美の壺・選「東北の和菓子」 2015.03.29


(テーマ音楽)いやあたくさんあるなこれ。
先日お隣さんが東北旅行に行ってお土産としてこんなにたくさん東北地方の和菓子を送ってくれたんですよ。
うれしいですね〜。
これは桜の花びらをかたどったお菓子。
う〜ん!うん?これはなんだろう。
あっ梅のお菓子だ。
それにしても春にちなんだお菓子ずいぶんたくさんあるな。
草刈さん。
はい?東北地方もそろそろ本格的な春を迎えているんですよ。
4月も終わり近く。
東北地方はようやく桜の見頃を迎えます。
待ちかねた春の訪れ。
東北各地にはその喜びを桜や梅などの形や色香りで表現した和菓子の数々が伝えられています。
雪に閉ざされた北国の…だからこそ春を喜ぶ心もひときわ強く人々はその思いを菓子に託してきました。
周りを白一色に染め上げる雪に抗うかのように作り出された鮮烈な色彩の和菓子。
そして自然が厳しいからこそ東北の人々は田畑の恵み海や山の恵みに深い感謝の思いを抱いてきました。
お米や雑穀を大切に使った多種多様な餅。
そこに海や山の恵みをあしらった趣深い和菓子が生み出されてきました。
・「二度はうそや一度はああ」東北各地の風土と歴史が育んだ素朴で温かみのある和菓子の数々。
今日はその形や色に秘められた知られざる物語をひもときます。
まずは形に注目。
山形県鶴岡市の和菓子。
愛らしくちょっと不思議な形が特徴です。
実はこの地方でとれる民田なすを砂糖水で煮て乾燥させたもの。
素朴の形をそのまま生かしたところが魅力となっています。
黒いなすの表面には純白の砂糖。
大地の上に初雪がうっすら降り積もった景色に見立てたものです。
淡い雪が日ざしを受けてきらめくかのようです。
こちらは青森の菓子。
りんごを輪切りにして乾燥させ粉砂糖をまぶしたものです。
芯の部分に注目してください。
種を抜くと自然にできた形。
それを初夏に花開くりんごの花に見立てています。
素材の形を生かした遊び心です。
自然の恵みの色や形をそのまま生かす。
それが東北の和菓子に多く見られる特徴です。
今日一つ目の「壺」は…いにしえから昭和の初めに至るまで東北地方は幾度となく大きな飢きんに見舞われました。
そのさなかに出版された書物。
飢えをしのぐために口にできる草や木の実について図解したものです。
お米や麦の代わりに命の糧となる自然の恵みの数々。
寒さを跳ね返す厚い皮の中に養分を蓄えた木の実や草の実の尊い姿が精緻な筆使いで描かれています。
神聖視するというかそういうところは少なからずあるのかなと感じます。
そんな自然の恵みへの畏敬の念を伝える…水あめに黒ごまを混ぜ力強くねじっただけのシンプルな和菓子です。
光にかざすとあめの金色の中に黒ごまが神々しく浮かび上がります。
「ごまねじり」を今に伝える仙台の老舗菓子店です。
タンパク質やカルシウムを多く含み飢きんの時米に代わって飢えをしのぐための大切な栄養分になりました。
尊いごまの色と形をそのまま閉じ込めたごまねじりはかつて東北各地で作られていました。
しかしこういった素朴な菓子は戦後次第に暮らしから姿を消していきます。
先人たちの思いの込もった菓子の数々がすたれるに任せてはならない。
こう考え昭和30年代東北各地を巡り復元に努めたのがこの店の先代石橋幸作でした。
戦後自分がどんな事があっても昔の和菓子元来のお菓子木の実草の実が入ったようなお菓子を作りたいということで復活をしたわけですね。
ですから地方から来た方がそのお菓子を見て「これは私の地方のお菓子だな」とか「懐かしいな。
昔こういう物食べたな」というような哀愁があるお菓子を作り始めたわけですね。
石橋幸作が手がけた菓子。
こちらはかつて仙台藩が治めていた地域で広く食べられていた菓子。
お米を乾燥させた非常食「糒」をきなこで包んだ荒々しい造形です。
栄養価が高い落花生。
明治時代に日本で栽培が始まりやがて東北地方に広まりました。
それを水あめで包んだもの。
落花生の姿が美しい琥珀色の中に封じ込められています。
自然の恵みへの敬意に満ちたまなざしが秘められた東北の和菓子。
その野趣あふれる姿を東北の人々は今も大切にしています。
色鮮やかなお菓子がありますよ。
これお餅の上に赤や黄色や緑の粒がのってますね。
草刈さん。
はい?それは「くじら餅」といって山形県のお菓子なんですよ。
その3色の粒は餅米を煎って作ったものなんです。
へえ。
それにしても濃厚な色だねこれ。
それは雛祭りの時にいただくからなんですよ。
・「あかりをつけましょぼんぼりに」・「お花をあげましょ桃の花」3月雪解けが始まる頃鶴岡市は1年で最も華やいだ季節を迎えます。
雛祭りが1か月にわたって祝われるのです。
春の訪れを待ちわびる気持ちがひときわ強い東北地方。
江戸時代北前船の交易で潤った庄内藩の城下町だった鶴岡では豪華絢爛たる雛人形を飾り盛大に祝う風習が今も家々に伝わっています。
雛壇に花を添えるのがお雛様の供物として飾る雛菓子。
鯛やなすなどの縁起物をかたどったものですが特徴は他に類のないほど強烈な色彩。
濃いピンクに黄色。
雛人形に引けを取らないほどの華やかさです。
これは春を迎えた喜びを表現したものとされています。
それは誰しもみんな心情にあると思うんですが…というわけで東北の和菓子観賞二つ目の「壺」は…鶴岡では10を越える菓子店がそれぞれに色に工夫を凝らした雛菓子を作っています。
鯛やエビ果物などをかたどった菓子。
中に黒あんを入れることが多く外側はすべて軟らかい白あんでできています。
本物の色をさらに強調した色彩。
独特の照りが色をより鮮やかに見せています。
こちらは主に砂糖で作った雛菓子。
上品でみやびな趣があります。
キノコや鯛のリアルな形を色がよりいっそう引き立てています。
鶴岡には強烈な色彩を表現するための技が伝えられています。
この道55年和菓子の色の美しさを追求してきた菓子職人の本間三雄さん。
あの鮮やかな色はどのように出すのでしょうか。
ピンクに着色した白あんと共に色をつけていない白あんを使うことに秘密があります。
おや?白を混ぜて色をどんどん薄くしています。
これはあんを混ぜ合わせて色や形を作り出していく…長年目で覚えた程よい色の薄さに混ぜ合わせた白あんの鯛。
そこに吹き付けるのは山形特産紅花の強烈な色。
桜のような淡いピンク色が紅花の赤を見事に引き立てるのです。
やはり色彩というのは濃い部分と薄い部分と…そしてもう一つの工夫がこちら。
寒天です。
色がひときわ深みと輝きを増すのです。
艶やかな光沢を帯びた雛菓子が春の喜びをうたい上げているかのようです。
今もそれを引き継いでるという感じで。
雛祭りには毎年2人のひ孫を迎える中村泰子さん。
80年前の自分の子供時代からいつも雛壇には色鮮やかな雛菓子がありました。
まだ雪の残る北国の春。
少女たちが思い出に刻んでいく懐かしい味と色です。
わあおいしそうだこれ。
ずんだ餅。
僕ねこれ大好物なんですよ。
枝豆の食感とさっぱりした甘みがたまらないんですよ。
なんでも伊達政宗が大好物だったらしいですよ。
いただきます。
最後はお米を使った和菓子に注目します。
岩手県の米どころ一関市。
観光客でにぎわう和食レストラン。
東北ならではの人気メニューがあります。
仕切りのある大きな重箱に色とりどりの餅。
東北各地で食されてきた代表的な8種類の餅が勢ぞろいしています。
東北地方ではあんこをかけたものやシイタケとショウガのおろし汁をかけたものなど無数のバリエーションが生み出されてきました。
仙台のずんだ餅はすりつぶし砂糖を混ぜた枝豆。
さわやかな緑とさっぱりした香りが餅の風味にマッチします。
こちらは…煎った黒ごまをすりつぶし濃厚な風味を添えます。
いずれも今は白い餅がベースですが…頻繁に凶作に見舞われた東北地方。
厳しい自然と闘ってようやく手に入ったお米は不思議な力の宿る神聖なものと考えられました。
そして米の霊力への信仰が幸せへの願いが込もった和菓子を生み出しました。
今日三つ目の「壺」は…秋田県湯沢市の一般のお宅。
この地方では江戸時代から家に米で作った菓子を飾る風習があります。
毎年正月に新たな犬っこを玄関に飾り幸せを祈ります。
緑のしめ縄の犬には家内安全の願い。
そして赤のしめ縄の犬には魔よけの願いが込められています。
作った犬っこをね。
みんな絶やさないでやっていこうという意味で。
江戸時代初期に始まったとされる犬っこの習慣。
古くは各家庭で作られてきましたが今は3つの家で犬っこ作りが伝えられています。
それぞれの作り手が会社勤めなど本職の傍ら個性豊かな犬っこ作りを追求してきました。
そのうちの1人。
7歳の頃からこの道73年の佐藤雅三さん。
酒屋に勤めながら親から受け継いだ犬っこ作りを続けてきました。
大きさわずか2センチ。
米を固めた菓子は乾燥すると割れやすいのが特徴です。
縁起物の犬っこ。
ひびが入りにくくするため佐藤さんは小ささにこだわっているのです。
耳の長さはわずか1ミリ。
10万個に上る犬っこを作り続けて体得した緻密な手技です。
最も難しいのは首の回りに巻くしめ縄。
細さ4ミリのひもを2本互い違いに編み合わせます。
今まで何十年間以上作ってきた勘がここまできたと思います。
小指の先ほどの佐藤さんの犬っこ。
よく見ると1匹が口を開け1匹が閉じています。
「あ・うん」の呼吸で邪気を払い幸せをもたらしてほしい。
そんな願いが込められています。
最後に米に祈りを託したいにしえの心を伝える菓子をご紹介しましょう。
・「舞いましょう」・「若さ二度はない」・「二度はうそや」・「一度はああ咲いて実がなるや」・「ああよいさよいさ」・「ハァ歌いましょうや」・「舞いましょう」・「若さ二度はない」・「二度はうそや」…一粒でも多くとれればいいかなと思った気持ちがこういうことにつながってると思います。
年末から正月にかけて飾る餅花。
かつては飾り終わったら皆で食べお米の霊力を授かったといいます。
常にお米とともにあった人々の営み。
東北の和菓子にはその記憶が宿っているのです。
東北の風土や歴史がこんなにいろんなお菓子を生んでたなんて知りませんでした。
東北の人たちは僕たちが忘れている自然への感謝や食べる物を大切にする気持ちを今も大切にしてたんですね。
あっそうだ。
庭の植物に水やらなきゃ。
・「雪どけせせらぎ丸木橋」・「からまつの芽がふく北国のああ北国の春」今回は今年のノーベル物理学賞に選ばれた…2015/03/29(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「東北の和菓子」[字]

身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「東北の和菓子」。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
素朴で温かみがあって懐かしく、思わずほっこりする…。東北地方の和菓子には、そんな魅力がある。そこには、長く厳しい冬の後に訪れる春の喜び、そして、寒さや飢えと戦う中で育まれた、田畑や海山の恵みに対する深い感謝の思いが凝縮されている。「ずんだ餅」など有名な菓子から知られざる菓子まで。驚きに満ちた造形を持つ東北の和菓子の野趣溢れるたたずまいや色を、秘められた物語をひもときながら鑑賞する。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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