「『天は人の下に人を造る』の著者である杉田氏に、福沢諭吉の思想の本質についてうかがいます:岩上安身氏」
天皇と近代日本
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3月29日(日)に行われた「帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー」の模様を実況します。
『天は人の下に人を造る』の著者である杉田氏に、福沢諭吉の思想の本質についてうかがいます。
岩上「本日は、『天は人の下に人を造る〜福沢諭吉神話を超えて』の著者である帯広畜産大学教授の杉田聡氏にインタビューを行います。本来は、帯広でインタビューを行う予定でしたが、私が狭心症で救急搬送されましたので、本日、こちらでお話をうかがいます」
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岩上「なぜ、杉田先生や安川寿之輔先生の御本に注目するかというと、安倍総理が施政方針演説で『一身独立して一国独立する』という福沢諭吉の言葉を引用したからです。個人がとにかく頑張れ、と。国にとって都合がいい言い回しだな、と思いました」
杉田氏「福沢は非常に多くの人を差別的に扱って、それを維持し、強化しようとしています。中産階級の男性以外の農民、職工、貧民たち。そして女性。福沢が言っているのは、『天は人の上に人を造る』ということであり、それを強化することでした」
岩上「まず、福沢は貧富の差を肯定し、貧しき者への蔑みの視線を持っていたということですが」
杉田氏「福沢は『富豪』という言葉をよく使います。富豪というのは旧武士層です。日本に『貧富不平均』が生じてくるのですが、文句を言うな、ということを言っています」
杉田氏「『学問のすすめ』では、基本的に広く学問の重要性を説いています。しかし、その中でも水呑み百姓や車引きのような人たちは、除外されているんですね。福沢は80年代くらいになると、さらに一歩踏み込んで、彼らに学問を与えてはいかん、と言い始めます」
杉田氏「小作人と地主の関係に関して、『極楽世界』という書き方をしています。しかし、横山源之助の『日本の下層社会』にも書かれているように、地主は小作人に対して圧倒的な搾取を行っていました。その小作人の窮状を、福沢は糊塗するような書き方をしています」
杉田氏「福沢は地租のことをよく分かっていないながら、『地租は高くない』という主張をしています。地租が下がると、軍艦の増強費が下がりますね。福沢はそのことを恐れて、地租を下げることに反対します」
杉田氏「福沢は、政府が考えた労働者保護立法に反対します。資本家と労働者の関係は、地主と小作人の関係と同様、『極楽世界』である、と。『同盟罷工決して許すべからず』と、ストライキにも反対します。労働者の賃金を上げるという話は一切しません」
岩上「労働時間を減らすのは論外だ、という言い方をします。12時間労働を8時間労働にしたら、職工は残りの時間は手をむなしくして、空腹を忍ぶ他なし、と。とにかく、どんどん資本家のために働かせろ、ということですね。まさに、新自由主義者ですね」
杉田氏「富豪のために、貧民を海外移住させて除外すべし、ということまで言っています。国家の安寧を維持するために、彼らを除外すべし、と」
岩上「その時に、朝鮮というものが視野に入ってくるわけですね」
杉田氏「福沢は、貧民の窮状を知らないわけではありません。にも関わらず、例えば職工の食事の改善を不要とみなす論説を出しています。小さな政府でいい、新自由主義的な社会でいい、という顔をしばしば出します。福沢は、徹頭徹尾富豪の側に立っています」
岩上「『学問のすゝめ』では、町人と農民のことを『従順なること家に飼いたる痩せ犬のごとし』と書いています」
杉田氏「一応、この段階での福沢は、平民はこの程度だから、なんとか学問をさせよう、という文脈なんです。こうした側面が段々と変わっていきます」
岩上「福沢は町人・農民のことを非常に口汚く罵っていますね。『無腸の動物、土百姓、素町人の賤境…』」
杉田氏「農商で金を持っている人はたくさんいるのですが、その人たちを『死富、死財、死金、死銭…』と言っています」
岩上「『人間に生まれて果たして人間に終始し得るや』と。これも酷い罵倒ですね」
杉田氏「福沢は一貫して車夫のことを悪くいいますね。『車夫人足』、『車夫馬丁』、『車夫雲助』という言葉を多くの場所で用いています」
岩上「次は、部落差別について。『下等の穢多』、こういう言葉を平気でつかうんですね」
杉田氏「穢多というのは、穢れが多い、ということですよね。当時は新平民という言い方もありましたが、福沢はあえてこの言葉を積極的に使っています」
岩上「障害者についても、『見るにたえざる醜体あるべし』と。さらに、『めくら・つんぼは、かたわなり』『聾のくせに』などとも書いています」
杉田氏「1880年代になると、自由民権運動が出てきます。その時、福沢は『貧知者』を非常に警戒するんですね」
杉田氏「最初は、貧しい者は勉強しても駄目だとイライラしているんですが、それが、貧しい者には勉強をさせないほうがいいと変わってくるんですね」
杉田氏「貧知者を作らないために、教育の仕方を変えようとします。貧しいものには貧しい教育を、富める者には富める教育を、という主張をします。貧しい者は、愚民にとどめよ、ということです」
杉田氏「福沢が授業料の高い私学を積極的に勧めたのは、貧知者を作らせないためです。授業料が高ければ、貧しい人々は入ってこれないわけです。学校に入るのを富豪の師弟に限定しようとしました」
岩上「現在の教育改革と同じですね」
杉田氏「貧民に対しての教育としては、平易なる文を読み、ソロバンの初歩と地理の大略を知ればよい、と言っています。『教育中の最下等にとどまるべきものなり』、と」
杉田氏「福沢はこの選別教育の思想に、遺伝絶対論を持ち込みます。北海道の『土人』の子を教育しても、慶應義塾の教員にはなれない、というようなことを言っています。80年代くらいから、福沢は『先祖の血統』というものを強調し始めます」
岩上「福沢諭吉は、男女同権を唱えたと誤解されている方がいますが」
杉田氏「男のほうには教育を与えても、女性は馬鹿でよろしい、というのが福沢の基本的な考え方です。女子にも教育は与えるが、それは男子と同等でなくてよい、ということです」
杉田氏「女性に対しては、高等教育でも大学教育でも同じでよい、と考えています。裁縫以外のことを勉強すれば、文明の本意に背く、とまで言っています。福沢は、西洋のような男女平等の考えをまったく受け入れません」
杉田氏「福沢は女性解放に関心を持ったと言われていますが、要するに、良妻賢母主義的な、これまでのモラルを強めただけのことです。家事と育児が女性の仕事、という考えを、徹底して強めている人ですね」
岩上「婦人の健康というのは、その個人のためではなく、国家のためなんですね」
杉田氏「愚かなもの、体質の弱いものについては、結婚を禁じて子孫の繁殖を防ぐ、などと、ナチスまがいの優生思想を披瀝しています」
杉田氏「福沢は、男性に都合のいい『女徳』を要求しています。『家事を事とせずして浮世に飄々たるがごときは、断じて日本女性の模範にあらず』。さらに、中国の纏足について、悪習と言いながらも、女性に対しては有効ではないか、ということを言っています」
岩上「現在の慰安婦問題にもつながりますが、公娼制を必要悪として容認していた、と」
杉田氏「必要だと言っておきながら『下等不倫の婦女』『人間の中にて最も卑しき女郎』『人非人』など、悪罵の限りを尽くしています」
以上で「帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー」の報告ツイートを終了します。
動画記事は、準備が整い次第、IWJのトップページに掲載いたします。@iwakamiyasumi

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