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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2014年7月 5日

準動詞の世界(ING形、ED/EN形、TO不定詞)

準動詞の章をひととおり書き上げましたのでご紹介します。原稿上は全部でA420枚を超えるので、ここでは、序論の部分だけをご紹介するに留めます。残りは12月に出る本の方でお楽しみください!

なお、ING形は普通「現在分詞」と呼ばれますが、以下のとおり、将来の話や過去の話にも使えるわけで、名称として不適切だと思いますので、ING形と呼びます。

I will be giving a presentation on Business English next month.(来月、ビジネス英語に関するプレゼンをする予定だ)

I was writing a sales report when my PC suddenly crashed on me.(ちょうど営業報告書を作成している時にパソコンが突如フリーズした)

ED/EN形も普通は「過去分詞」と呼ばれます。しかし、話が過去のことではなく、現在のときでも -ed 形です。それなのに「『過去』分詞」と呼ぶのは強引です。

I'm not satisfied with the product received. (受け取った品に満足していません)

話が過去のことではなく、将来のときでも -ed 形を使うわけで、それなのに「『過去』分詞」と呼ぶのも常識に反します。

The project will be funded using 25% government subsidies and 75% private funds. (このプロジェクトのための資金は、25%が政府の補助金で、75%が民間資金でまかなわれる予定だ)

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1-5 準動詞という「動詞もどき」の世界

コミュニケーションで交わされるメッセージを担う動詞は、「何が起きたのか」を伝えてくれ、合わせて「誰が/何が」を引き起こしたのか、あるいは主役なのか、さらには「いつのことか」をも教えてくれます。英語は常にテーマを掲げて、それにつきコメントするスタイルを取っており、その中でコメントを担う述語動詞は、その主体や時間的な位置づけまで明らかにしてくれるのが普通の姿です。

ところが、以下のように、見た目こそ動詞そっくりなのに、メッセージ本体との関係で従たる部品でしかなく、対応する主語がなく、時間的位置づけとも無縁というものがあります。

例えば、

We drank beer on the beach and sunbathed all afternoon. わたしたちは浜辺でビールを飲み、午後はずっと日光浴をした。

での動詞 drink(ここでは過去形 drank)は、対応する主語 We があり、drank という過去形から、以前の事実であることがわかります。これが言わば「正規の」動詞です。これが finite と呼ばれる、主語との関係が確定され、その意味で限定が加えられている動詞です。

これに対して、以下の例はいずれも動詞 drink が出てくるものの、(a)では、そのセンテンス全体につきWhere?に答える副詞の役を務めています。(b) では、主語を修飾する形容詞の役を果たしています。(c)では、名詞として働いて主語を担っています。要するに、いずれの場合も、正規の動詞とまるで違っており、主語がなく、時間的位置づけとも無縁の「動詞もどき」(以下、「準動詞」と呼びます)として働いています。主語が何であるかが示されておらず、また、時制も定かでないとなると、「何かが、どうした」という通常の英語のメッセージの一端を担う言葉ではない、つまり、相手に対して言葉を使って何か働きかけようとしているものではないということになります。(実はこれが準動詞の最大の特色です)。

(a) Drinking in the sun, we talked about old times. 日向に座って、わたしたちは昔話をした。

☞ ここでのdrinkは、drinking in the sunという分詞句を構成して、主節の主語weを修飾していますが、「誰が」「いつのことか」は主節に委ねてしまっており、分詞句だけを見ても何もつかめません。

(b) Drunk with shochu, the guy babbled on about collective self-defense. すっかり焼酎で酔っ払って、そいつは集団自衛権がどうのと訳のわからん話をし続けていた。

☞ The guy, drunk with shochu, babbled on...と書き換えることができるくらいで、冒頭のdrunkは主節のthe guyを修飾する分詞句を構成しています。この場合も、drunkだけからは「誰のことか」「いつのことか」がわからず、主節にすべてを依存しています。

(c) To drink is not a sin. 飲むのは悪いことではない

☞ ここでの述語動詞は is であり、To drinkという不定詞句は名詞の代用品として主語の役を果たしています。なお、ここでは、便宜上、TO不定詞を主語に持ってきましたが、英語の実際では、Drinking is not a sin.というふうに、主語の位置に「名詞化」した動詞を入れるときはING形を使うのが普通です。仮にTO不定詞を使いたいときも、It is not a sin to drink.というふうに、ITで始めた上、不定詞句を後ろに送るのが通常の英語感覚です。

上の例文を見てわかるとおり、準動詞の準動詞たるゆえんは、一見したところ動詞と似ているけれど、第一に、実質面から言えば、述語動詞と違って聞き手や読み手に対して話し手/書き手が直接発しているメッセージを担っておらず、センテンス内の修飾のための道具でしかありません。このあたりの感覚は、100年前に書かれたネイティブ向けの文法書では、準動詞は assert していない、つまり「書き手から読み手に対して何か言って働きかけるものがない」と説明されています。

第二に、上の (a) から (c) に出てくる準動詞は、普通は、つまり正規動詞として使われている場合は、We were drinking in the sun.(われわれは日向で酒を飲んでいた)、He was drunk.(彼は酔っ払っていた[BE動詞+ED/EN形による受動態])、He can drink a lot but can't hold his drink.(彼はたくさん飲めるけれど、酒に強いわけではない[すぐ酔っ払う])というふうに、補助動詞としてのBE動詞が先行して出てくるので、ある程度予想がつくのと対照的です。いきなり、drinking, drunk, to drinkという形で登場するので、独特です。他面、この独特さが述語動詞なのか、ただの準動詞なのかを見分けるための手がかりでもあります。

こうした準動詞の独自性は、「英語らしさ」あるいはコミュニケーションに供されている英語とはなにかを考える上で非常に大事です。

準動詞だけではコミュニケーションが成立しません。例えば、Seeing our grandfather in pain (祖父が痛みに苦しむ)といった、何が起きているのかを伝える述語動詞が入っておらず、相手に対する働きかけがないセンテンスの断片だと、話し手が相手に何を伝えたいのかが伝わってきません。その証拠に、このような断片的な情報だけではリアクションのしようがありません。イエスともノーとも、あるいは「そうだね」「そんなことはないでしょ」と応じようがないのです。準動詞だけの断片ではメッセージとして完成していないわけですから、当然です。

しかし、以下のようにメッセージの本体部分を担う述語動詞を入れればひとまず完成、相手も話し手が言葉でどう働きかけようとしているのかがわかります。

Seeing our grandfather in pain was having a bad effect on us. 祖父が痛みに苦しむ様子を目にしたことは、われわれに好ましからざる影響を及ぼしていた。

ご覧のとおり、was having を入れて完成することで初めて、「おじいさんが大変で、じぶんたちも大変な思いをしていた」と言いたいのだとわかり、話し手が言葉を使って相手にどう働きかけたいのかがわかります。当然、この域に達すれば、話し手も That's too bad.(それはお気の毒に)といったリアクションができます。

準動詞の特色の二は、形式上は対応する主語がなく、さらに、時制による語形変化がないことです。

When the singing came to an end, the audience gave a standing ovation. 歌が終わったとき、聴衆は、一斉に立ち上がって拍手を送った。

上の singing は came to an end というフレーズの主語を担っている名詞の代用品なので、正規の動詞のように対応する主語がありません。これは「何かが」「こうした、こうである」という通常のメッセージの一端を担うものではないということであり、読み手や書き手に向かって何か働きかけているものではないことを意味します。ここで働きかけているのは give の過去形 gaveです。

また、次の二つのセンテンスに見られるとおり、話が過去だろうと、将来のことであろうと、ING形の部分は何ら変化しません。いずれも、話し手や書き手からのメッセージと直接関係しない抽象的な話だからです。

When the singing comes to an end, I always reach for the "play" button to hear the song all over again. 歌が終わったところで、曲を最初から全部聞くために再生ボタンに手を伸ばしてしまう。

Her singing will never be forgotten. 彼女の歌声が忘れられることはないだろう。

このような準動詞は、具体的には動詞のING形(いわゆる現在分詞・動名詞)、ED/EN形(俗に言う過去分詞)、TO不定詞(TO+動詞の原形)の三種がよく使われます。

コラム:「不定詞」という訳語は、「未定性」という言葉を使う人がいるくらいで、何か腰の座らない感じの不思議な言葉です。しかし、英語本来の意味からは特定主語との関係が確定されていない「無限定詞」ということです。この点、1882年に刊行された有名な英文法書、ReedとKellogg の共著 HIgher Lessons in Englishでは、こう説明しています。As this form of the verb names the action in an indefinite way, without limiting it to a subject, we call it the Infinitive (Lat. infinitus, without limitation). (このような形態の動詞はそこでの行為を一定の主語との関係で限定せず、非限定的に指示するので、これを「無限定詞」[ラテン語で「無限定の」という意味のinfinitusに由来する]と呼ぶ)。してみると、「不定詞」という訳語、何か「住所不定・無職」を連想させるものすらあり、残念ながら「名が体をあらわしている」とは言いがたいシロモノです。


[以下省略]

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