出回るんじゃないかと気が気じゃなかったです。「夜中に謎の集団がブランコにマイクを向ける事案が発生」とか。
榊田不審者と言うか、幽霊やお化けに近いんじゃない? 近所の小学校の七不思議に入ってもおかしくないですよ。
――そんな危険を冒してまで生音にこだわりたかったわけですね。ところで、『ECO』にはロアのほかにも可愛いキャラクターがたくさん出てきますよね。どうしてロアに白羽の矢を立てたのでしょうか。
寺田最初に「ストーリー中心のアドベンチャーゲームを作ろう」と企画が上がったんです。ロアはさまざまな物語が“想いの力”を受けて具現・擬人化した存在なので、アドベンチャーゲームと相性がいいかなと。
榊田もともと設定やキャラクター性をしっかり作り込んでいるので、スピンオフさせやすかったという事情もあります。オフィシャル2次創作みたいな感じですね。あと、ロアは純粋に人気が高いんですよ。恋愛要素を入れたのは、みんなの“嫁にしたい”願望を叶えたかったからです。
――本作で“ロア”の魅力に触れて、『ECO』を遊ぶ人も増えそうですね。
寺田そうなったら万々歳ですよ。ロア以外にもいい娘いますから。より取り見取りです。
榊田下世話な言いかたはやめて。
マスコットキャラクターのタイニーもかわいいですよ。
――『ECO』では寺田さんは全体の統括、榊田さんはマーケティング関連を担当していますよね。この『アリスと記憶の書架』でも担当は同じですか?
寺田私はおもにカポエイラですね。
――ブラジルで発祥した足技中心の格闘技で、動きがダンスに近く、最近はフィットネス目的の若い女性からも注目されている、あのカポエイラですか?
寺田説明、ありがとうございます。プロデューサー的な立場で全体を見る以上、スタッフを守るのも私の役目だと思うんです。安心して開発に専念してもらいたいですから。スタッフが暴漢に襲われても対処できるようにカポエイラの特訓をして、一度はブラジルに渡りましたが、ゲームに関係ないと気づいて帰ってきました。
――なるほど。成果はいかがですか?
寺田体を動かしたらご飯がおいしくなりました。
寺田「毎食ご飯をおかわりするようになりました。炊き立てのご飯ってあんなにおいしいんですね」
――それはよかった。榊田さんのご担当は?
榊田私は公園でどんぐりと松ぼっくりを拾っていました。
――それにはどんな意図が・・・(ごくり)。
榊田癒されるかなと思いまして。
――「2015年度は癒し系としてやっていく」という決意表明と受け取ってもよろしいでしょうか。
榊田はい。“癒し系キャラ”はライバルも多いですし、茨の道であることは理解していますが、覚悟はできています。暴力的なまでの癒し力を見せてやりますよ。
――どんぐりで独楽は作りましたか?
榊田もちろんです。ガンホー社内のどんぐり独楽大会で優勝もしました。準決勝で上司を倒したので、給与査定に響くんじゃないかとビクビクしています。じつはゲーム内にどんぐりを使ったスポーツライクな対戦システムがあって、それを使ったオフライン大会も予定しています。あ、これはまだ言っちゃダメなんでしたっけ?
(インタビューに同席した広報担当者は「大丈夫です」と、やや苦笑い)
寺田もう言っちゃったので発表スケジュールを早めましょう! 賞金総額は2億円なので、多くの方に参加していただきたいです。
――その対戦システムの詳細を教えてください。
寺田すみません。まだ言えないんですよ。言いたくて仕方ないんですけど。
――そこを何とか。
榊田そうですね・・・。フィギュアスケートとは違う、とだけ言っておきましょうか。
――でしょうね。知ってます。
寺田えっ、なんで知ってるんですか!? まさか、企業スパイ・・・?
――どんぐりとフィギュアスケートを結びつけるほうが難しいと思います。詳細を言えないのならヒントだけでもいただけないですか? どのスポーツに似てるとか。
榊田アメフトです。
――えっ!?
アメフトに似ていること以上のことを言わない榊田氏と寺田氏。
お菓子あげるげから教えてと言ってもダメだった。
まだ話せないことは多いものの、会話の端々からおふたりの真剣さが伝わってくるインタビューだった。
特筆すべきはカポエイラの話題が挙がったときの寺田氏の熱意である。「スタッフは私が守る」という寺田氏の気持ちは本物だ。世間的には「上司が部下を守る」というのはそういう物理的なことではないと思うのだが、そんなこと言い出せないくらいの気迫を感じた。
あと、どんぐりを使ったアメフトに似たゲームってなんなんだ。気になる。
寺田「カポエイラにはふたつの流派があるって知ってます?」