HOME英語ニュース・ビジネス英語
 
 


日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年6月18日

関係節で怪我をしないための三つのチェックポイント

幼稚な例で恐縮ですが、the man who is tallとthe tall manは同じことであり、従って、who is tallという関係節は言ってみれば名詞manを説明している大ぶりの形容詞でしかありません。形容詞節ということです。ただ、日本語にはない言葉のしくみなので、とっつきにくいだけです。とっきにくいだけのことで、英語圏の子供は2歳ちょっとで既にこなしていると言いますから、高度の文法知識が要求される話ではありません。その一方、Graeme KennedyのStructure and Meaning in English (Pearson Education)によると、話し言葉であれ、書き言葉であれ、4センテンス中1センテンスには、こういった形容詞節が含まれていると言いますから、避けて通っているようでは不自由します。

形容詞節の用法をおさえるべしと言っても受験英語や学校文法の世界と違って、網羅的に分類をおぼえる必要はありません。ビジネスライティングでおさえておく必要があるポイントは、以下で説明するとおり、三つだけです。第一に、that、whichのいずれを使うべきなのかという問題、それに関連して、その部分をカンマでくくるべきか否かという点、第二に、どういうときにthatなどを省略するかという問題、そして第三にwhoなのかwhomなのかを判別するという問題です。

★ thatを使うのか、whichを使うのか、あるいはwhoなのか

ルールは、人間については基本的にwho一本で行き、それ以外はthatかwhichかを決める必要があるというものです。

まず関係節が人についての説明になっっているときはWho一本でいきます。あとは、その形容詞節がどの人の話か限定する情報であるときはカンマなし、限定しておらず、削除可能な補足情報ならカンマあり、というルールの適用の問題です。

この点、Geoffrey BroughtonのPenguin English Grammar A-Zは、カンマがあるかないかでこんなに大きな違いが生じますよということで、以下の二つの例を挙げています。

例文1 His wife, who works in London, is dark-haired.

例文2 His wife who works in London is dark-haired.

例文1は、削除可能な補足情報であることを示す一対のカンマがあるので、彼の奥さんは一人しかいないのがわかるけれど、例文2は、カンマがなく、従って、どの奥さんのことであるかを特定するための情報ということになるので、言外に奥さんが何人もいることを示す結果になっています。

なお、Broughtonによると、削除可能な補足情報を示すだけの形容詞節、つまり文法用語で言う非制限用法の形容詞節というのは、よりフォーマルである一方、使われる頻度が低く、しかも、話し言葉よりは書き言葉に多く出てくるものだそうです。

次に、形容詞節が人間以外の物事について説明をしている場合ですが、先行する名詞XにつきどのXかを特定するのに必要な情報であればthatを使い、そうでなければwhichを使います。

Can you print the file that we received from head office?(本社から来たファイルをプリントしてもらえますか)

という例では、we received from head officeというfileを説明する部分は、どのファイルのことであるかを特定する不可欠の情報であり、こういった場合は、普通、whichではなく、that節で行きます。

また、カンマについて言えば、このようにthat節がどの名詞かを言うために不可欠のものであるとき(つまり削除できないとき)は、カンマを入れてはいけません。

逆に関係節が削除可能な補足情報でしかなく、その部分を削除しても問題がない場合は、whichを使い、しかもカンマでwhich節の左右を区切ります。次のような例です。

Our fixed income department, which posted record revenue last year, is having a hard time this year.(昨年は記録的業績を達成した当社の債券部門が今年は苦戦している)

ここではour fixed income departmentとなっており、どのdepartmentかは既に特定されていますから、形容詞節の部分は削除可能な補足情報です。そこで、この場合は、whichで始まる形容詞節を作ります。

★ thatやwhichを省略できる場合

フォーマルな文書でない限り、thatやwhichはよく省略されますが、どのthatやwhichでも省略可能というのでなく、不可欠な情報を持つ形容詞節の中でのthatやwhichであり、しかも、それが目的語として使われているときだけ、というふうに二つの条件をクリアーしなければなりません。

不可欠な情報か否かはその部分を削除して意味が変わったり、意味をなさなくなれば不可欠だとわかりますが、目的語として使われているケースというのがクセモノです。

この問題、つまり、どういう場合に関係代名詞が主語として使われており、また、どういう場合に目的語として使われているかをうまく説明している文法書は少ないと感じていますが、George YuleのExplaining English Grammar (Oxford University Press)は例外で、なかなか親切です。

この本は、

Did you see the man? The man was here.(その男性見た?ここに来ていたんだけど)での、第二文の主語であるthe manを関係代名詞にするとDid you see the man who was here?(ここに来ていた男性に会った?)となるが、こういったケースを指して、関係代名詞が形容詞節の主語になっているという言い方をするのだとしています。

他面、Did you like the woman? You met the woman.(その女性、気に入った?君はその女性に会っているよ)をもとに作る、Did you like the woman whom you met?(君が会った、あの女性、気にいった?)でのwhomのように、もとは動詞の目的語(ここではthe woman)だったものを関係代名詞にしてあるときは、そのことを指して、関係代名詞が目的語になっていると言うのだと説明しています。

「不可欠な情報を持つ形容詞節の中でのthatやwhichであり、しかも、それが目的語として使われているときだけ」省略できるというルールをこの二つの例文に当てはめて考えて場合、Did you see the man who was here?でのwhoは省略できないけれど、Did you like the woman whom you met?の方は目的語として使われているから省略でき、Did you like the woman you met? にできるということになります。

★ WhoなのかWhomなのか

一般的に話し言葉の場合は、WhoとすべきかWhomとすべきか悩む必要はなく、すべてをWhoで通せます。インフォーマルなライティングもそうですから、普段のEメールなどでもWhoで通していれば十分です。ただ、時には、きちんと書く必要があり、WhoとするのかWhomとするのかの選択を迫られることもあります。そこで、その判別法が問題となります。

例えば、「この仕事を手がけるとして誰が一番適任だろうか」と相手に尋ねるべく、次のように書いたところで、このwhoはwhomかなと不安になったとしましょう。

Do you know who is best qualified to handle the task?

こういった場合は、この形容詞節の中でwho/whomと組合わさる動詞との関係で、he/sheを使えるならwhoで行きます。him/herを当てるべきならwhomを使います。そこで、X is best qualified toというフレーズのXをShe is best qualified to...とHer is best qualified to...で置き換えてみると、前者とすべきケースですから、whoを使うべきで、従って、このセンテンスはもとのままでいいとわかります。

次に、「今度採用するトレーダーはMBAを有してることを要する」と言うべく、次のように書いたところで、また心配になったとします。

The trader who we are going to hire is required to have an MBA.

このセンテンスは、元はと言えば、We are going to hire a trader. The trader is required to have an MBA.であるものにつき、第一文を第二文の主語であるThe traderの説明文として取り込んで「一本化」したものですから、We are going to hire she? her?というテストで決めます。答えは、明らかにWe are going to hire her.ですから、ここではwhoを目的語として使うときのwhomを入れて、The trader whom we are going to hire is required to have an MBA.とすべきものとなります。

ところで、ここでの形容詞節はどのトレーダーの話かを限定する不可欠の情報であり、しかも、関係代名詞が目的語である場合に当たりますから、関係代名詞を省略できます。実際にも、ビジネスライティングでは一単語でも短い方が好ましいとされますから、最終的には、The trader we are going to hire is required to have an MBA.とします。

こういった判別法で注意を要するのは、その関係節の中でのみ関係代名詞の位置づけを考えるということです。次のように「社長賞は期間中の売り上げが1,000万円を超えた者に授与される」という趣旨のセンテンスをひとまず考えたとします。

The President's Award will go to him who generated sales of more than 10 million yen during the period.

ポイントの1 こういった場合、関係節が説明しているhimに目がいってしまうと、go to heではなく、go to himという具合に目的格だから、whoの所もそろえてwhomにした方がいいような気がしてしまいます。しかし、関係代名詞を主格のwhoとするのか、目的格のwhomで行くのかは、どこまでも、who generated sales of more than...という関係節の中だけで考えるべき問題であり、そうとすれば、この部分はHe generated sales of more than...と書き換えることができる以上、結論はwhoとなります。

ポイントの2 もう一つ惑わされてしまうのが、I thinkやI believeといった挿入句が入っている場合です。例えば、「この仕事に一番向いていると私が思うのは彼女だ」と言いたい場合、まずは、She is the person who I think is best qualified for this task.と書くでしょうが、ここでI thinkという挿入句がこの関係節にとっては「異物」であることを忘れてしまうと、「待てよ、このwhoは動詞think の目的語だからwhomかな」と不安になったりします。しかし、このI thinkという部分は削除可能な部分であり、飽くまで本体は、who is best qualified for this taskです。そうとなれば、She/He is best qualified for this task.と言い換えることができますから、最終的には元の形のままでよく、She is the person who I think is best qualified for this taks.となります。

自分でテストしてみて、どうしても自信がない場合は、whomではなく、whoとしておく方が無難です。上で述べたように、フォーマルな文書でない限り、基本的にはすべてwhoで通していいとされているからです。

★ まとめ

関係節だの関係代名詞だのと面倒くさい感じがありますが、ビジネスライティングでは、上で説明した程度の知識で十分です。つまりどのXかを限定する必要のあるときはthatで、しかもカンマなし、そうでないときはwhichでカンマあり。人が出てくるときはwhoで、制限用法ならカンマなし、非制限用法ならカンマあり。そして、whoかwhomについては、基本的には気にしなくていいけれど、フォーマルな書面のときは、he/sheを使うべきか、him/herを使うべきかで判別するということです。

Trackbacks

Trackback URL: 

Comments

先生私の間違いでした。 whoはwhoseの見間違いでした。

申し訳ありません。

Hospice care helps people whose doctors ....でした。

たびたび申し訳ありません。 質問の英文はVOA で見かけたのですが、 関係代名詞のwhoが使われているということはwho
以下の主語か目的語が抜けた構造になっていると考えたんですが、 主語も目的語も抜けていないと思うのですが。 それともconfirmは人を目的語に取れるのでしょうか? 先生のお示しになった英文、She is the person who I think is best
qualified for this task. のように Hospice care helps
people who doctors confirm have only a limited time
to live. (that theyは不要) となるのではないかと考えました。 よろしくお願いします。 失礼します。

[返信]

ごめんなさい。よくわかりません。

先生、毎日ためになる記事有難うございます。 そしてご苦労様です。 次のような英文を見ましたが関係詞の使い方に問題があるように思いましたが間違いでしょうか?

Hospice care helps people who doctors confirm that

they have only a limited time to live. で that they は

いらないと思ったんですが。 こういう英語もあるんでしょうか?

よろしくお願いします。


[返信]

話し言葉ならthatを省略できますが、これはおそらく書き言葉の一節でしょうから、この場合は、thatはそのままで大丈夫です。一方、they はthat節の中の主語ですから、省略はできません。

コメントフォーム
Remember personal info?