ヤマダ電機、住宅事業の高い目標に湧く疑問
「5年で売り上げ3倍」計画が無茶に見えるワケ
家電量販業界の巨人、ヤマダ電機。郊外型の「テックランド」、都市型の大規模店「LABI」のほか、傘下のベスト電器やマツヤデンキなどを含めて、グループ全体で国内に約4400店のネットワークと売り上げ約1.7兆円(2015年3月期見込み)を誇る圧倒的な存在だ。
そのヤマダ電機グループを持ってしても、さっぱり振るわないビジネスがある。住宅事業である。グループシナジーを最大限に生かすことで、5年後の2019年度には2014年度比で約3倍となる売上高3740億円に引き上げることを計画しているというが、本当に実現可能なのか首をかしげざるを得ない。
エス・バイ・エルを傘下に収め住宅事業を推進
ヤマダ電機グループは、2011年に中堅ハウスメーカー「エス・バイ・エル」を買収し、住宅事業に参入した。狙いは「スマートハウス事業」の強化。これは山田昇会長の肝いりによる戦略である。
スマートハウスとは、太陽光発電システムやHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、家庭用蓄電池などを導入するエコな住宅のこと。スマートハウスが売れることで、テレビや冷蔵庫、照明器具などといった「家電」の販売にも波及効果が表れ、本業に大きく貢献するというのが、ヤマダ電機グループが構想する住宅事業のビジネスモデルだ。
ただ、肝心の住宅が売れない。ヤマダは2013年1月にエス・バイ・エルを「ヤマダ・エスバイエルホーム」(以下、ヤマダS×L)に社名変更し、経営陣の大幅刷新などてこ入れを図ったが消費増税の影響もあり、業績にこれといった改善がみられていない。今後発表される前年度(2015年2月期)決算は期初の時点で7億円の営業黒字(前期は6.4億円の営業赤字)と黒字転換を見込んでいたが、その後、業績予想を下方修正し、売上高524億円(前期比5%増)に対し11.6億円の営業赤字と3期連続の赤字に沈む見通しだ。