辺野古:農相、知事指示を「執行停止」 県、法的措置も
毎日新聞 2015年03月30日 10時06分(最終更新 03月30日 11時59分)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、翁長雄志(おなが・たけし)知事が出した移設作業の停止指示は不当として沖縄防衛局が求めた指示取り消しの審査請求で、林芳正農相は30日、裁決を出すまでの間、知事の指示の効力を停止する「執行停止」の措置を正式決定し、防衛局と県に通知した。執行停止の理由について、「全ての移設工事が中止されれば基地移設が大幅に遅れ、日米間の外交・防衛上の回復困難で重大な損害が生じる」とした。
農林水産省の職員が防衛局と県庁をそれぞれ訪れ、林農相名の決定文を手渡した。「普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の継続による損害」も、執行停止の理由に挙げている。
執行停止により、防衛局は移設作業の継続が可能になる。農相は今後、審査請求の内容について審理を進め、知事の指示を取り消すか、防衛局の請求を棄却するかの「裁決」を審査結果として出す。裁決の期限は行政不服審査法に定めがない。
県側は執行停止に強く反発しており、裁決で知事の指示が取り消された場合、訴訟などの対抗措置に踏み切る可能性が強い。
翁長知事は今月23日、防衛局が現場海域で許可なく岩礁破砕をしている可能性が高いとして、辺野古沖での移設関連作業を1週間以内に停止するよう指示した。また防衛局が指示に従わない場合は移設作業の前提となる「岩礁破砕許可」を取り消す考えも表明した。
一方、防衛局は県が問題だと指摘する海底へのコンクリート製ブロック設置について、「許可手続きの対象外だと県から説明を受けていた」とし、「工事の停止指示は違法だ」と反論した。
県の行う岩礁破砕許可は、水産資源保護法に基づく県漁業調整規則を根拠とする。防衛局は24日、行政不服審査法に基づき水産資源保護法を所管する農相に審査請求を行い、裁決が出るまでの間、知事の指示の効力を停止するよう申し立てた。
林農相は国会内で記者会見し、「執行停止の要件該当性などについて慎重に審査をして決定した」と述べた。執行停止により沖縄防衛局の工事が続くかどうかについては「防衛省の判断になる」とした。また政府側の防衛局の請求を、同じ政府側の農相が判断することに一部で批判が出ていることについては「国が事業者である場合も岩礁破砕許可が必要で、私人が事業者である場合と変わりがない」と述べ、問題はないとの認識を強調した。【江刺正嘉】