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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2011年12月 8日

End Focus と End Weight について

ちょっとブログをさぼっている感じがあるので、罪滅ぼしのため、センテンスを構成するに当たっての常識であり、従って、リーディングのときにも重要なヒントをくれる、end focus(文末焦点)とend weight(文末重点)を取り上げます。

文末焦点と訳されている end focu sというのは、一番伝えたいこと、新たに取り上げる話はセンテンスの最後に持ってくるべしというルールです。聞き手/読み手が既に知っている「旧情報」は先に出しておいて、まだ知らない「新情報」はそのあとから出すということです。

また、文末重点と訳される end weight というのは、重苦しい要素はセンテンスのうしろの方に回せというルールです。述語動詞の前にやたらと単語が並ぶ頭でっかちのセンテンスは作るなということでもあります。

以下、これらのことをもう少し詳しく説明します。

再々、申しあげています通り、相手がどういうルールに基づいてコミュニケートしているのかを理解して、初めてゲームに参加できるのです。言い方を変えれば、相手がどういうルールで書いているのかがわかれば、おのずとリーディングの効率も良くなるというものです。その意味でend focusとend weightを理解するのは、ひとりライティングだけの問題ではなく、リーディングの力にも通ずる重要な話だと思います。

★ end focus

センテンスのレベルで、一番言いたいことは最後に持ってくるというルールが end focus というものです。何だかむずかしそうな概念という感じもしますが、言っていることは単純で、順序よく話したり、書いたりしようとすれば、おのずとそうなるに決まっているのです。

そもそも日本語の世界はハイコンテクストなので、いちいち口に出さなくてもわかり切っていることが多く、そのゆえに、読み手が責任をもって行間を読むという reader responsibility が通用しますが、英語の世界はローコンテクストゆえイチからきちんと説明していく必要のある speaker responsibility の世界です。ですから、「Xがね、ほら、何とかかんとか」と書き始めても相手にはさっぱりです。まずはXさんがどういう人なのかを相手に説明して、その上で「そのXさんがね」と続けるのが順序というものです。

このようにまずはわかっている話を先に出して、その上で新たな話を取り上げるのが普通ですから、聞き手や読み手も当然、大事なことは最後に方に出てくると期待しています。従って、本来大事なことのために取ってあるはずの位置にどうでもいいものが登場するとすっかり焦点がぼやけてしまう結果となります。

例えば、Legal Writing(West Nutshell Seriesの一冊で、今や3訂版になっているロングセラーです)は、弁護士がクライアント企業に対して「外部資本の導入計画に関しては私どもとさらなる協議をしてくださることが望ましいと考えます」と勧めている下りについて、

We recommend that the Company discuss with us further its plans for obtaining outside investment in the future.

と書いては駄目だ、センテンス上、最も大事な所にin the futureのようなどうでもいいフレーズを入れるぐらいなら削除しろと説いています。削除したくなければ、

We recommend that, in the future, the Company discuss with us further its plans for obtaining outside investment in the future.

というふうに、in the future を前の方に挿入することになります。

ちなみに、接続詞とのからみで言えば、becauseで始まる節は通常、こうした end focus の対象となるような新情報を内容としているものです。ですから、becauseで始まる節は、前に出さずにうしろに置いておくのが普通です。これに対して as や since が導く節の内容な通常、既知の情報なので、センテンスの頭に出ているものです。

★ おとぎ話と end focus

この end focus というのは名前こそ立派ですが、実は英語圏の子供たちにとっては、実になじみ深い構文なのです。というのは、「おはなしを読んで」と親に頼む子供達が一番最初に耳にするセリフは、日本語の「昔々」に相当するOnce upon a timeだからです。どういうことかと言うと、本来は、時間を示す副詞句であり、したがって、文末に来るべき once upon a timeが、一番伝えたいことを最後に回すという end focus との兼ね合いから、前に押し出されている格好のセンテンスを始終聞かされるので、こういった英語の作りには慣れているということなのです。

そもそも英語は、WHO? に対応する主部があって、次にWHAT?に対応する述部が出てきて基本セットという言葉です。ここでは once upon a time のようにWHEN?に対応する補足情報は最後の最後なのです。しかし、コミュニケーションの見地から、実際は、これが頭に出てきます。従って、「昔々、トットという少年がボッコという村に住んでいました」という話なら、A boy named Totto lived in a village called Bokko once upon a time.となるはずです。ところが、これがend focusということで、Once upon a time, a boy named Totto lived in village called Bokko.となります。

ところで、このend focus が求めるものは、単に一番伝えたいこと、従って新たに取り上げる話は最後に持ってくるというだけでなく、そういった新しい話は述語動詞のあとに回せということまで要求します。この点、上の文例では、a boy named Totto は聞き手にとっては、新たに登場する素材ですから、これを述語動詞のうしろに持ってくるとなると、このままでは駄目です。そこで何としてでも述語動詞のうしろに a boy named Totto が来るように、THERE を使い、there was a boy named Tottoという格好にしたてあげます。これでようやく述語動詞 was のうしろに来る形式が整いました。

完成した形は、

Once upon a time, there was a boy named Totto, who lived in a village called Bokko.

となります。

このように英語圏の子供たちは、普通の家庭で育っている限り、通常、新たに取り上げることがらとなる、相手に一番伝えたい大事な話は述語動詞よりあとの位置に入れるというしきたりに早いうちから触れていますから、大きくなってからライティングの授業で end focus の話を聞かされてもごく自然に使えるようになります。うらやましい限りです。

★ ビジネスライティングでの end focus

こうした end focus は何も子供向けの話にばかり出てくるわけではなく、実務英文ライティングでも頻繁に使うことになります。

例えば、英語のメッセージでは何かしら末文を入れますが、強いて何もないときは、形式を整えるために、「ご不明の点がありましたら、どうぞ遠慮なく電話またはEメールにてご連絡をください」という意味のセンテンスを入れるものですが、こういった場合の、このセンテンスはすなおに英語の本来の構文に従って訳せば、

Please feel free to call us or e-mail us if you have any questions.となります。

しかし、if you have any questionsということより、feel free to call us or e-mail usの方に重点があるのは明らかです。どちからを捨てろと言われたら、みなさん、迷わず前者を捨てるでしょうから、そのことからもわかります。何であれ、このように二義的なものでしかない、IFで始まる従属節の部分に大事なことを言うために使う「上座」を取られてはたまりません。そこで、これを前に出して、

If you have any questions, please feel free to call us or e-mail us.

とすることになります。

★ end weight

文芸作品などのようにわざとアクセントをつけるために変わったスタイルのセンテンスを使うなら話も違いますが、一般のセンテンス、特に実務文では、以下のような述語動詞の前に長たらしい節(主語と述語動詞を備えた単語のグループ)が入るのは格好が悪いとされます。

To bail out the ailing company would be a futile attempt.(破綻に瀕しているその会社を救済するのは無駄だ)

こういった場合は、普通、It を使って、

It would be a futile attempt to bail out the ailing company.

とします。従って、リーディングに際してのヒントとしては、この種のセンテンスがわかりにくかったら、to 不定詞の部分を主語にして頭の中で元の形に戻してみると意外と容易に解読できるということが言えます。

同じことは THAT 節についても言えます。従って、「われわれがもっと税金を払うといったことは馬鹿げている」と言う場合、

That we should pay more taxes is ridiculous.

というふうにも言えますが、普通は、述語動詞isの前に6単語も並ぶ、重苦しく、不格好なセンテンスを避けるため、ここでも It を使って、

It is ridiculous that we should pay more taxes.

とするものです。

このように述語動詞の前に重苦しい要素が入るのを避け、センテンスのうしろの方に来るようにするため It を利用しますが、受動態も end weight を実現するために使われます。例えば、

A white stretched limousine with smoked windows hit my dog.(窓がスモークドガラスの白い改造リムジンがうちの犬をはねた)

というセンテンスなどは、述語動詞の前に7単語も入っており不格好ですから、end weight というルールに即して直す必要がありますが、そこでこれを受動態を使って組み替え、

My dog was hit by a white stretched limousine with smoked windows.

とすると、簡単に解決できます。

★ まとめ

一番言いたいこと、新たに持ち出す話は述語動詞のあとに回せとする end focus や重苦しいものは述語動詞のあとに回せとする end weight は、あまり普通の文法書などでは取り上げていないようですが、実際上は知らないと困ると言えるぐらい一般的なことなので、ご自分が英文を書くときにも意識しておいた方がいいと思います。また、当然のことながら、リーディングに当たっても、役立ちます。

なお、普通、新たな話、あるいは一番言いたいこととなると、相手が既に知っていることを再度持ち出す場合に比べ、説明の手間もかかる分、単語数も増えますから、おのずと「重い」ものになりがちであり、従って、その限りでは、end focus の話は完全に重なりはしなくても、かなりの部分、end weight と重なるものがあると言えます。

[本稿は2005年にアップした記事を改訂したものです]

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Comments

こんにちは、いつも楽しく拝見させていただいています。

英語ではよく「誰々とともに」と言う表現でwith A,B,C and D(A~Dは具体的な人物名)が使われます。
先日、友達がこのような表現を含む文章を受け取りました。そして、彼の名前はDの位置、つまり最後に書かれていました。
すると、彼はend forcusの考えから、「一番最後に書かれてあることから、俺は、A,B,Cより文章の書き手から重要視されている。」
と言い出しました。そこで仲間内で、本当にそうなのかという事が話題になりました。
別の友達は、話し言葉なら思いついた順にA.B.Cと順に具体例を挙げていく。しかし、今回は書き言葉なのでDがある程度重要視されてるのでは
ないかと言い出しました。
私はというと、end forcus というのは、副詞や副詞句などの語句や節などの語順に影響をあたえるもの、つまり[with A,B,C and D]この副詞句
の文全体での語順に影響を与えるものであって、具体的なA.B,C,Dの順には、影響しないと考えています。

実際のところどうなのでしょうか?話し言葉と書き言葉でも違ってくるとは思いますが、具体例を挙げる際の順番も法則はあるのでしょうか?

よろしくお願い致します。

[返信]

わたしは Hirokiさんの考え方と同じです。

こんにちは。「最近のコメント」で本記事が上がっており、読ませて頂きました。
そこでtakeshi様の質問を読ませて頂き、私も同じような疑問を以前から持っていまして、思い切って質問させて頂きます。

He studied hard in the library this afternoon.のように、文末に複数の副詞句が連なるとき、例えば"in the library"
が文の伝えるメッセージの焦点、newな情報であった場合(*別に強調したいわけではない場合)には、Manner, Place, Timeの順が変わって、
He studied hard this afternoon in the library.と"in the library"が新情報により一番最後に来るのでしょうか?

KH回答 → An A-Z of English Grammar & Usageでは、On the whole, the adverbial with the most important information should be placed at the end. と言っていますから、This afternoon, he studied hard in the library. とするのが普通だと思います。

自分の持っている文法書には、「場所を表す副詞句」など単独の副詞句とend focusの関係は記述されているのですが、上記の例文のように、
複数の副詞句が文末に並んでる際、その副詞句内の順番とend focusとの関係が記述されておらず、長年疑問に思ってきました。
解説頂けたら幸いです。よろしくお願い致します。

また、takeshi様、質問を引用させていただきました。何卒お許し下さい。

解説ありがとうございます。しかし、スッキリしません。
「強調したいもの」と「情報価値の高いもの」はイコールではないのですか?
そもそも「情報価値の高いもの」というのは何なのですか?普通の文の動詞+目的語の部分になるのですか。

一般的に文末に複数の副詞を並べる際にはManner, Place, Timeの順で並べます。
例えば、
"He studied hard in the library this afternoon."
ココで、自分としては、「図書館で」ということを重要視しているとします。するとend focusより、
"He studied hard this afternoon in the library."
と後ろの順番を変える。
このような考え方は根本的に間違っているのですか?

今まで気にしていなかったのですが、end forcusという言葉を知ってからというもの、英作文を書く際に語句の
順番をどうしていったらいいのか混乱しています。

再度の質問になり恐縮ですが、何卒よろしくお願いします。

[返信]

End focusは書き手や話し手がそうしているという事実を形容しているだけで、要するに given を示してから new を出すという情報構造の話です。

挙げてらっしゃる例で特定の要素を抜き出して強調するときは、cleft sentenceという手法が使われ、

It was in the library that he studied hard this afternoon.

という形でlibraryを前面に出すのが普通です。

こんにちは。end focusという言葉は聞いたことはあったのですが、どういうものか分かっていなく本記事で勉強させて頂きました。

さて、「情報の価値が高いものを最後に持ってくる」というルールが end focusということですが、ここで疑問があります。
それは、文法書などでよく取り上げられる「倒置」の分野との関係性です。
文法書などでは、この「倒置」大きく2つに分けられていて1.疑問文 2.強調 と説明されています。そして今end focusと関係があるのは、2.強調です。そこには、強調するために、ある語句を文頭にだし、その結果倒置が起こることがある、と書かれてあります。

「倒置」:強調したいものは文頭へ
「end focus」:情報価値が高いものを最後へ

「強調したいもの」というのは、相手に「伝えたいもの」すなわち「情報の価値の高いもの、一番言いたいこと」になるのではないでしょうか?
すると「倒置」「end focus」言っていることが矛盾しているのではないでしょうか?

以下は、新興企業が携帯電話市場を席巻するという記事の中の倒置が起こった一文です。

"Only in the mid-2000s did it start making cell phones."

「2000年代半ばだ」→何が?→「それ(某企業)が携帯電話を作り始めたのは」という流れになると思います。

強調したいのは、2000年代半ば。情報の価値の高いものは、携帯電話を作り始めたということ。となるのでしょうか?

倒置が起こらない文
"It start making cell phones in the mid-2000s."と、
どのようなニュアンスの違いが生まれてくるのでしょうか?
この文なら、end focusの視点からin the mid-2000sが情報価値の高いものになるのでしょうか?
普通、副詞句は文末に来るものでend focusとか関係ないような感じがしますが・・・

質問が長くなり申し訳ございませんが、何回記事を読んでも理解できません。
よろしくお願いします。

[返信]

end focusは特別なことを言っているわけではありません。英語は頭でテーマを打ち出して、後半でコメントするのが普通で、そこでのコメントは新情報であるのが普通です。その意味で、「情報価値が高いもの」は普通、最後に出て来ます。そして、通常、情報価値が高い新情報については詳しく述べるのが一般的ですから、おのずと end focusはend weightと重なるものです。

onlyを使った倒置は、ここでの動詞 start との関係でその時期を一段と強調しているだけで、"started making cell phones というend focusは別段影響されていません。


2番目の例文ですが、最後の「in the future」は消し忘れでしょうか?

We recommend that, in the future, the Company discuss with us further its plans for obtaining outside investment in the future.

返信

失礼しました。打ち消し線が入っていませんでした。

こんにちは。迅速な回答をありがとうございます。「結論を先に」は文書やパラグラフ全体に、end weight はひとつのセンテンスに、よくわかりました。また、私の不格好な文が、すっきりと体裁良くなっています。ありがとうございます。
暇をみて、他の記事も少しずつ読んでいるところです。英語の落とし穴、落っこちまくっていました、、、。
このブログに出会えたことに感謝して、人気ブログランキングをクリックしたのですが、無効なリンクになっています、、。最新の記事のところでもう一度、試してみます。ありがとうございました。

[返信]

ごめんなさい。人気ブログランキング、もう参加していません。だいぶ前に告知したのですが、各ページからリンクを削る時間がなく、ご迷惑をおかけしています。

はじめまして。英文法を調べていて、このブログにたどり着きました。どのエントリーもとても勉強になり、今まで何となくしっくりこなかったこと、疑問だったことのいくつかが解決したりしました。(例えば、冠詞です、、、。いつも迷い、曖昧に使っていました、、、。)ありがとうございます。
質問なのですが、以前、英語は結論を先にいいなさい、と教わった記憶があるのですが、それとEnd Weight、どう解釈したらいいのですか?結論はすなわち一番伝えたいこと、なのではないでしょうか?

KH回答 →  「結論から先に」という流儀は、state and proveを反映させるということで、文書全体、あるいはパラグラフ全体について言うことです。これに対して、end weight はひとつのセンテンスの中の話です。

また、主語が長い頭でっかちの英文は良くないというのは、知っていますので、なるべく体裁のよい英文を書きたいと思っていますが、下記のような文は、どのように直したらよいでしょうか?
先生がおっしゃっているように、Itを主語にしても、受動態にしても、上手く書き変えられないのですが、ご教示いただければ幸いです。
- Our sales target of the second half of 2011 in retail is U$10 million in export, U$17 million in wholesale.


KH回答 → 以下のとおり書き換えることができます。

For the second half of 2011, our sales target in retail is U$10 million in export, U$17 million in wholesale.


何卒よろしくお願いいたします。
全部の記事を読んで勉強したいと思います。また、今後の更新も楽しみにしています。

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