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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年9月22日

未来進行形のゴリヤクは何か:文明人のたしなみとしての未来進行形

I will be leaving soon.(もうじき発つことになっています)といったWILL BE に動詞のING形をつけて作る未来進行形は、実際には、あとで説明するとおり、How long will you be staying in Japan?(日本でのご滞在の予定はどんな感じなのでしょう)に見られるような、話し手の心理的距離感を演出し、言い方を丁寧にするツールとして重要です。文明人らしくふるまう上でのたしなみの一つと言えます。

そこで、まずは通常の用法をざっと見てから、丁寧な言い方にするためのツールという側面に焦点を当てることにします。

★ 未来進行形を使う場面

第1に、未来進行形は、将来における一時的な行為を表すために使います。現在進行形と同じで、期間限定の行為、その時点で完了していない行為をとりあげるわけです。ただ現在進行形と違って、基準時が現在ではなく、将来の時点になります。

例えば、夜の8時頃に友達に、「あしたの今ごろ、何している?」と聞く場合であれば、

What will you be doing tomorrow night about this time?

となります。あしたの今頃という基準時を念頭に置いて考えた場合、そこで問題とされている行為doは、そのうち終わる行為ないし一時的なものですから、doingという形を使うということです。

答える方も、その時間は友達といつものように飲んでいると言いたいなら、

At that time, I'll be drinking with my friends as usual.

と答えることでしょう。

ここでAt that time, I'll drink...とすると非常に不自然な感じがします。ちょうどその頃は、dtinkという行為の最中だと言いたいのに、I'll drink、というその時点での咄嗟の返答として「これからどうするか」をいう言い方を使うのは場違いということです。

第2に、未来進行形は、遠い将来のことと言うよりは近い将来であることを強調するために使います。つまり「もうすぐ」「もうじき」といったニュアンスを強めるツールとして使うということです。この場合、二つポイントがあります。一つは、たいていsoonと一緒に使ってこの感じを出すということです。例えば、「もうじき、台湾に向けて発つことになっています」と伝えたければ、soonを入れてこう言います。

I'll be leaving for Taiwan soon.

そう言えば、新幹線内の案内放送などは、

We will soon be arriving at Dokosoko.

と言っていたような気がしますが、これも同じです。

ちょっと知っておくといいのは、この場合、WILLがあることで、「放っておけばそうなる」「特別な事情のない限り、そうなるはずだ」というニュアンスが出てくることです。We are soon arriving at Dokosoko.との違いはこの点にあるわけです。...are arriving からは単にそういう段取りになっているというニュアンスしか伝わってきません。

もう一つのポイントは、seeやhearを使った未来進行形は、soonが入っていなくても、この「もうすぐ」「もうじき」というニュアンスがあることです。ですから、相手を半ばおどかす感じで、

You'll be hearing from our attorneys.(うちの弁護士から連絡させます)

と言ったら、言われた相手は、1週間もしないうちにこの会社の弁護士から警告その他の嫌な申し入れが来るんだと理解するものです。You will soon be hearing...というふうに敢えてsoonを入れるまでもありません。

★ 丁寧な言い方にするための未来進行形

「放っておけばそうなる」「特別な事情のない限りそうなるはずだ」といったニュアンスがあることを利用して、未来進行形は言い方を一段と丁寧にするために使います。

例えば、

How long will you be staying in Japan?

という聞き方は、スケジュール上は何月何日に離日と決まっていたとしても、ニュアンスとしては、「この流れで行くと、いつごろお発ちになれそうだとお考えですか」という形で相手の予想を尋ねる格好になります。これに対して、

How long will you stay in Japan?

という言い方だと、相手の意図を問いただす格好になるので、「一体いつまで日本にいるつもりなんだ、はっきりさせろ」といった感じになり、当然、言われたほうもいい気持ちはしません。

言い換えれば、will stayだと意図という要素がはっきりしすぎるのに対して、will be staying だとそのあたりが曖昧になり、tentative(決めつけた感じでない、飽くまで暫定的な意味合いということ)という感じが強まるので、丁寧な言い方にしようという場合に便利なのです。

この点、Michael SwanのPractical English Usage (Oxford University Press)を読むと、人の予定を尋ねるにあたって未来進行形を使うことで、「既にお決めになっていると存じますが ...... 」という意味合いが強調され、かつ、「自分の方からとやかく言う気持ちは一切ないんですよ」という点もあわせて強調されることがよくわかります。

実際、同書が出している以下の3つの例を比べると、このニュアンスの違いが浮き彫りになってきます。(例文のstay inは、普通、外出をやめて、家にいることを意味しますが、来日してホテルに泊まっている相手に対して、外出せずに食事などをホテルの中で済ますという意味でも使えます)

Will you be staying in this evening?(今晩は外に行かれますか?)← もう決めていらっしゃるかと思いますが、よろしかったら、どういう予定にしているかを聞かせてください、という感じです。

Are you going to stay in this evening?(今晩は外出しますか?どうなさいますか?) ← まだ決めていないなら、ここで決めてくれと判断を迫る感じがあります。

Will you stay in this evening, please?(今晩はどうか外に出ないようにしてください)← 命令ないし指示という感じになります。

もう一つ、WILL+動詞だと相手に決めてくれという感じとなるのに、WILL BE+動詞のING形だと、既に決まっていることを取りあげる感じとなる例を挙げておきます。Richard FirstenとPatricia KillianのTroublesome English (Prentice Hall Regents)が出している例です。

(a) Will you come to our party on Sunday?
(b) Will you be coming to our party on Sunday?

このうちの(a)は疑問文の格好を借りた招待です。したがって、言われた方はその場で招待に応じてパーティーに参加するのかを決めることを要します。おおげさに言えば、決断を迫られるということです。ところが、(b)は、既に招待してある人に対して、大丈夫ですよね、予定どおり来てくださいますよねと確認する言い方になります。つまり、相手が決断済みであることを前提にものを尋ねる場合、will you be ...ingという形を使うということです。

★ まとめ

未来進行形のゴリヤクは、一般的用法よりも、むしろ丁寧にするためのツールとしての側面にあります。How long will you stay in Japan?と外国人に対して滞在予定を尋ねる人はいくらでもいますが、これは「一体いつになったら帰るんだ。予定をはっきりさせろ。まだ決めていないんなら、いま決めてくれ」と聞こえますから、私だったら「何だこいつ」とムカッと来ます。それが、How long will you be staying in Japan.と未来進行形を使うと、もうスケジュールは当然決まっていることでしょうし、それをとやかく言う気は全然ないんですよというニュアンスを醸し出しながら、「ちなみにご滞在の予定はお決まりで?」と遠回しに聞く格好になり、格段の差があります。形式上は紙一重の差ですが、内容上は雲泥の差なのです。

一部では英語と言ってもさまざまで、話し手によって使う英語が違う以上、細かなニュアンスの違い、用法の違いに神経をとがらす必要はないとされているようです。しかし、私の知る限り、教育のある人間の使う英語はまさに万国共通で、用法の違いがもたらすニュアンスの違いに対しても同じ感覚を持つものです。ある人は失礼な言い方と感じるが、他の人はそうではないといったケースは普通ありません。実際、おかしなもので、一定以上の教育を受けている人は、国籍が何であれ、民族が何であれ、教養を含め、感覚が似ているというのが私の経験です。

みみっちい商売ならいざ知らず、大きなビジネスを動かす人は一般に教育のある人間ですから、そういった人間が使う英語、さらにはそういった人が持つ感覚がどういうものかは知っておく必要があります。そうでなければコミュニケーションどころではありません。

なお文科省の肝いりで始まった「英語が使える日本人」育成計画の一環として、教科書にハンバーガーショップでの「お持ち帰りですか、店内でお召し上がりですか」つまりアメリカ英語でのTo go or for here? (イギリス英語では、Eat in or take away?)が載っているようですが、まともな人々が使う英語がどういうものかという視点が欠落しています。このままで行くと、公教育だけで勉強した人はハンバーガー英語しか話せず、ものの役に立たない英語のために時間と費用を無駄にし、その一方で、お金のある人だけがきちんとした英語を身につけられるという不公平が問題になってくるように思えます。


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Comments

こんばんわ。下記の文章で内容が把握できない箇所があります。

At that time, I'll drink...とすると非常に不自然な感じがします。ちょうどその頃は、何かをしている最中だと言いたいのに、I'll drinkだと、drinkという行為が終わっているという意味になり、ここではなじまないからです。
とありますが、I'll drinkというとこれから飲むぞという意思を表わし、その行為が終わっているという意味に取るのが難しいです。具体的にどういう意味が教えていただけますでしょうか。

[返信]

その後、勉強したことも織り込んで、書き方を変えました。いかがでしょう。

こんばんは。未来進行形を取り上げていただき、嬉しく思います。ポイントは、「話し手の心理的距離感を演出する」と「近い将来であることを強調する」のようですね。
ちなみに、昨日たまたま東北新幹線に乗ったのですが、車内アナウンスは、"We will soon make a brief stop at Dokosoko."でした。停車直前のアナウンスなのだから、未来進行形にしてもよいのでは、と思った次第です。
このように、英語のアナウンスのある乗り物に乗って、耳を傾けあれこれ思いを巡らすのも、結構楽しめますね。

[返信]

車内アナウンスのこと、気になりまして、日本語ページを指定して検索してみたところ、以下のようなところに当たりました。http://homepage2.nifty.com/fujii7/toki-exp/archives/announce/announce.html

たしかにあれこれ思いを巡らしたくなりますね。でも、こういうシミュレーションを通じてYou get a "feel" for the differences.ということなんだと思います。

日向

初めて書き込みします。記事、参考になっています。

will be?ingなんて、今まで英語はなしていた中で1回もつけてなかった気がします。外語大で英語習って仕事で使って・・・ってあるなかで使い方が全くさっぱりだったのだなーと思いました。How long will you stay in Japan?って違和感なく使ってましたね。

勉強になります☆

[返信]

勉強になりますなどとおっしゃってくださると励みになります。ありがとうございます。

日向清人

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