3月25日、NASAは小惑星再配置ミッション「Asteroid Redirect Mission(ARM)」の計画変更を発表した。小惑星全体を月軌道に運ぶ従来の計画をあらため、無人宇宙船でその一部を採取し、月軌道に運ぶという。
ロバート・ライトフットNASA副長官は、「宇宙船には、採取するサンプルを吟味するための一連のセンサーを搭載する予定です」と述べた。
最終目的地は、2019年に決まる。イトカワ、ベンヌ、2008 EV5などが候補に挙がっているが、今のところ2008 EV5が最有力だ。打ち上げは2020年12月の予定で、2年の歳月をかけて地球近傍の小惑星に向かう。
到着後は目的の小惑星において、最大で幅4mの岩を採取。その後、再び周回軌道に入り、215日から400日間小惑星を周回したのち、重力を利用して軌道を移る。
得られた岩は、2025年に月軌道へと運ばれる。そこで宇宙飛行士がランデブーを行ない、岩からサンプルを採取するという流れだ。
この計画が成功すれば、巨大な岩を意図的に地球の近くまで移動する世界初の例となる。宇宙飛行士が岩からデータを収集することで、採取元の小惑星の種類を詳しく知ることができるだろう。
NASAによると、この計画は、有人火星探査への足掛かりになると同時に、惑星の衝突防止戦略を試すチャンスでもある。無人宇宙船が小惑星を訪れている間、小惑星の軌道を徐々に変える予定で、もしそれが達成されれば地球に巨大隕石が近づいたときに同じ方法で衝突を避けられるかもしれない。
さらに遠い宇宙へのミッションに備えて、太陽光を利用した電気推進モジュールなどの導入も検討されている。
NASAは現在、計画を精査するための初期段階である「フェーズA」に入ろうとしている。目的地の決定はまだ先だが、月軌道に人を送るためには、より大型の打ち上げ用スペース・ローンチ・システムとオリオン有人宇宙船の準備を進める必要がある。