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印南敦史印南敦史  - ,,,  07:30 AM

在日中国人が語る「それでも日本を好きな理由」

在日中国人が語る「それでも日本を好きな理由」

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反中・嫌中スタンスだけではない、中国への別の向き合い方、中国人とのほかのつきあい方を模索する日本人が、実は多くいるのではないか。膠着状態に陥っている日中関係をなんとかしたいと思う人が、ある程度いるのではないか。(「まえがき」より)


在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(趙海成著、小林さゆり訳、CCCメディアハウス)の共編者/翻訳者(反日デモをはさんで中国・北京に13年近く住んでいたそうです)は、本書の冒頭にそう記しています。

日中関係は緊張しているけれども、個人間の関係については話が別だということは、ここでも何度か書いてきました。デリケートな問題だけに答えが出にくいのも事実ですが、本書は、そんなときだからこそぜひ読んでいただきたい書籍です。

反日デモの激化から1年を経た2013年秋に出版されて話題を呼んだ、『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(在中日本人108人プロジェクト編)と対になる、「在日15年以上で日本をよく知る21人の中国人」へのインタビュー集。

北京出身の著者は、日本への留学経験を経て、初の在日中国人向け中国語新聞『留学生新聞』初代編集長を10年間勤めた人物。現在は、北京を拠点に日中間を行き来しながら活躍するベテランジャーナリストです。インタビュイーの肩書きや経歴もさまざまですが、ひとりひとりのことばからは、日本への純粋な思いを感じることができます。いくつかをご紹介しましょう。


世界有数の歓楽街で生きてきた「歌舞伎町案内人」


リー・シャム氏は、1988年に来日して以来、27年にわたって新宿・歌舞伎町で生きてきた人物。現在は作家・レストラン「湖南菜館」プロデューサーとしても活躍し、「歌舞伎町案内人」の異名で知られています。


歌舞伎町はとても人間的なところ。そこでは人の三大欲望(食欲、物欲、性欲)を満たすことができる。各国の人がいて文化も豊かだ。(中略)こうした文化は誰か1人の力ではなく、何世代もの人たちが作り上げてきたものだ。(中略)こうした夜のライフスタイルを作るのは日本人の得意とするところだ。中国人はそれをしっかり学ぶべきだ。この産業をうまくやれば国の税収は増えるし、多くの人に就業チャンスを与えられるからね。(38ページより)


2014年に、日本への帰化申請をして新宿区の区議会委員選挙に出ると表明したことは、一部の報道でも取り上げられました。そのことについて著者は「彼がもし区議会議員に当選したら、彼にとってもこの新宿区にとっても、確かによいことだと思う」と感想を述べています。理由は、現在、国内外に向けて歌舞伎町をアピールできる文化人は、リー・シャム氏以外にいないから。

来日後、生きるためにさまざまな仕事を経験する過程で、歌舞伎町の「案内業」を商売にした初の中国人。強盗に襲われるなど何度も危機を乗り越えてきた末、現在ではホストクラブのマスター、エレベーターボーイ、果ては歌舞伎町の警察ともよい関係を維持しているのだとか。そしてどんな人に会っても腰が低く、謙虚なのだといいます。そして著者は、そうした態度も彼のビジネスが順調で、人脈が広いことの理由だと分析しています。そして『ニューズウィーク』日本版をはじめ、本やコラムの執筆依頼もひっきりなしに来る状態。


将来どんな文化人や実業家になろうとも、俺はぜったいに歌舞伎町を離れない。ここは俺を出世させてくれた場所、そしてきっと俺の墓場になる場所だから。(38ページより)


歌舞伎町の表も裏も見てきた人物だけに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、ここに表現された人物像は、たまらなく魅力的です。(28ページより)


日本報道の最前線で奮闘する日々


1997年に来日し、慶應義塾大学の修士・博士過程で国際関係を専攻後、NHKの国際放送で中国語番組のキャスターを5~6年間勤めたというリー・ミャオ氏。2007年には香港に拠点を置く中国語圏向け衛星テレビ局「フェニックステレビ」に入社し、現在は東京支局長を務めています。

2011年3月11日の東日本大震災発生時には、すさまじい勢いの津波の映像とともに、カメラの前で感情をあらわにして泣きながらニュースを伝え、多くの中国人視聴者に深い印象を与えたのだといいます。


あれは無意識な反応で、司会者と受け答えしている時に、感情的にコントロールできなくなって泣いてしまったのです。私が涙を流した映像に対しては、ネット上でも批判する声がありましたが、称賛する声はもっと多かったようです。(中略)生放送を終えて報告を書きに行く時、自分の手がずっと震えているのに気づきました。あれほどの大地震でしたから、実はとても恐ろしかったのです。(104ページより)


そして特に印象深かったのは、東京全体が混乱し、通りは人であふれ、交通が麻痺したときのことだといいます。


それでも混乱の中に静けさがあり、人々には秩序があったと思います。(中略)カメラマンと街のようすを撮影しに行くと、人々がとても落ち着いていて、並んで電話を待っているのを目にしました。日本人はこんな大災害の時でも、冷静さと落ち着きを保てるのです。長年日本に住んでいますが、これにはやはり驚きました。(105ページより)


外国メディアでありながら、「あきらめない姿勢」を認められて日本人記者クラブに加入できたという実績も。そんなリー氏のことばからは、日本のよい部分とそうでない部分を見極める客観的な視点があります。


日本はたいへん成熟した国家で、たとえ経済が低迷していようと、多くの面ですでに軌道に乗っています。(中略)秩序があって、ここでの生活はとても安心できます。ただし日本社会にも問題があり、一部排外的なところがある。日本はすでに民主国家ですが、外国人に対してはやはり偏見があります。(107ページより)


昨今のレイシズムの問題にもつながる、重要な指摘ではないでしょうか?



苦節15年の不法就労を経て娘を医者に育て上げた料理人、巻いた布団を肩に背負い、野宿の危機にまで追い込まれたことがある不動産業者など、他にもさまざまな職に就く在日中国人の、日本への思いが記されてきます。このスペースだけでは、とてもその密度の濃さを伝えきることは不可能な、素晴らしい内容。

いま考えるべき、とても大切なことを実感できるはずです。掛け値なしに、自信を持ってお勧めします。

(印南敦史)

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