お立ち台に上がった高木勇。大声援を全身に浴び、目を潤ませた。
「がんばってきて本当に良かった。(お立ち台が)こんなに気持ちいいとは思いませんでした」
中継ぎ登板でスタートした春季キャンプから好投を続け、つかんだ晴れ舞台。新人の開幕カード白星は55年ぶりの快挙だ。最速148キロの直球と、打者の手元でボールが横に変化する通称「高木ボール」(カットボール)を駆使し、6回2失点。21年目のベテラン捕手、相川のリードや打線の大量援護にも助けられ、リズムに乗った。
五回の打席では初安打もマーク。開幕カード勝ち越しに投打で貢献した右腕は「自分らしさを忘れずに投げようと思いました」と胸を張った。
「つらい思いというか、いろいろやってきました」。25歳。社会人3年目から毎年、ドラフト候補に名が挙がっては指名漏れを経験したが、めげなかった。常に栄養価の高い黒豆を瓶詰めにして携帯し、7年間で体重を約25キロ増量するなどパワーアップ。今季、念願のプロ入りを果たした。
環境が変わっても、自然体を貫く。8年間続けている朝の散歩は、現在も欠かさない。「代謝がよくなるので」と午前7時までに起床し、長いときは30分間外を歩く。オープン戦で訪れた札幌では登板日の朝、雪の降る街を歩いた。この日も宿泊ホテル周辺を散歩。“特別な日”でも普段通りを心がけた。