採点競技であるフィギュアスケートは、必ずと言ってもいいほど試合後に「点が高すぎる、低すぎる」「不正採点だ」などという意見が、どこからともなくわいて出る。
「芸術」と「スポーツ」の共存する競技である以上、ある程度意見が分かれるのは仕方がないだろう。そもそも「芸術」を客観的に採点しようとすること自体が難しいのだ。
それでも、国際スケート連盟は芸術面を評価するため「演技構成点(プログラムコンポーネンツスコア/PCS)」の採点基準を明確に定め、専門家であるジャッジは試合ごとの会議や毎年のセミナーで勉強も重ね、共通認識をもって採点している。
そこで今回は、この難解な演技構成点(PCS)について、ソチ五輪のスコアを見比べながら解説していきたい。PCSは全部で5項目。「スケーティング技術」「つなぎのフットワークと動作」「演技と実行」「振り付け/構成」「音楽の解釈」がある。
まずよく聞かれる誤解は「芸術面なのに、スケート技術やフットワークなど、技術的なことを評価するのはなぜ?」というもの。しかしフィギュアスケートは、あくまでも「滑ってなんぼ」の競技だ。「滑りの技術を通して表現する」ことが大前提になる。足元の技術が多彩であるほど、より芸術性の高い表現が出来るのだ。
足元の能力を反映する「スケーティング技術」。
では、5項目を順番に見ていこう。
「スケーティング技術」は、身体のバランスがすべて。スピードの緩急、左右への複雑な動き、全体のスムーズさなど、あらゆる足元の能力を総合的に判断する。4回転ジャンプのような高度なジャンプを跳ぶためには、踏み切りも着氷も高いスケーティング技術が必要となることから、ジャンプの能力もある程度は反映される。
ソチ五輪で最も高いスケーティング技術をマークしたのは、パトリック・チャン(カナダ)で、ショートで9.43を得た。チャンは、スピードの加減速を使って音楽を表現するという能力が卓越している。他の選手が減速してしまうようなターンでも、チャンは加速することができる。つまり、難しいフットワークをしながら加減速することで音楽の緩急を表現する、というスケートにしか出来ない表現を可能にしているのだ。
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