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環境相 「削減目標提出できず残念」
3月31日 21時50分

地球温暖化対策のための温室効果ガス削減の新たな枠組みに向けて、各国が早ければ今月末までに国連に提出することとされている削減目標について、望月環境大臣は、閣議のあとの記者会見で、「提出できなかったことは大変残念だ」と述べ、今月末の提出を見送り、検討を急ぐ考えを示しました。
温室効果ガスの削減を巡っては先進国だけに削減を義務づけた「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みについて、年末に開かれる国連の会議での合意を目指していて、各国は早ければ今月末までに国連に削減目標を提出することとされています。
この削減目標について、望月環境大臣は、閣議のあとの記者会見で、「今月末までに提出できなかったことは大変残念だ」と述べ、今月末の提出を見送る考えを示しました。そのうえで、望月大臣は、「日本は温室効果ガスの重要な排出国であり、世界から期待される技術を持っているので、それなりの数字を出さなければいけないという責任感もある。提出の時期は特定できる状況にないが、国際交渉に負の影響を及ぼすことがないようできるだけ早く取りまとめたい」と述べ、検討を急ぐ考えを示しました。

各国で相次ぐ目標提出

温室効果ガスの削減を巡っては先進国だけに削減を義務づけた「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みについて、年末に開かれる国連の会議での合意を目指していて、各国は、早ければ今月末までに国連に提出することとされています。
主要国の中では、EU=ヨーロッパ連合が今月、温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年と比べて40%削減するという目標を提出しました。
また、排出量が世界で最も多い中国と2番目に多いアメリカは去年11月、米中首脳会談に合わせて削減目標をそろって打ち出し、このうちアメリカは、今月末までに提出する方針を示しています。
一方、日本は、原発事故の影響で、温室効果ガスの削減を左右する再生可能エネルギーや原子力を将来どのような比率にするかが決まっていないことなどから、削減目標や目標を提出する時期を示すことができていません。
これに対し、各国からは非公式な会合などの場で、先進国が早期に目標を提出しなければ途上国が反発し、新たな枠組みの合意の成否にも影響が出るなどとして、早期に目標を示すよう求める声が相次いでいます。

災害や健康にも温暖化の影響

地球温暖化による影響は、自然災害から健康、それに経済活動まで国内のさまざまな分野に及ぶと予測されています。
今月、環境省の審議会がまとめた報告書では、影響が特に大きく緊急性が高い事例として、今世紀末には洪水を引き起こすおそれのある大雨の頻度が増えると予測しています。
また、熱中症など暑さの影響で死亡するリスクが2090年代には最大で3.7倍に達するほか、デング熱のウイルスを媒介する蚊の生息する地域が今世紀末には北海道の一部にまで広がると予測しています。
さらに、品質の高い1等米の比率が減り、特に九州では今世紀末に40%減少するという予測があると指摘しています。

「寒天」が消える?

長野県茅野市は全国で唯一の天然の「角寒天」の生産地で、およそ180年前の江戸時代から地場産業として根づいています。JR茅野駅の駅前には寒天をかたどったモニュメントが設置され、サラダやみそ汁の具材などとして食卓を飾っているほか、「寒天の里」として貴重な観光資源にもなっています。
しかし、寒天作りには厳しい冬の冷え込みが欠かせず、温暖化が生産に大きな影響を及ぼしているといいます。小池隆夫さん(70)は、祖父の代から続く寒天業者で40年前から生産に携わってきました。天然の角寒天はテングサなどの海藻を煮て「ところてん」の状態にしたあと、屋外で自然に凍ったり解けたりを繰り返しながら2週間かけて乾燥させて作られ、夜の冷え込みはマイナス5度以下になることが必要となります。
生産の最盛期だった戦前は、11月末から3月の彼岸ごろまで3か月余りにわたって寒天作りが行われていました。しかし、冬の気温が上昇して寒天が凍らないことも多くなり、今では、生産期間を2月半ばまでの2か月ほどに短縮せざるをえないということです。
小池さんは、暖冬だった平成元年、寒天が乾燥できずに数千万円の被害が出たこともあり、比較的冷え込んだ年に多く生産して貯蔵しておくなどの対策を取っていますが、一度に生産できる量には限りがあります。こうした状況で、天然の角寒天作りを続ける業者の半数近くが、今の代で廃業するおそれがあるということです。小池さんは、「この30年、40年で温暖化が進んでいると実感している。天然の気候を利用するのはだんだん難しくなっているが、伝統の角寒天を食文化として残していくため、これ以上、温暖化が進まないようにしてほしい」と話しています。

元環境庁幹部「意欲的な目標を」

京都議定書の策定に、当時の環境庁の幹部として関わったIGES=地球環境戦略研究機関の浜中裕徳理事長は「世界では温暖化対策に向けて非常に前向きに取り組もうという動きが最近出てきている。また、温暖化の影響とみられる極端な気象現象もあり、事業活動も以前のようにはできなくなってきていると多くの人が感じている。今世紀半ばから後半にかけて、日本の社会や経済のシステムを転換しなければならないという長期的な視点を持って、意欲的な削減目標を示すべきだ」と話しています。

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