乃木坂46、シリアスな新シングルが50万枚突破の背景は? ポスト「卒業ソング」の文脈で読む
リアルサウンド 3月30日(月)8時10分配信
参考:2015年3月16日〜2015年3月22日のCDシングル週間ランキング(2015年3月30日付)
卒業&入学シーズンたけなわでして、今週のシングルチャートもなんと1位から12位までの楽曲がすべて初登場という、フレッシュ感あふれすぎな事態になっております。そんな中にあって、乃木坂46が50万枚を売り上げてダントツの1位。2位のOS☆Uは2.6万枚で、実に20倍近い売り上げ差ということになります。それだけ差が付いてはいますが、偉大なる名古屋の大須商店街から超絶元気をお届けするというアイドルグループOS☆Uには「週間チャート2位」という名誉なことっぽい達成がこれで与えられたわけです。なにせ、きゃりーぱみゅぱみゅや夢見るアドレセンスという並み居る強豪(ですよね)を下して勝ち取った2位であります。メンバーならびに関係者、ファンの諸兄は歓喜していることと思います。
しかし、ここで語るべきはやはり、乃木坂46であると言わざるを得ません。「命」をテーマにしたシリアスな楽曲であり、ビジュアルもまたシリアスさを全面に出すことが心がけられ、秋元康をしても「若者は哲学を欲しているのではないか」と語ったと言われています。ここで「若者」という言葉が出ているのは重く見るべきで、要するに若者をターゲットとしてアピールするための曲であり、つまり推測するならば、これはいわゆるポスト「卒業ソング」を探る中から出てきた作品なのではないかと思われるわけであります。
というのも近年の若者は決してバカではなく、歌詞にやたらめったら「桜」「卒業」などのフレーズが盛り込まれていようがCDを買ってくれたりはしなくなったわけです。しかしそういうご時世でもやはりこの季節に若者にCDを買ってもらう必要はあるわけで、ならば「君たちはどう生きるか」的なのか「贈る言葉」的なのかわかりませんが、シリアスなメッセージ性を選ぶというのはなかなかうまいアイデアであることだなあと思います。プロモーションとして東京メトロ各駅にメンバー直筆サイン入りのポスターが掲示されたのも、受験・卒業・春休み・入学シーズンで都内に溢れかえる若者に、受験予備校の広告よろしく直撃する手段としては最適かと思います。筆者が見たポスターには「万引きは犯罪です。カメラで監視してます」みたいな警句の書かれた書店のコミック売り場みたいなやつもありましたが、それもまたご愛敬といったところでしょうか。
楽曲の内容に関しては、メッセージ性の強い曲だというので、やはり歌詞に注目するのが筋でありましょう。中身としては「何のために生きるのか」というものでありまして、やはり若者らしい存在の理由に向き合うものになっております。人生の意味を問うているから哲学的なのかと言ったら別にそんなことはないわけですが、若者がしかつめらしく膝を抱えて考えるのにはちょうどいいテーマなわけです。しかし今どきこういうことを言っているとすぐメンヘラとか言われてしまいがちなわけですが、書かれているのが普遍的な内容であることは間違いないでしょう。
まあ結局は「生きる意味とかウダウダ考えるないで現実を生きろ」的な、よくある箴言に落とし込んでいくわけですが、普遍的な若者の悩みとしてサクッと終わらせるからこそ、それ以上のややこしい結論は必要ないわけです。どうせ歳を取ると、わりと人はなぜ生きるかということはどうでもよくなっていったりするわけで、このくらいでちょうどいいのです。むしろ今日日、こんなにも素朴なテーマと結論をセットにして打ち出し、きちんと50万枚とか売ってしまうのは素敵なことではないでしょうか。もちろん、こればっかりだとしんどいわけですが、こういうものがない時にこれを出すのは、少なくともありがちな内向的なロックバンドのシリアスさよりは、なかなか反抗的なことだなと思う次第です。
さやわか
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