京都地検の女5 2015.03.30


(野村留美)やめてよ!離して!
(刺す音)
(留美)ああっ…!おい!あんた何してる!?待て!
(大久保圭一)ああっ…!
(高原純之介)たいしたもんだ。
本物の僧侶だと言っても誰も疑わないだろう。
(成増清剛)いやいや…。
これはもう捜査の合間を縫ってあの父上の仕事をちょっと手伝ってるだけですから。
ええ。
あっ高原さん少々心が乱れておいででしたが。
うん…。
いや君が送致した強盗殺人の被疑者を今日あやちゃんが取り調べるわけなんだが…。
なんだが…。
わかった。
非番の日は坊主の真似事をしているおかしなデカと何かと噂の絶えない鶴丸検事との対決さてこれからどうなるだろうと今言いたかったんでしょ?ふふふ…。
いやぁ気が揉めてねぇ。
そんなの取り越し苦労ですよ。
若い頃ならともかく今の僕は捜査をやり直せと言われれば素直に従う従順な公務員ですから。
ではお先に。
(成増清一)清剛そこ雑巾がけしなさい。
はい父上!あの男そんな羊かね…。
ああ…嫌な予感がするなぁ。
(あくび)
(太田勇一)お前事務官見習いとしての緊張が足りない!相手はあの鶴丸だぞ!
(本木恵介)はい?
(鶴丸あや)大変よくできた調書です。
検事からそんなお褒めの言葉をいただけるとは…!さすが府警の成増刑事だ!これを皮切りに府警との友好をもっと深めて案件の迅速な処理にまい進いたしましょう!勘違いしないで。
地検と府警は仲良しクラブじゃないわ。
お言葉を返すようですけども無駄な衝突を回避するのが大人の分別かと思いまして。
事なかれ主義のあなたを大人と言うなら私は3歳の子供でいたいわ。
ふふふ。
それに調書はよくできていても数々の疑問がこの事件にはあります。
…とおっしゃいますと?まず…これは何?それは…。
本木説明してみるか?それは被疑者が逮捕された際に所持していたもので…。
(くしゃみ)所持していたもので…。
はいはいはい…。
農業をしている被疑者が野菜を卸していたレストランのサービス券です。
そうそうそう…。
ねえでもこれ手書きよね?今時手書きのコーヒータダ券って珍しいでしょ?よく見てよく見てほらほら…。
ほらこれなんか書きかけよ。
検事検事。
間もなく被疑者が到着しますよ。
些末なことにこだわらない!スピードアップでいきましょう。
太田さんあなたこそスピードアップしたほうがいいわよ。
彼女を捜して三千里の旅。
でないとおじいちゃんになっちゃうから。
ちょっと失礼します。
何がおかしいんだお前は!何がおかしいんだ。
すみません。
タマネギみたいだなお前。
すみません。
タマネギ。
タマネギじゃないです。
すみません。
あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
では始めます。
大久保圭一さん。
あなたは京野菜を有機農法で作ってるそうですね。
その野菜の売れ行きがはかばかしくなく金に困るようになった。
それで事件当夜強盗を働こうと包丁を持って通行人を待ち構えていた。
(大久保)はい。
そこへ被害者野村留美さんが通りかかった。
人気がないのを確かめ彼女に包丁を突きつけた。
金をよこせ!よこせ!嫌っ!やめて…!やめて!やめて…!揉み合いとなりあなたは野村留美さんを刺し殺してしまった。
これに間違いないですか?強盗殺人で決まりだ。
そのとおりです。
あの…。
はい?水もらえませんか?のどがカラカラなんで。
君ここをどこだと思ってるんだ?水なんか出るわけないだろ。
そうですよね…すみません。
ではあなたは事件現場へ来る前は何をしていましたか?家にいましたけど…。
で家で何を?夕食を食べようと…。
そうですね。
これはあなたの住まいを家宅捜索した折の写真です。
食卓に食事が並んでる。
はい。
検事それが何か?あなたは強盗を計画したと供述していますがこんなふうにご飯よそってお味噌汁よそってお刺し身を食べようとして犯行を思いついたんですか?そうです。
でもこのお刺し身マグロとヒラメですよね。
ワンパック1200円はする。
お金がない割には随分高いもの買ってますね。
関係ないんじゃないですか?それが好きなんで無理して…。
でご飯にラップもせずお刺し身を冷蔵庫にもしまわずに家を出た。
それから襲いました。
僕がやったんです。
間違いありません。
(ため息)あれ?検事早々に起訴手続きに取りかかってください。
でないと次の案件も…。
やっぱり変!お茶を…。
納得いかない!本木行くわよ。
(太田)ちょっと待ってください。
検事。
検事来ます。
もう次が来ます。
ほら急いで。
はっ…はい。
すみません…。
行くわよ!
(太田)報告しますよ!いってきます。
また始まったよ!鶴丸の暴走が。
アツッ!
(池内弘二)どうやら我々の捜査がお気に召さなかったようなんですよ。
あっ来た!ああ成増さん。
あなたの目は節穴なの?あらっ池内さんも。
検事大久保は事件現場で現行犯逮捕されたんですよ。
節穴ってことはないんじゃないですか。
まあまあ…いいじゃない…。
鶴丸検事さんの話聞かないと。
まずこれ。
これは大久保の家の食卓の写真です。
見て。
こんなふうにご飯よそってお味噌汁よそってお刺し身で夕食食べようとしてたのをそのままにして出かけると思う?いい?「いただきます」。
「あっそうだ強盗しよう」っていって包丁を持って出かけるなんて不自然でしょう。
それにお金がないって供述してるけどこのお刺し身は1200円はするわ。
1200円?うん。
このテーブルの上醤油皿は出てるのに醤油が入ってない。
刺し身を食おうと思ったのに醤油が切れてた。
それで外に買いに行こうとした時に魔が差して犯行を思いついた。
そういうことじゃないですか?お醤油…?まあこっちも暇じゃねえから。
行きましょう行きましょう。
お醤油…。
お醤油…?
(本木)いや〜めっちゃのどかですね。
いや〜。
どこ?ほら!あったぶんあの家じゃないですかね?ほらほらしっかり歩いて。
ああっ…。
(本木)お邪魔します。
お邪魔します。
大久保は一緒に農業やってた両親にはとうに死なれてますが市内に親戚がいてまして。
ですから来て片付けたんでしょうね。
いや〜大変ですよね。
身内に殺人犯なんか出たりしたら。
これそうじゃない?
(本木)はい?ほらこれ紀ノ屋のお醤油。
ほら…。
ほら料亭とか高級旅館でしか使えないっていう滅多に手に入らないんで有名な…。
いやいやお醤油なんて全部同じ味でしょ。
ちょっと…。
あんたみたいにねカレーとハンバーグケチャップとマヨネーズの味しかわからないような人にはわからないかもしれないけどこういういいお醤油の微妙な味…。
これがここにあったってことはお醤油を買いに出たんじゃないってことよ。
ちょっと…。
はい…。
何やお醤油…。
ちょっと…。
ちょっと本木。
ほら見て見て…見て。
ほら。
テーブルのここにお醤油の瓶の跡が丸く残ってる。
それが何か?ということは大久保は夕食を食べようとした時にこのお醤油もテーブルにちゃんと出てたってことよ。
あれ?変ですよね。
お刺し身はそのままにして醤油だけ冷蔵庫に入れて出かけた。
普通逆じゃないんですか?そうよ。
いいとこに気がついたじゃないの。
でもねホントにいいお醤油は常温で置いておくと微妙に味が変わるの。
だから冷蔵庫に保存するのは正解なの。
ということは被疑者大久保は味にこだわる繊細な人間だったってことよね。
あった。
ほら。
はい。
ほら見て。
犯行に使われたのと同じタイプの文化包丁よ。
ということは大久保は自分の包丁を持ち出してない。
それに味にこだわる繊細な人間がいきなり強盗を働く粗暴犯とはとても思えないわ。
やっぱりこの事件は変よ。
これ主婦の勘!
(本木)ここですかね?ここじゃないですか。
ベル・モンターニュ。
こんにちは。
(本木)失礼します。
(美山紀香)すいません。
11時半からなんですけど。
あの…私京都地検の鶴丸といいます。
こちらの責任者の方ですか?はい。
すみませんけどお名前は?私美山紀香です。
あの…何でしょう?一昨日強盗殺人の罪で逮捕された大久保圭一についてちょっとお伺いしたいことがあって。
はい。
彼はこちらのレストランに有機野菜を卸していたそうですね。
ええ。
で…これはこちらのお店のコーヒー無料券ですよね?はい。
逮捕された時大久保はこれを所持していました。
はい差し上げてました。
料理のメニューや味付けについて彼にアドバイスしてもらってたのでせめてものお礼にと。
ああ…。
でもちょっと変ですよね。
ほらこれ。
これ書きかけですよ。
あっいけない私…きちんと見ないで渡してたのかしら。
じゃあもう1つ。
大久保はお金目当てで包丁を持って人を襲うような人間でしたか?いいえそんな人じゃありません。
(ドアの開く音)あなた…。
(美山俊和)お客さん?あなたお店には来ないでっていつも言ってるじゃない。
あの…そちらは?あっ主人です。
こちら京都地検の方。
鶴丸です。
ちょうどよかったわ。
ご主人の目から見て大久保は強盗殺人を働くような人間に見えましたか?あっ…すみません。
主人は大久保君のことほとんど知らないんです。
この店に一切タッチしてないものですから。
ああ…そうですか。
ええ。
(本木)うわ〜ここが殺人現場ですか?何かちょっと緊張してきたんですけど。
僕初めてなんですよこういうところ来るの。
遊びに来たんじゃないわよ。
よく見ておきなさい。
はい。
あっここですね野村留美が向こうから来て揉み合いになって刺されて…。
ここか…。
平日の昼間からジャージー姿なんて…。
あのご主人何してる人だろう?ヒモですかね?「ですかね?」じゃないでしょ。
疑問に思ったら即調べる!はい…。
本木。
嫌々やるな。
仕事はニッコリ喜んで。
はい!喜んで!いってきます!
(池内)検事。
ああ池内さん。
何だ嫌々かよ…!ご要望に従ってそこらで大久保の近辺聞き込んでたんですけどね…。
何かわかった?店の常連客の話なんですが…。
ちょっと。
はい。
このサラダ変な味がするんだけど。
えっ…。
(留美)農薬が残ってるんじゃないの?
(紀香)いえそんな…。
(留美)絶対農薬のはずよ!お客さん難癖をつけるのはやめてもらえませんか。
僕が作った野菜は有機野菜です。
文句があるなら出てってください。
大久保君大久保君お客様に失礼よ。
すみません。
まったく…。
大久保圭一は野村留美を知っていた…!?ただいま。
(鶴丸りん)学食でよく食べてる。
(りん)おかえり。
成増さん。
暇じゃないんでしょう?勝手に上がり込んで何してるんですか?ちょっとりん。
もうあんたも年頃なんだからこんな中年オヤジうちに上げちゃダメよ。
成増さん。
被疑者大久保は被害者と面識がありました。
やっぱりこの事件は単なる強盗殺人じゃないわ。
なるほどな。
娘の心をつかむのはまず胃袋からか。
そう男の手料理。
友ちゃん喜ぶと思うよ。
でもな俺なあのな酒の肴ぐらいしか作れねえからなぁ。
成増さんねえあなたのねあなたとは似ても似つかないかわいいお嬢さんと仲良くなりたいって気持ちはよーくわかります。
でも今はまず仕事でしょう。
ねっ。
被疑者大久保の殺害の動機は金銭目的じゃありません。
もう一度洗い直してください!お言葉ですけどね俺はね人にね右向けって言われるとね左向きたくなる性分でしてね。
はあ!?りんちゃんじゃあまたね。
アドバイスありがとう。
バイバイ。
何?態度コロコロ変わって!そういえばなあの事件直前大久保の家に1本電話が入ったって言ってたな。
誰から来たのか…まあ所轄が洗ってくれるだろうけどな。
ちょっと!そんな大事なことどうしてもっと早く…。
(ドアの閉まる音)ああ…!ぐうたらデカ!彼には全くやる気というものが感じられません!こちらの依頼は無視するし調べて当然のことも所轄に押し付けている。
大体僧侶と二足の草鞋を履いて刑事をやるなんて軽薄もいいとこです!あやちゃん。
府警や警察と我々検察とは協力関係にあるがあくまで別組織だ。
いくら検事に指揮権があるといってもそうやって彼らをあごで使うっていうのは職権乱用じゃないかね。
でも府警も地検も事件の真相を探るのが職務です。
職域を越えて一緒に汗を流してこそ…!しかし彼らも山のような事件を抱えてるんだよ!わかりました。
でも私1人でもこの事件はとことん調べます!
(高原のため息)ははは…愉快だ!府警にあの鶴丸のゴリ押しをスルーできるツワモノが出現したとは!太田君我々の目的はどんな事件にもいちいち引っかかる彼女の性癖を改めさせて事件をいかに迅速に起訴あるいは不起訴に持ち込ませるかだ。
成増君がその妨げにならなきゃいいんだが…。
大久保さんあなたの供述にはいくつか嘘がありましたね。
僕は全部正直に…。
いいえ。
あなたは強盗目的でたまたま出会った野村さんを襲ったと供述していますがあなたは事件当日以前にレストランベル・モンターニュで野村さんと顔を合わせてます。
えっ嘘…。
ええと…その…。
その時あの人が僕の野菜についてひどいことを言ったので腹が立って…。
その程度のことで殺意まで抱くものでしょうか?それに私があなたの家に行ってみたら台所に犯行に使われたのと同じタイプの包丁が残っていました。
ということは自宅の包丁は持ち出していないんじゃないですか?あの…水を…。
すいません。
仮に腹が立って殺そうとしたのならどうして野村さんの財布まで奪おうとしたんですか?黙秘します。
僕は黙秘します!
(ため息)まったく…何でいきなり黙秘するかな…。
本木ただ今戻りました。
タマネギどこ行ってたんだよ?タマネギじゃないです。
どう?わかった?はい!あのレストランなんですけど1年前にオープンしてましてシェフの美山紀香1人が切り盛りしています。
で夫の俊和は定職には就いてなくていつもブラブラしているそうなんですけど…。
あっこれよかったら飲んで。
近所の人は不釣り合いな夫婦や!って噂してました。
何を調べたの?ねえねえ…電話はどうだった?何を?ちょっと…無視ですか?そっちの人はしょうがない。
おいそっち!無視かよ!?
(一同)せーの…。
えっ?みんなあのレストラン行ってたの?
(桜井麗子)クーポン券タダ券サービス券くれる店は即ゲット!
(吉川香織)そうそう。
あそこ味も値段もまあまあええしな。
(漆原さやか)まあ気に入らんとこいうたらシェフが美人すぎるとこかな。
(柿野たまこ)うちのジュースもこの私が入れてるからおいしいってみんなが。
(一同)撃ったろか?けどあのシェフは野菜を卸してるお兄ちゃんと怪しかったのよ…。
(紀香)今日のメニューお客様にうけるといいんだけど…。
(大久保)大丈夫ですよ絶対。
メーンディッシュのスズキのポワレは最高です。
僕が太鼓判押します!ええ〜ホント?そう言われると張り切っちゃうな。
でも彼女にはれっきとしたご主人が…。
(香織)そんなん亭主がおったかていくらかて恋の花は咲くやんか。
もしかして秘密の恋?あっ。
ねえ…ねえねえ他に何か気づいたことは?うーん…。
あっそうそうあの…変な人が1人おったな。
ほらあの文句つけてたオバサン。
ああ!髪の毛が入ってたとかガラスが入ってたとか…。
あれ完璧嫌がらせやんなぁ。
なあ!それってもしかして…。
おはようございます。
あっ…。
えっいいの?いやすいませんどうも。
ふふふ…。
成増さん!?えっ?何であなたがここに?何で…?あなたこそ…。
いやね今シェフにちょっと料理を教わってたの。
ねっ。
料理?あのねレトルトカレーに野菜をこう入れるだけで家庭料理の味になるんだって。
いいこと教わっちゃったなもう。
どうも。
いいえ。
あっ紀ノ屋のお醤油。
わあ〜これなかなか手に入らないんですよね。
大久保の家にもありました。
あなたが彼に?あっはい…。
彼も味の研究をしてくれてたので。
そのお醤油うちのメニューで結構使ってるんです。
隠し味で。
うん!おいしい!このプリンホントに…?ええ。
お醤油使ってます。
それ大久保君のアイデアなんですよ。
へえ〜!うわ〜!でもあれですよね滅多に手に入らないお醤油を離れた場所でそれぞれが別々に味わうって何かロマンチックですよね〜。
別にそんなつもりじゃ…。
ひょっとしてお2人の間に特別な何かがあったとか?彼は本当に大切な私のパートナーでした。
私が結婚してなければって思ったことも…。
彼のほうは何て?まるでワイドショーの取材だなおい。
それはわかりません。
確かめる機会がありませんでしたから。
ああごちそうさまでした。
あの…もう1つだけ。
はい。
事件の被害者の野村留美さん。
度々このお店の料理に文句つけてたそうですね?ちょっと。
はい。
スープに髪の毛入ってたけど。
ああ…すいません。
すぐお取り換えします。
いらないわ!さっさと下げて!すいません…。
ホント不衛生な店ね。
こんなもん入ってたけど。
えっ…ああ…。
ホントに危なっかしい。
よく商売やってるわよね。
すいません…。
(留美)どうしてくれるの!?大久保が殺した人物があなたに嫌がらせをしていた。
あなたと大久保は親しかった。
これどういうことでしょう?ともかくあなたは事件の被害者野村留美さんをご存じだった。
ええ…。
夫は1年半前まで東京の食品会社に勤めてました。
生産工場の工場長が野村さんのご主人だったんです。
それで彼女があなたに嫌がらせをした理由は?あっそれは…。
まあまあまあまあ…。
あのねその件に関してはねすべて承知してるから。
ねっ?ええっ!?成増さんまたですか?いや「また」ってあの…。
ああごちそうさまね。
ごちそうさま。
もう食べたでしょ?行きましょう行きましょう。
ちょっと!あなた一体何考えてるの!?何かをつかんだのなら担当検事である私に報告するべきでしょ!それを1人で捜査進めるなんて…。
大体ねあなた変わり者だっていう噂だったけど私に言わせればワガママで協調性のない女と見たら鼻の下伸ばしちゃうなんちゃって坊主の皮をかぶったアルバイト刑事じゃないの!何で黙ってるのよ。
お言葉ですけど父上から人の話はよく聞けと言われてるもんで。
ああ〜ちょっと待って!じゃあ今度は私があなたの話をじっくり聞かせてもらうわ。
えっ?こっち!こっち!食品偽装!?うん。
美山紀香の夫が勤めていたのはフジマル食品。
あっ知ってる。
確か1年半ぐらい前に外国産の牛肉を近江牛だって偽って販売した会社。
その偽装の指示を出していた会社の上層部の中に美山もいたんだよ。
まあ起訴は逃れてるけどな。
野村留美の夫は偽装発覚後1人でマスコミ対応に当たった。
だが世間の非難は日に日に高まり責任感の強かった彼は…。
自殺!?なんてこと…。
その後美山も責任を取る形で会社を辞め東京から夫婦2人で京都に移り住んだと。
夫の美山は自殺されたショックから立ち直れず妻の紀香がレストランをやって生計を立ててる。
で野村留美は夫に死なれたことを根に持ち逆恨みでシェフ美山紀香に嫌がらせをしていたと。
(ため息)だんだんわかってきた。
ねえ大久保もあの美山紀香に好意を持ってたと思うの。
あの2人の間には愛があったのよ。
だから大久保は嫌がらせをやめない野村留美を紀香のために殺した。
いやいや…いや殺したのはあの紀香で大久保は彼女をかばってる。
あのシェフが殺しなんてねぇ…。
もう…!男ってどうしてそう美女と見ると尻子玉抜かれちゃうかな?尻子玉…。
何でそんな簡単に容疑者から外すのよ?いい?彼女には殺害の動機がある!なるほど。
これが噂の鶴丸検事の暴走か…。
私は安全運転です!大久保は肝の据わった男じゃないけどな自白にはブレがなかった。
奴の犯行に間違いないと思うけどな。
違うわ。
私の直感が違うと言ってる。
あの…悪いけどね俺はその直感とか主婦の勘とか俺信用してないからね全く。
しょうがないでしょそう言ってるんだもん!
(池内)成増さん!おおどうだった?俺あんたの使いっ走りじゃないですよ。
じゃあ何だよ?例の大久保の家にかかってきた電話あれレストランのベル・モンターニュからかけられたものでした。
えっ!?じゃあ美山紀香が…?恐らく。
じゃあもしかして事件当日大久保がお刺し身をほっ放りっぱなしにして出かけたのはその電話のせい?
(大久保)隠していてすいません。
そうです。
夕食を食べようとした時シェフから電話がありました。
大事な話をしたいから店に来てほしい。
そう言われたので大急ぎで出かけました。
美山紀香さんと何を話したんですか?ご主人が食品偽装にかかわっていたことをです。
それから?野村さんにあんな嫌がらせをされてはもう店をやっていく自信がなくなった。
だからしばらく店を閉じたいと言われました。
それであなたはどうしたんですか?僕は続けてほしいそう伝えて店を出ました。
そして帰り道あの橋を通りかかったら野村留美さんが…。
(大久保の声)僕は思わず声をかけました。
嫌がらせをやめてくれないかと。
あなたは紀香さん…シェフに特別な感情を抱いていた…。
(紀香)大久保君!はい食べて。
どう?おいしいです!よかった。
このカブ自信作なんです。
ちょっと食べてみてください。
ホント?うん!甘い!でしょ?うん!
(大久保の声)だから店を続けてほしかった。
でも…。
あの女刺してやる!
(大久保)やめてください!
(留美)来ないでよ!
(大久保)やめて!
(留美)離して!
(大久保の声)彼女がシェフを狙っていると知って夢中で…。
(刺す音)
(留美)ああっ…!シェフを守るために刺したんです。
嘘をついていて申し訳ありませんでした。
(太田)意外な展開でしたが一件落着したんですよ!何かが変などという曖昧な理由で取り調べを長引かせるのは時間の無駄エネルギーの無駄税金の無駄!カーッ!もうそんな曖昧な理由じゃないわよ!これよこれ!大久保はどうして書きかけの券を持っていたのかこれがどうしても引っかかるの!そんなものが?ああもう集中できない!あっそうだ。
章ちゃんにメールしよ。
結局それかよ…。
章ちゃんって誰ですか?鶴丸の旦那だよ。
東京に住んでてな長い別居生活が続いてるんだよ。
まあ鶴丸はなラブラブだなんて言ってるけどもあんな爆弾女に満足してるんだとしたらよっぽどの変人かすげえブ男か…旦那の言い分聞いてみたいな。
ははは…。
はははは…。
爆弾というのはつまりダイナマイト級の魅力にあふれてらっしゃるという意味なんです。
そうよね。
いいこと言うじゃない太田さん。
片方の言い分だけ聞いてたんじゃ事の真相は見えないわ。
うん!いってきます!突貫小僧かよ。
突貫小僧って…昭和っぽいですね太田さん。
つっこみ!?どうぞ。
すいません突然お邪魔して。
あの…事件のことを伺いたくて。
どうぞ。
あっ…。
あっ…これご主人が書いてらしたんですか。
僕にはそんなことしかできなくて。
(紀香)ただいま。
どなたかいらして…。
検事さん何でここに?これご主人が書いてらしたんですね。
いや私てっきり奥さんが書いてるんだとばっかり…。
これでいろんなことが見えてきました。
事件現場で大久保が所持していたコーヒー無料券も書きかけだった。
最初ご主人が持っていた無料券が何らかの形で大久保に渡ったんだとしたら…。
もしかして事件の発生した場所にご主人もいらしたんじゃないですか?何言うんですか!帰ってください!出てって!奥さん落ち着いて。
出てって!落ち着いてください。
ああー!うわーっ!わっ!ああー!ううー!ああー!お願いやめて!うう…!ああ…!やめて…!やめて!やめて…。
お願い…お願い…。
私にはお2人が尋常でないように思えますよ。
何か重たいものを抱えてらっしゃるような…。
ご主人…そろそろ重いものを吐き出して楽になられたらいかがです?触らないで!嫌…帰って!ご主人は苦しんでる。
奥さんのその思いがご主人を苦しめてるんじゃないんですか?ホントにこのままでいいんですか?
(泣き声)あなた…。
検事さんすべてお話しします。
(紀香)嫌…。
じゃあ聞かせてもらいましょうか。
あの夜9時過ぎに野村さんから電話があったんです。
(携帯電話)はい。
(留美)「野村よ」「私とっても不幸だわ」「あなたが私と同じように不幸になったら多少は救われるかしら」あんた何考えてるんだ?もしもし?
(電話の不通音)
(美山の声)とっさに妻を狙ってると感じたんです。
それですぐにレストランへ向かいました。
(美山)野村さん!野村さん!野村さん!何よ?よかった間に合った。
話し合いましょう。
僕にできることだったら何でもしますから。
あなたも苦しめばいい。
大事な人が死ねばいいのよ!どいて!待ってください!話を聞いてください!離して!やめてください。
そんなものしまってください!野村さん!野村さん!来ないでよ!話を…話を…話を聞いてください!
(留美)離して!
(美山)お願いします!
(刺す音)
(留美)ああっ…!はっ…!強盗に見せかけようとしたのは?ちょうど来合わせた大久保君がそう言って…。
何度も自首しようとしたんですが妻に止められて…。
本当に申し訳ありませんでした。
美山俊和があの夜に起きたすべてを自供しました。
(机を叩く音)あなたも話してください。
しかし大久保はどうしてここまで美山をかばったんですかね?人の心っていうのはいろいろあるんだろうな。
あのお醤油です。
シェフがあれを僕にくれたのバレンタインデーだったんです。
はい。
えっ?開けてみて。
いいんですか?シェフは全然そんなこと考えないでくれたんですけどね男の側はうわって思っちゃうでしょ。
以前からシェフにその…憧れてました。
だからあれもらってえっ僕と同じ気持ちなの?僕も好意を持たれてるの?って舞い上がりました。
もう絶対彼女は運命の人だって。
美山紀香さんは私に対してもあなたに特別な感情を抱いているとにおわせました。
でもそれはご主人から捜査の目をそらすためについた嘘だったんです。
彼女は誰よりもご主人を愛している。
あの晩僕にもそれがやっとわかりました。
そんなこと言わないで店を続けてください!野村さんがここに来てると知って夫は苦しんでるの。
罪の意識でいっぱいになって…。
あんな姿見てられない。
あの人を救いたいの。
救いたいの!あれだけ言われたら誰でもわかりますよ。
僕の独り相撲だって。
へこみました。
むちゃくちゃ。
帰り道はもう何もかも嫌になって…。
(美山)話を聞いてください!
(留美)やめて!
(刺す音)
(留美)ああっ…!はっ…!美山さん何で…。
紀香を刺す気だった。
だから止めようとして…。
(大久保の声)すげえと思いました。
妻を守って殺人なんて。
でも人間ああいう時って変なふうに気持ちが動くっていうか…。
変なふう?負けてなるかって!僕もやるぞって!ここは僕が何とかします。
逃げてください!いやしかし…。
奥さんのためです!さあ!そんなことはできない!早く!逃げて!おい!あんた何してる!待て!
(大久保の声)バカでしょ。
滑稽でしょ。
でも怒られるかもしれないけど何も怖くなかったな。
僕臆病なんだけど何ていうのかな…シェフのためになってるんだなって…。
だってシェフの笑顔で…紀香さんの笑顔であの笑顔で僕どんだけ幸せな気分になれたか…。
それにあんな大事なお醤油僕にくれたんですよ。
うまかったな…。
あのお醤油で食べた卵かけご飯。
最高だった。
(ため息)あなたの気持ちはわかりました。
があなたは犯人隠避の罪に問われることになります。
もし美山紀香さんに言いたいことがあれば折を見て私から伝えますが。
いいえ。
脇役のセリフは少ないほうがいい。
検事さん…。
来週ご主人の裁判が開かれることが決まりました。
あの…大久保君は?恐らく執行猶予がつくと思います。
そうですか。
食品会社に勤めてらした頃ご主人バリバリの仕事人間だったそうですね。
はい。
忙しくて夫婦の会話もなかったんです。
でも野村さんが亡くなって逃げるように京都へ来てやっと夫婦らしくなれました。
ダメージを受けた夫を支えるのが私の生きがいになったんです。
ご主人を守りたかったんですね。
だから大久保さんの気持ちまで利用して彼が罪をかぶるのを黙って見ていた…。
はい…。
身勝手すぎました。
夫しか見えてなかった。
亡くなった野村留美さんも自殺したご主人を一途に愛してらしたんだと思います。
だから愛する人を失った痛手はさぞ大きかったんでしょう。
野村さんの気持ちも考えずそのことから逃げてました。
今回の事件でたった1つ救いがあるとすればそれは大久保さんの強さです。
強くなければ好きな女性のためにあそこまではできない…。
強くなってください彼のように。
ご主人を遠くから見守る強さを身につけてください。
さあ一緒にご冥福を祈りましょう。
はい。
ああ…。
たとえヒモのように成り果てた男でもそばにいて尽くしたかったか…。
わかんねえな女心は。
女心は複雑だからあなたにはわからないわね。
ああ…でもそんな彼女を愛した大久保さんの不器用で真っすぐな愛にも心打たれるわよね。
へッ…!何?またいちゃもんつける気?いや全然。
いや俺はねただ欲望本能が丸出しでもう心が真っ裸のようなそういう生臭い男に共感するけどね。
まあ神聖な本堂で何たる発言。
この鶴丸が成敗してくれる!ちょっと待って待って!はっ!危ない危ない…!はっ!おはようございます西川きよしのおしゃべりあるき目ですいいとこへ来てます2015/03/30(月) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
京都地検の女5[再][字]

「殺意のレシピ…食卓の暗号が暴く真相!!」

詳細情報
◇番組内容
“主婦の勘”を武器に難事件に立ち向かう京都地検検事・鶴丸あや(名取裕子)の活躍を描く大人気シリーズ第5弾!春の京都を舞台に、事件の裏に隠された心の奥深くを描き出す大人のミステリー。
◇出演者
名取裕子、寺島進、益岡徹、渡辺いっけい、蟹江敬三 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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