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官能小説エログ 井良町夫

とある架空の町を舞台に繰り広げられる男と女の官能ドラマ

追いかけてエロ磁場 #6

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 枯草の臭いがする地面に這い上がり、ゲホゲホと咳き込み水を吐く。

 なぜ泉に突き落とされたのか。

(あの子は……)

 佐緒里は見上げて、目と鼻の先にあったハルカの顔に心臓が止まりそうなほどに驚く。冬の凍りそうな水に浸かった全身に風が吹きつける状況では、それは比喩というより実際的なものだ。大きく脈打った後、身動きひとつ取れない。

「失礼しますね」

 だから、それからハルカが取った行動にも上手く反応できなかった。

「女の荷物は男と違ってわかりにくいから……」

 そんなことを言いながら、佐緒里の着ていたコートを脱がせ、そのポケットをまさぐり、それからラフなセーターとジーンズの着衣を調べていく。旅行のための主だった荷物は車に積んだままだったが、それでケータイと免許証の入った財布を奪われていた。

「……な、なにをするの、返して」

 喋ろうとすると寒さに歯がガチガチと鳴った。

 泉に突き落として強盗?

「佐緒里さん、って言うんだ。佐藤さんと結婚したら佐藤佐緒里で面白い感じ?」

 だが、ハルカは中身を確認しただけですぐに投げて寄越した。

(どういうことなの)

 笑えない冗談になんとも言えない気持ちになる。

 状況を理解できないまま、しかし気が変わらない内にと慌てて拾う。

「あ、あとこれ、これから佐藤さんに会ったら返してあげて」

 そしてハルカはついでのように着ていた制服のポケットから見覚えのある男物の財布とケータイも地面に投げた。ケータイはバッテリー切れのようだったが、財布の中身を確認すると、そこには明彦の免許証やクレジットカードがあった。

 現金はない。

「これは、一体、なんなの」

 佐緒里にはそう言うしかなかった。

「男性機能が回復するパワースポット、エロ磁場」

 ハルカは言う。

「この泉は特にそれが強くて、耐性のある井良町の住人でなければ効果は一時間も経たずに出る。ただし、性欲が昂進しすぎる副作用があって人間としてはダメになる。アタシのパパはそれでママだけでは満足できなくなって捕まって、刑務所では男を襲おうとしたって」

「……」

 なにを言っているのか佐緒里にはわからなかった。

「信じられない?」

「……どうでもいい」

 佐緒里は首を振った。

 信じるも信じないも、ハルカの家庭環境に興味がなかった。

「明彦はどこ? 明彦も落としたの? どうなったの? もしかして」

「捕まってはいないよ、今のところ。ニュースにはなってない」

 ハルカは笑顔で言った。

「……」

 佐緒里は少しホッとする。

「どこに行ったかは知らないけど。男の人を落とす時は、アタシが襲われちゃたまらないから逃げる事にしてる。財布とケータイ、あと車を奪って追いつかれないようにしてね。もう近くにはいないだろうし、返すのははじめてだけど」

「現金は」

 財布を振って一応、訪ねておく。

「サービス料」

 ハルカは舌を出した。

「……そう」

 それだけで佐緒里もおおよそは理解できる。

「それで、なんでわたしは落とされたの?」

 深く追求するほどのことでもない。恋人としては別れていたのだから問題もない。だが、非常に腹立たしい。それだけのことを伝えるのになぜ自分をここまで連れてくる必要があるのか、いたずらにしても意味がなさすぎる。

「佐緒里さん、このパワースポットに女が入るとどうなると思う?」

 しかしハルカは質問に答えず、逆に聞き返してくる。

「え? 回復する男性機能もないんだから……」

 なにも起こるはずがない。

 佐緒里は冷えつつある自分の身体を縮こまらせ、俯く。

 寒い、寒い、寒い。

「本当にそう? アタシを見ても?」

「……なにが、ど、う?」

 冬場だというのに短いスカートから出ている生脚、それが眼の前に近付いてきて、佐緒里は正面を見上げ、そしてなぜかそのスカートを捲っているハルカと対面する。すぐにはわからなかった。だが、その異様さに気付くと言葉が出なくなる。

 女物のショーツ、そこから勃起したペニスがはみ出していた。




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[ 2015/03/30 18:43 ] 林佐緒里編 | TB(-) | CM(0)

追いかけてエロ磁場 #5

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 どことなくおかしな話である。

 しかし、佐緒里にはどこがおかしいのか上手く指摘できなかった。

「お姉さんなら佐藤さんを落ち着かせられると思うんです」

「え、あ、うん」

 心底、困った様子のハルカにそう言われて、思わずそう答えてしまったので、それは暴走する明彦とセックスして宥めろという意味なのだろうかと問い質すタイミングを失っていた。別れた男に自分が必要なのだと言われたようで妙な嬉しさもある。

 それ自体がおかしいともわかっていた。

「アタシたち、その、女ばかりでこういう、犯罪に手を染めてしまって、プロって言うのもそういうお店に三日居て逃げた子で、大人の男の人は写真とか撮って脅せば、それなりにお金は取れると安易に、本当にごめんなさい」

 けれどもなにより、反省と恐縮するハルカを見ていると、力を貸してやらなければという気分にさせられる。愛らしい外見を持って生まれた女というのは得だ。それは佐緒里もそれなりに知っていることだった。

 だが、得はそう長くつづかず、得以上の損もない訳ではない。

「佐藤さんはもうお金なんか全部くれてやるから徹底的にの一点張りで、その子と、アタシの友達でかなり遊んでる子が対応してるんですけど、もう立てもしない酷い有様で、次はアタシなんです。だれか代わりを探せなければもう、アタシ、こんな感じですけど、まだはじめても……」

 遂に顔を押さえて泣きはじめる。

「わかった、行くよ」

 佐緒里は頷いた。

 元恋人だからというより、残っている気持ちが本物かどうか確かめる意味でも、EDを克服した明彦に会わなければならない。自分を見て萎えるようなら、原因はそういうことなのだ。ハッキリさせる意味でも、自分以外に適任はいないだろう。

「だから約束して、もうこんな危ないことはしない。今回のお金は明彦に払わせるから、仲間たちにもそれでやめるように言う。それでダメなら警察に行こう。明彦も捕まることになるかもしれないけど、それはそれで仕方ない。わたしもちゃんと付き合うから」

「……はい」

 そうして佐緒里はハルカの指示で車を走らせた。

 目的地は町外れの山の中にあるという廃屋、とても店には見えないが数人の男が騙されたのだと説明される。馬鹿げたシチュエーションとしか言えないが、明彦はそんな男の内のひとりということだ。

(この子を目の前にすれば、大概の男はコロッと行くでしょうね)

 なんとも腹立たしい気分ではあった。

 恋心を自覚したというのに、なぜこれほどまでにロマンチックの欠片もないような再会を果たさなければならないのか、廃屋の中でハルカの友人だという二人の若い娘に襲い掛かる明彦の姿を想像して、少なからずイメージが壊れている。
 真面目な男だったはずだ。

(そんなに勃起したのが嬉しいの?)

 実際に目の前にしたらもう恋心も粉々になっているかもしれない。

 案内された山の入口には見覚えのある車が停められている。ナンバーまでは覚えていないが、車内にあるいくつかの物品、自分が渡した交通安全のお守りなどを見ればそれが間違いなく明彦の車だとわかる。

「ここから先は歩きです」

「そうなの」

 いよいよ騙されそうにもない状況だ。

 パワースポットの神秘性を高めるにしても、ほとんど人が歩いた形跡もない獣道を歩く間に疑問を持たなかったのだろうか。結果として効果が出てしまったということが不運にすら思えてくる。

「ここが、エロ磁場と説明した場所です」

 しばらく歩いてハルカは道の脇の泉のほとりに立つ。

「綺麗な水ね……」

 佐緒里は底まで透ける水面に近付く。

 周りを囲われてもいない自然そのものの空間、それっぽいと言えばそれっぽい。

「井良町にいくつかある水源のひとつなので」

「飲めるの?」

「飲めます。アタシたちも時々……」

 トン。

(え?)

 会話の途中だった。

 不意に自分の後ろに回りこんだハルカに、振り返った佐緒里は泉に突き落とされていた。踏ん張るも踏ん張らないも、そんなことをされるとは予想もしておらず、凍るような水の中にとぶんと沈んでいくことしかできなかった。冬場の着込んだ状態での着衣泳、じたばたともがいて、なんとか溺れなかったのが奇跡のように思える。




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[ 2015/03/29 18:53 ] 林佐緒里編 | TB(-) | CM(0)
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