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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年8月26日

BecauseとSinceとAsを使いわける:意外と深い使いわけのルール

理由を示すbecause、since、それにasについては、Collins Cobuild English Grammarなどは、If you are simply indicating the reason for something, you use 'because', 'since', or 'as'. (単に何かの原因・理由を示すのであれば、because, sinceまたはas を使います)と言っているぐらいですから、一般にどれを使ってもいいとされているようです。たしかに、いずれもWhy?に答えることができますから、同じと言えば同じです。

しかし、実際には使い分けがあり、それを知らないで無原則に使うと違和感のある英語を書いたり、話したりすることになりかねません。Michael SwanのPractical English Usage (Oxford)によると、becauseで始まる節は、聞き手/読み手がまだ知らない原因・理由を挙げるときに使うのが一般であり、したがって、新情報だということで、センテンスのうしろに置かれます。(「新情報はあとから出す」というルールについては、本誌5月22日号の「ライティングのツボとしてのEnd FocusとEnd Weight」をご覧ください)。ここで言う「新情報」というのは、相手が初めて聞く話であることから、そこで示される理由がセンテンス全体にとり一番大事なものになっているという意味です。

これに対して、asやsinceは相手が既に知っている話(旧情報)を持ち出す際に使われ、したがって、センテンスにおいて一番大事な話のためのスロットである後半部分を他に譲って、こうしたasやsinceで始まる節はセンテンスの頭に入っていることが多いのです。

なお、asやsinceは、どちらかと言うと、響きとしては硬い(フォーマル)感じがあるという点は知っておく価値があります。Swanが指摘するとおり、話し言葉なら、As it's raining again, we'll have to stay at home.という言い方をするよりは、It's raining again, so we'll have to stay at home.

この点、日本語がそこそこうまい外国人が妙なところで「ですから」を入れるのに通じるものがあります。子供の頃通っていた暁星という学校はフランス人の神父さんがいるところでしたが、「きょうは天気がいいですから、教室の外に出ましょう」などと言っていました。

何であれ、今回は、こうしたbecause、 since、そしてasの使い分けを確かめておきます。

★ becauseの使い方

一般に原因・理由を挙げる場合に、一番よく使うのがこのbecauseです。しかも、普通は、相手がまだ知らない話を持ち出すために使うので、新情報だということで、センテンスのうしろに置かれます。

Swanは、理由を挙げている部分がそのセンテンスにとり一番重要な新情報としてうしろに置かれるのはこういうケースだとしています。

Why am I leaving? I'm leaving because I'm fed up.(何で出て行くんだと?うんざりしているからだよ)

こういった場合は、I'm leaving since/as I'm fed up.とは言えないということです。

なお以前も何度か取りあげましたが、普通、becauseで始まる副詞節は、主節部分にとり不可欠な情報を内容としている限定用法の副詞節ですから、その前にカンマは打ちません。学生の英作文を読むとbecauseの前にカンマを打っているのが9割ですが、実際は、9割かたカンマを打ちません。

We are unable to offer you a quotation, because we have withdrawn from this market.(見積もりをお出しすることが出来ません。実は既にこの市場からは手を引いております)という具合に、because以下の内容が何だろうと本体部分の結論は変わらないようなケースでは、非限定用法ないし非制限用法の副詞節だということで、例外的にカンマを打つのですが、こういったケースは珍しいので、9割かたカンマは打たないとおぼえておいた方が確実です。

★ sinceの使い方

次のasも同じですが、sinceで始まる節は原因・理由を示すものばかりでなく、他に「いつから」といった時間的関係を示すこともあるわけで、Longman Grammar of Spoken and Written Englishによると、会話やニュースなどで出てくるsinceはもっぱら時間的関係をさすためのもので、sinceを原因・理由を示すために使うのは専門文献の世界に特有の傾向だとしています。

もちろん、会話の中で理由を示すためにsinceが使われないわけではなく、ただ傾向としては、理由よりも「いつから」といった時間を示すのに使うことが多いというだけです。

この点、調査結果で目を引くのは、同じように会話の中で理由を挙げるためにsinceを使うにしても、アメリカ英語とイギリス英語を比較すると、アメリカ英語の方が理由づけのためのsinceを使うケースが多いとされている点です。

★ asの使い方

このasも前項のsince同様、原因・理由を示すためだけに使われるというものではなく、manner(態様)やtime(時間的関係)を表すためにも使われるわけで、この点が原因・理由一本やりのbecauseと違っています。

前出のLongman本は、データの収集先に応じてカテゴリーを会話、フィクション、ニュース、そして専門文献の4つに分けていますが、4つのカテゴリーを通じて、as の3つの用法のうち、原因・理由を表すために使われるケースが最も少ないとしています。つまりasが使われている例を見ると、だいたいが、mannerを表しているか、timeを表しているかのどちらかだと言うのです。

ここでmannerを示すasというのは、こういう例です。
He always does as his wife tells her.(彼はいつも奥さんが言うとおりにしている)

また、timeを示すasというのはwhenとかwhileの代わりに使うもので、As we were discussing this, he suddenly said, "Is this necessary?" (この問題をみんなで話しあっている際に、急に彼女は「そもそも必要なの?」と言い出した)というふうに使います。

これもsince同様、asも別段、原因・理由を挙げるために使われないわけではありませんが、sinceとは逆にアメリカ英語とイギリス英語との比較では、イギリス英語の方がasを(他の用法と比べて)理由づけのために使うことが多いというデータになっています。

★ まとめ

ライティングの場合は特にそうですが、End sentences emphatically.(強調されるべきものはセンテンスの最後に)という暗黙の了解があります。

Bryan GarnerのLegal Writing in Plain English (University of Chicago Press)が取りあげている例を見てください。「3週間後、オハイオ州のコロンバスでメリンダ・ジャクソンは死亡した」と言っているだけですが、書き方によって、こんなに違ってきます。(こういう形式で例文を挙げると前後の文脈がわからないとどうのと言う人がいますが、原文自体、こうなっています。著者にしてみれば、訴状の一節をイメージしてくれということなのでしょう)

Melinda Jackson died three weeks later in Columbus, Ohio.
Melinda Jackson died in Columbus three weeks later.
Three weeks later, while visiting Columbus Ohio, Melinda Jackson died.

第1文は死亡地を強調していることになり、第2文は死亡の時期を強調していることになります。しかし、これでは、二義的なことがら前面に出る格好になってしまいます。これに対して、第3文は、一人の人間の死にスポットライトを当てており、一番わかりやすいとされています。ものを書き慣れ、あるいは読むことに慣れている人には、重要なことは最後に来るという感覚があるわけで、そういった感覚に応える形式になっているからベストだという論法です。もちろん、場合により死亡地を強調するケースもあるでしょうが、要はセンテンスの最後に来るものにスポットライトが当てられるのが普通だから、その点をわきまえて、そこに何を持ってくるかを意識しろということです。

このような感覚からすれば、相手方が知っていそうもない理由を挙げるときは、becauseを使って、センテンスのうしろにこの部分が普通ということになります。例えば、L. G. AlexanderのLongman English Grammarはこういったケースを挙げています。

Jim's trying to find a place of his own because he wants to feel independent.(ジムは独立したいので、一人暮らしのための場所を探しているところだ)

ここでのbecause以下の部分は、これを聞かされる相手にしてみれば、初耳でしょうから、やはりうしろにおいてスポットライトを当てるのが自然だということです。

これに対して、相手が知っているかも知れないことを挙げようという場合は、強調する必要もありませんから、asやsinceを使って部分を先行させてセンテンスを作ります。Alexander本は次のような例を挙げています。

As/Since you can't type the letter yourself, you'll have to ask Susan to do it for you.(自分でタイプすることができない以上は、スーザンにやってくれと頼むしかないでしょう)

したがって、何かを説明するに当たり、その理由がすごく大事なときは、becauseを使って、うしろに置き、そうでないときは、asやsinceを使って、本体部分の前で理由を述べるのが一般的パターンだということになります。

ただ、話し言葉だといちいちセンテンスをasやsinceで始めると、何か構えているような、おおぎょうな感じがする可能性もあるので、できれば、..., so...という形に組み替えた方が無難だということです。

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Comments

はじめまして。
いつも楽しく勉強させていただいています。「話し言葉でのbecause」から飛んできて拝読致しましたが、目からウロコでした。

私は職場で大半の時間を翻訳して過ごしているのですが、さっきはbecause使ったから、今度はas、次はsinceでいっちゃおう!という実に軽いノリで(?)深く考えることもなく今まで来てしまいました(10年!)社内にアメリカ人駐在員が数名いた時代もありましたが、添削してもらう中で指摘されたこともなく、先生のこの記事(?)に出会わなければ、これからもそんな調子でやっていたと思います。(ですので正しく使えていたのかどうかもわかりません。何せ意識していないですから。)

先生のブログを拝読するたびに知らなかった事を知ることができ本当に感謝しています。ちなみに先生の御著書も3冊ほどデスクに「飾って」あります。(ピカピカです!)

これからも先生のブログ楽しみにしています。 人気ブログランキングのページへ何度か行ってみたものも未だに投票の仕方がわかりませんが、又そちらもトライしてみます。

[返信]

拙著をお買い上げくださり、ありがとうございます。どうぞピカピカのままにせず、まっくろにしてください!

人気ブログランキングは4000人近く訪問してくださっても、わざわざ投票してくださるような方は毎日2、3人なので、撤退しました。

どうぞこれからもよろしくお願いします。

なお、ブログ記事にするほどでもない半端な英語情報はTwitterの方でポストしていますので、よろしかったら、ご覧ください。hinatakiyotoで検索してくださると出て来ます。

かなり英語初心者からの質問なんですが・・
お店の名前や会社の名前に「SINCE 19○○」みたいな表記がよく使われていますが、これは19○○年に設立、という意味ですよね。
これを人の誕生日の日付にして、
例えば、since 1999.1.1で、1999年1月1日に生まれました、という使い方をしてもおかしくないでしょうか?
生い立ちビデオを制作中で、いい表現が思いつかなくて悩んでいます。
教えていただけたら幸いです。

[返信]

こんにちは。よくお店の入り口で見る Since 1919 は、何年以来営業しているということで、時点ではなく、時間を表す言い方です。ですから、誕生日のような時点を言いたいときは、使えません。1999年1月1日に生まれたとい言いたい場合は、Date of birth: January 1, 1999 という格好にするのが普通だと思います。ただ、「生い立ちビデオ」の場合に英語でどう書くのが普通なのかは承知しておりません。うちの子どもたちはいずれもペットショップから生後三ヶ月で直接来てしまいましたから。

丁寧なご返信、ありがとうございます。
 
 なお、forには補足の節であるという意味があるとは知らず、勉強になりました。この点でもお礼申し上げます。

こんにちは。
 以前、「構造改革」の定義について、一言差し上げた者です。

 この記事を拝見して気になったのですが、貴ブログでは、becauseとforの使い分けについては書かれていないようですね。
 実は、この2つは質的に違う理由を示すのだそうです。それは、becauseが心理的・物理的原因を表すのに対し、forが論理的な原因を表すために用いられるのだそうです(斎藤兆史『英語達人塾』(中公新書)、51頁)。 例文として、

 The river has risen, because it has rained much of late.
 It must have rained much of late, for the river is so high.
I am not able to begin the work at once, for I am about to start on a journey.

が挙げられています。
 なお、斎藤兆史氏は、これら全てを、斎藤秀三郎『実用英文典』から引っ張ってきているそうで、同書の説明を「なんという明快な説明だろうか。外国の英文法書の中にも、これだけ分かりやすく接続詞forの用法を解説しているものは多くない」と評価しています。
 おそらく、この記事を書かれるにあたり、SwanのPractical English Usageを参考になされたとのことですが、私の持っているthe third edtionでは、「as, because, since, and for」として、これら3つの用法について書かれてあります。が、Swanですらも、becauseとforの上記の違いは、書いてありません。
 ただし、「物理的」なものが「論理的」であることとスッパリ区別できるかと思うと、疑問に残る説明なのですが......。
 先生はどう思われますか。


 ところで、もしよろしければ次の話もどう思うかお聞かせください。
 上記の話とは全く無関係なのですが、'/'(「スラッシュ」といってよいのでしょうか)について疑問があるのです。
 スラッシュの前後が、一語のみの場合、単語とスラッシュと単語の間には、スペースが全くありません。例えば、'There were almost/nearly a thousand people there.'(先述した、Swanの同書、p.35)。この場合、筆者は、almostとnearlyを言い換えられると考えているようです。
 が、単語が2語以上となるときにはスペースが必ずあるように思えます。例えば、'She's almost never / hardly ever at home.'(同書、p.36)。この場合、almost neverとhardly everを筆者は、言い換えられると考えているようです。
 この、いわば、「スラッシュは、その前後において一語以上のものを区切っておく場合、空白を前後に入れて使用する」というルールがあるのでしょうか。
 ちなみに、文法書をいくつか読んでも、こんなことは全く載ってていませんでした。結構重要な、ライティングの知識になりそうなのですけれども。

[返信]

ForとBecauseについて: 「becauseが心理的・物理的原因を表すのに対し、forが論理的な原因を表すために用いられる」という話は初耳です。こういった感覚で使い分けている英語の使い手がいるとしても、一般的な感覚ではありませんから、相手にその思い入れが伝わるか疑問です。普通に英語を使う人の感覚は、forは改まった感じがあり、したがって、話し言葉としては使われないという程度だと思います。(ですから、英英辞典には、forの項によくformalというラベルがつけてあります。)あとは、せいぜいが、forが使われるケースでは、先行する部分が一番大事で、for以下の理由を示す節は補足と言うか、つけたり的なおもむきがあると説明する例があるぐらいでしょうか(Wood他のCurrent English Usage)。

スラッシュの用法について: スラッシュの前後にスペースを入れるのは、見やすくするため、音声学の教科書などで、単語やフレーズに区切りを入れるケースぐらいで、原則はスペースなしです。たしかに、ご指摘の部分、スペースが入っていますが、これは、見やすくするためと解されます。

とってもタイムリーな説明をありがとうございます。
ちょうど、通訳学校で「because/since/asの使い方を復習してきなさい」と言われたばかりなのです。先生のご説明+手元のPractical English Usageを熟読しました。そして、ずっと使い方に自信のなかったas/ when/whileが次の項目にあるのも発見し、ここも熟読。十把一絡げで使っていた自分を諌めました。

[返信]

偶然とは言え、うまい具合にニーズに応えることができ、うれしく思います。あの、Practical English Usage、まさにかゆいところに何とやらでいい本ですよね。

日向

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