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ホンダ、“心昂ぶるHeart Beat Sport”新型軽自動車「S660」

軽初の「アジャイルハンドリングアシスト」「6速MT」採用。S2000以上のボディー剛性を実現

2015年3月30日発表、4月上旬発売

198万円〜218万円

 本田技研工業は3月30日、オープン2シーターの新型軽自動車「S660(エスロクロクマル)」を4月上旬に発売すると発表した。価格は198万円〜218万円。

モデル エンジン 変速機 駆動方式 価格
α 直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ 6速MT 2WD(MR) 2,180,000円
CVT(7速モード付+パドルシフト) 2,180,000円
β 6速MT 1,980,000円
CVT(7速モード付+パドルシフト) 1,980,000円

 S660は、2010年に本田技術研究所の50周年を記念して実施された新商品提案コンペでグランプリを獲得した軽スポーツカー企画が出発点になったモデル。提案者であり、2007年に同社にモデラーとして入社したばかりの若手社員である椋本陵氏が開発責任者を務め、まず2011年11月に開催された第42回東京モーターショー2011に、次世代電動スモールスポーツコンセプトモデル「EV-STER(イーブイ スター)」として出展され初公開された。

 2年後の第43回東京モーターショー2013では、次世代スポーツコンセプト「S660 CONCEPT」に姿を変えて再登場。会場で行われたプレスカンファレンス内で伊東孝紳社長から「2015年の量産化」が明言され、今回の発売となった。

 開発におけるグランドコンセプトは「心昂ぶるHeart Beat Sport」。乗って楽しい人とクルマの一体感、見て楽しいスタイリングといったスポーツカーとしての直球の魅力により、ベテランドライバーからビギナーまで末永く愛されるクルマを目指している。

 エクステリアデザインは「ENERGETIC BULLET」をキーワードに、ボディーの四隅に配したタイヤがしっかりと踏ん張り、ロー&ワイドフォルムによって高い運動性能を予感させるスタイルを追求。また、オーナーから長く愛されるクルマとなるべく、クレイモデルの作り込みを重ねてボディー表面の微妙な抑揚やラインなどにこだわり、「温かみと色気のあるボディーの質感」を実現している。

小さな弾丸をイメージさせる「ENERGETIC BULLET」が外観デザインのキーワード

 ボディーカラーは、コンセプトカーのS660 CONCEPTからイメージを受け継ぐテーマカラーの「プレミアムスターホワイト・パール」、S660の源流ともいえるビートで使われていたカーニバルイエローをS660のスタイリングに合わせてアレンジした「カーニバルイエローII」、輝きのあるパール感で新鮮さを演出する「プレミアムビーチブルー・パール」の新色3色を合わせた計6色。内装色はブラックを基本に、プレミアムスターホワイト・パールのαグレードでは運転席のシートをライトグレー、助手席のシートをダークグレーとする「アシンメトリーカラー」もラインアップしている。

新色でテーマカラーの「プレミアムスターホワイト・パール」(3万2400円高)
「プレミアムミスティックナイト・パール」(3万2400円高)
「アドミラルグレー・メタリック」。βグレードは上段の3色のみを設定
新色の「プレミアムビーチブルー・パール」(3万2400円高)
新色の「カーニバルイエローII」
「フレームレッド」。αグレードは下段3色も含めた全6色から選べる

 このほかに外観では、ホンダのデザインアイデンティティである「ソリッドウイング・フェイス」のフロントマスクにLEDヘッドライト+導光タイプLEDポジションランプのヘッドライトユニットを採用。ドアミラーもS660 CONCEPTのデザインテイストを再現する薄型タイプとして、シャープなルックスと空力性能を手に入れている。また、スマートキーシステムの解錠/施錠のスイッチをドアノブの内側上部に設置して目立たないよう工夫している。

 ボディーサイズは全車3395×1475×1180mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2285mm。車両重量とJC08モード燃費は、6速MT車が830kgで21.2km/L、CVT車が850kgで24.2km/Lとなる。

外観デザインのアクセントにもなり、優れた配光性で夜間走行をアシストするLEDヘッドライトを採用。ライトユニットの下側に導光タイプのLEDポジションランプを配置する
薄型ドアミラーは空力性能に優れ、エクステリアデザインにシャープな印象を与えてくれる
スマートキーシステムの解錠/施錠のスイッチはスタイリングに影響しないよう、ドアノブポケットの内側上にひっそりと配置
S660のインテリアイメージイラスト

 インテリアは走りを楽しむための空間としてドライバーの操作性を追求しながら、スポーツカーとして乗る人の気分を盛り上げる空間演出にも注力。このクルマのハイライトの1つであるロールトップを取り外したオープンエアドライブでは、ルーフレールから乗員の視点までの距離を可能な限り拡張し、コンパクトなボディーながらホンダがかつて販売していた「S2000」同等の開放感を実現している。

 インパネはステアリングを中心に、センタークラスターからシフトまわりまでをドライバー方向に向けてラウンドさせ、コックピット的な雰囲気を演出。助手席側のダッシュボードにはソフトパッドを使って上質感を高めている。メーターパネルにはホンダの軽自動車として初めてデジタル式のスピードメーターを使用。外周部分にタコメーター、内側にデジタル表示のスピードメーターを組み合わせ、大型1眼式のコンビネーションメーターとなっている。これにより、インテリアデザインにマッチするコンパクトなメーターパネルながら、走行中に必要な情報が瞬時に読み取ることが可能で、ホンダでは「瞬間認知メーター」とネーミングしている。

 また、メーターパネルの左サイドに、6速MT車では「SELECTスイッチ」、CVT車では「SPORTスイッチ」を設置。スイッチを押すことで通常状態の「DEFAULTモード」からモードが切り替わり、6速MT車の「SELECTモード」ではメーターパネルの照明がレッドに変更。さらにメーター左側の瞬間燃費表示がブースト表示に変更される。CVT車の「SPORTモード」では「SELECTモード」の内容に追加して、ドライブ・バイ・ワイヤの設定を変えてアクセルペダルの操作に対するアクセル開度を高め、変速制御も切り替えてエンジン回転数と車速の関係をリニアなものにする。

ドライバーシートを包み込むようなコックピットデザインのインパネ。横幅の狭いセンタークラスターには「iPod対応USBプレーヤー/FM・AMチューナー」を純正装着
助手席の前方にはソフトパッドを使ったパネルを配置。エアコン吹き出し口やドアトリムなどではスポーティさを演出している
ステアリング径はホンダ車で最小となるφ350mmとして操作にクイック感を与え、乗降性を確保するため下部を水平にした「Dカット」を採用。リム上の凹凸の検討を重ね、本革ステアリングのステッチも手触りのよい縫い方を選んでステアリングの握り心地を高めている
「瞬間認知メーター」と呼ばれるメーターは、中央にホンダ軽自動車初採用のデジタルスピードメーターを備え、外周にタコメーターを配置して視認性を高めている
α 6速MT車のインパネ(左)とβ 6速MT車のインパネ(右)。αで本革巻きのステアリングとシフトノブがβでは樹脂製になるほか、メーターベゼルやドアハンドル、エアコン吹き出し口の加飾などがメタル調から樹脂のみになる
メーターパネルは「DEFAULTモード」(左)からスイッチ操作でモード変更。6速MT/CVTともにメーターがレッド照明になり、左側の瞬間燃費表示がブースト表示となる。またエンジン回転数がレブリミットに近づくとメーター外周がフラッシュしてレブインジケーターの役割も発揮する
メーターパネル左側にあるCVT車の「SPORTスイッチ」。6速MT車ではスイッチ表面の文字が「SELECT」になる
メーターパネル右側には赤い「プッシュエンジンスタート/ストップスイッチ」を配置
ロールトップを取り外した状態
ロールトップは車両前方側にある3個所のロックを解除し、側面から巻くように取り外す。丸めたロールトップはフロントフード下にあるユーティリティーボックスに収納可能
ロールトップを車内側から見たところ。長辺となる前後方向には金属製ワイヤーが入っており、ロックを掛けるのと同時にテンションが働いて雨風の侵入を防止する
ホンダが測定したアイポイントとルーフレールの距離一覧。ホンダの歴代オープンモデルでS2000同等の開放感があるとしている

 シートは、αで本革×ラックス スエードを表皮に使うスポーツレザーシート、βでメッシュ×ファブリックを表皮に使うスポーツファブリックシートを採用。シート形状もスポーツシートとして新設計し、大きな旋回Gがかかる状況下でも正確な運転操作ができるようにホールド性やフィット感を向上。座面や背もたれに乗員の身体が接する面積をできるだけ大きくすることで体圧分布を分散させ、サポートの張り出しを大きくしたりクッション硬度を上げることなく、しっかりとしたホールド性とロングドライブ時の快適性を並び立たせている。

 このほかに車内の装備では、オープンエア走行を満喫してもらえるようフルオートエアコンを全車に標準装着。エアコンの気流制御にも着目し、助手席前方に「ミッドモード」対応のエアアウトレットを新設。膝から腰、上半身まで温風/冷風が流れるよう設計して快適性を高める。全車にオプション設定となる「センターディスプレイ(スマートフォン連携ナビ対応オーディオ)」では、純正ナビアプリである「インターナビ・リンク」と連動してナビ画面を表示するほか、車両の前後左右Gやアクセル&ブレーキ操作量を可視化する「Gメーター」に対応。さらに後方視界をサポートするリアカメラの映像も表示する。

αの運転席。ヒップポイントも可能な限り下げ、低いアイポイントによる車速感、クルマの挙動変化をダイレクトに体感できるゴーカート感覚を追究している
αではステンレス製スポーツペダルを標準装備。6速MT車ではヒール&トゥがしやすいようペダル配置している
オープン時には外気が車内に入ったり、直射日光にさらされるため乗員の身体の前方が温度変化しやすいことから、フルオートエアコンに身体の表面上に気流を当てる「ミッドモード」を設定
電動開閉することで、車両後方にレイアウトするエンジンのサウンドを楽しんだり、車内に入る外気の量を調整できる「パワーリアウインドー」
純正装着する「iPod対応USBプレーヤー/FM・AMチューナー」のチューニング、曲送りなどの操作はステアリングスポーク上のスイッチを使用。周波数などの情報はメーターパネル左側に表示する
センターコンソール前方にUSB、外部入力、12Vパワーアウトレットなどの端子を備える
キーロック可能なグローブボックス
フロントコンソールトレイにはLED照明付き
助手席のシートバックポケット
車内の各種ポケット類
メーカーオプションの「センターディスプレイ(スマートフォン連携ナビ対応オーディオ)」は、反射・映り込み防止タイプの6.1インチディスプレイを採用
運転状況をビジュアル的に表現する「Gメーター」
リアカメラの映像にはガイド線も表示する

軽自動車初の6速MT搭載車はエンジンの最高許容回転数を700rpmアップ!

 キャビン後方にミッドマウントするエンジンは、ホンダの軽自動車「Nシリーズ」に搭載されているS07A型の直列3気筒DOHC 0.66リッターターボをベースに、S660での搭載に際して専用チューニングを実施。最高出力47kW(64PS)/6000rpm、最大トルク104Nm(6.6kgm)/2600rpmというスペックに変更はないが、6速MT車では自分でシフトチェンジしてエンジン回転を積極的に楽しんでもらうため、強化バルブスプリングの採用によってエンジンの最高許容回転数を高め、従来型7000rpmに700rpm上乗せした7700rpmに設定。強化バルブスプリングの採用は変速ミスをした場合にも壊れにくくなる効果も生み出すという。さらにターボチャージャーもハイレスポンスの専用品を組み合わせており、アクセル操作のパーシャル状態から踏み増したときに力強くトルクを発生させるセッティングとしている。

 軽自動車で初搭載となった6速MTは、1速〜5速のギヤ比をクロスレシオ化し、走行状況に合わせてエンジン回転数をトルクバンド内にキープしやすくした。また、2速のギヤ比ではビートの1速と同等の加速性能を持ちながら、7700rpmまで使い切ると75km/hまで車速が伸びる設定。半面で6速ギヤでは100km/h巡航時のエンジン回転数を3000rpm程度に収め、巡航走行中の静粛性と燃費性能を高めている。シフト操作の気持ちよさも追求し、ステアリングを握った状態から肘の角度をそのままに操作できるレイアウトを見いだし、2速ギヤにWコーンシンクロ、3速ギヤに摩擦面にカーボン材を設置したカーボンシンクロを採用。高回転時のシフトアップでもスムーズに変速操作できるようにしている。

 また、CVTでは「CVTは燃費のものというイメージを打ち砕きたい」という開発担当者の思いから、無段階変速の特徴を生かして「DEFAULTモード」「SPORTモード」の2種類のセッティングをスイッチ操作で切り替える専用セッティングの「G-Design Shift」を用意。メーター照明がレッドになる「SPORTモード」では、キックダウン時に加速Gが鋭く立ち上がり、一定の加速Gを長く持続する設定で爽快感のあるフィーリングを実現。さらにエンジン回転数と車速がリンクしながら高まるようになっている。一方、6速MTは「走りのすべてをドライバーがコントロールする」との観点から、スイッチ操作による変更はメーター照明など視覚面の演出に止めている。

エンジンはNシリーズでも採用されているS07A型だが、スポーツ走行を念頭に大型ラジエターを使い、高い旋回Gが長く続いてもオイルパン内のエンジンオイルが偏って潤滑に問題が出ないよう、オイルパンを斜めに深くして油圧が確保できるようにしている
自然吸気エンジンを搭載したビートとの特性比較
Nシリーズから12%軽量化したターボチャージャー。アクセル操作に対するレスポンスを高め、コーナーリングからの立ち上がり加速で力強いトルクをすばやく発生させる
Nシリーズでは消す方向に注力しているブローオフバルブの圧力解放音を敢えて強調。ミッドシップレイアウトで専用設計となるマフラーも、インシュレーターの使用などによってスポーツカーらしい音質を実現する
軽自動車初搭載という6速MTは「意味もなく動かしてみたくなるほどの気持ちよい操作感覚」を追究。シフトストローク(前後)とセレクトストローク(左右)をバランスさせて扱いやすくしたほか、シフトリンケージの剛性を確保して操作時の手応えに節度感を与えている
2速ギヤに採用するWコーンシンクロは、摩擦面を2面構造にして差回転の同期時間を短縮する機構。3速ギヤのカーボンシンクロでは摩擦面にカーボン材を貼り付けスムーズさを高めている
6速MTのギヤレシオ設定
幅広いユーザーにS660の走りを楽しんでもらえるよう設定されたCVT。スポーツカー専用設定の「G-Design Shift」を採用し、ステアリングに装着されたパドルシフトで7速マニュアルモードも利用できる
S660のホワイトボディー

 ルーフに脱着式のロールトップを採用するタルガトップスタイルのボディーは、直線と曲線で構成する強靱さと軽量さを合わせ持った「一線入魂ボディ」というコンセプトを採用。現代的な部材である高張力鋼板を各所に使い、ボディー両サイドのサイドシルとセンタートンネルの3本のラインを直線的に車両前後で連続させ、大断面化のためサイドシルの一部は外装パネルとしての役割を兼ねる構造。センタートンネルは一般的なコの字型の開口断面構造ではなく、センタートンネルを2階建て構造にして上部を閉断面化し、剛性を高めている。また、ホワイトボディーに対して追加する補強部材についてもフロア下を中心に効果的に配置。車両前後でねじり剛性を確保する床下V字ブレース、センタートンネルの左右をを3個所で接続するセンタートンネルバー、フロントタワーバーとリア・ダンパーバーなどを採用し、静ねじり剛性はボディー剛性の高さでも定評を得たS2000以上の数値を実現している。

 強固なボディーは万が一の衝突時にも有利に働き、コンパクトなオープンボディーながらしっかりとキャビンを守る。ロールオーバー(横転)対応として北米の法規定を参考にしつつ、ホンダ独自の基準を策定。フロントピラーとセンターピラーに補強材としてスティフナーを設定し、横転時に乗員を保護する。また、衝突時の対策として、さまざまな乗員の体格や乗車姿勢に対応できる「内圧保持式エアバッグ」を新開発。展開時にエアバッグ横から排気を行うベントホールの形状を、常時開口している円形からスリットに変更。乗員が接触するまでは展開後も内圧を保持するというスタイルで、エアバッグが開いてから乗員を受け止めるまでの時間が長くなったときでも必要な圧力を保てる。この新型エアバッグは、S660以降に発売されるホンダのニューモデルにも導入を予定しているとのことだ。

 このほかに安全装備では、フロントウインドー内に設置したセンサーで前方の状況をチェックし、30km/h以下の走行時に自動ブレーキの作動で衝突回避・被害軽減を行う「低速域衝突軽減ブレーキ」、障害物があるにも関わらず走り出した場合にエンジン出力を抑制する「誤発進抑制機能」を持つ「シティブレーキアクティブシステム」を全車にオプション設定。急ブレーキ時にハザードランプを高速点灯させる「エマージェンシーストップシグナル」は全車標準装備となっている。

ボディー剛性の開発では、CAE(コンピューターエイドエンジニアリング)による解析と実走行テストを繰り返し実施。S2000以上という静ねじり剛性の実現によってステアリング操作に対する初期応答やコーナーリング中の安定感、リアの安定性などを手に入れている
S660ではセンタートンネルの上にコの字型のセンタートンネルを重ねて平断面化
サイドシルは引張強度590MPaの高張力鋼板で一体成形。側面の一部がボディーの外装を兼ねるほどの大断面設計となっている
車両前後の床下V字ブレースやセンタートンネルバーといった補強部材も、「一線入魂ボディ」のコンセプトを受け直線的でシンプルな形状となっている
前後にタワーバーを装着するほか、縦方向に筋交いとして設定するリア・ダンパーバーで車体剛性を引き上げる
前面衝突に対応する部材。フロントホイールハウス・アッパーメンバーをドアロードパスと直線的にレイアウトすることで、スポーツカーらしい低いノーズでも衝突時の安全性を確保する
後面衝突時にエンジン上のリアフードがキャビンに侵入しないよう、リアフードストッパーブラケットを設定
前後のピラースティフナーでロールオーバー時にキャビンを守る。ドアアッパービームは引張強度1180MPaという非常に強度の高い高張力鋼板を使ってプレスビームを形成
新開発の「内圧保持式エアバッグ」はベントホールにスリットを使い、乗員保護に必要な圧力を一定に長く保持できるのが特徴
先進安全装備の「シティブレーキアクティブシステム」は全車オプション設定
S660のフロア下構造

 空力面ではフロア下に各種カバーを備え、4輪の前方にストレーキを設置してスムーズな風の流れを実現したほか、同時にキャビン後方に設定したエンジンルームの冷却にも注力。センターピラーの左右に設定したインレットのほか、フロア下のセンターアンダーカバーなど2個所にNACAダクトを設置。フロア下からエンジン内に続く導風口を用意して、フレッシュエアーをエンジンルーム内に取り込めるようにしている。エンジン内に取り込まれた空気は、リアフード中央に設定されたスリットから上部に抜けていくレイアウトとなっている。

センターピラーはロールバーとしての機能だけでなく、エンジンルーム内に上部から外気を導くインレットも設定されている。運転席側からの外気でターボチャージャーと排気系パーツ、助手席側からの外気でインタークーラーを冷却する
フロア下の開口部にカバーを設置してフラット化。スムーズに空気が流れるようにして空気抵抗を減らしているほか、センターアンダーカバーとミッションアンダーカバーにNACAダクトを設置してエンジンルームに外気を取り込めるようにしている
S660の走行イメージ
パワートレーンと足まわり関連のイメージ

 走行性能のテーマは「痛快ハンドリングマシーン」で、サーキットだけでなく、一般公道でも誰もが痛快に走りが楽しめることを目指している。ミッドシップレイアウトによる軽快なハンドリングと不安を感じさせない安定感を手に入れるため、バッテリーや燃料タンクなどを車両中央寄りに設置して重量マスの集中を推し進め、前後タイヤの重量配分はフロント45%、リア55%に設定。エンジンを搭載するリア側を軽量化するため、軽自動車では初採用となるアルミサブフレームも使用している。これらに加え、ロールセンター高と重心高を徹底的に煮詰め、路面に吸い付くようなコーナーリングを実現しているという。

 足まわりではフロントサスペンションにマクファーソンストラット、リアサスペンションにデュアルリンクストラットを採用。サスペンションストロークを長くとり、フリクションの低い高性能ダンパーとスプリングレートの最適化などによって安定感のある走りと乗り心地のよさを両立させる。タイヤはヨコハマタイヤ(横浜ゴム)のスポーツタイヤであるADVAN NEOVA AD08Rを、共同開発でS660用にチューニングして純正採用。タイヤサイズはフロントを165/55 R15 75V、リアを195/45 R16 80Wに設定。リア側を大径サイズとして前後タイヤのグリップバランスを適正化している。

 電子制御でも走行性能をアシストするべく、レジェンドでも導入している「アジャイルハンドリングアシスト」を採用。車両の横滑りを防止する安全装備であるVSA(ビークル スタビリティ アシスト)のハードウェアを、より積極的に走行性能に活用するこの装備では、ドライバーがステアリング操作をしたときに車両の走行状態からヨーレートを予測。必要に応じてコーナーイン側の車輪にブレーキを軽く効かせ、旋回の初期応答をアシストする。さらにステアリングを戻して直進状態にするときも、反対側のタイヤにブレーキをかけて車両の姿勢をすばやく安定させるよう働く。

エンジン搭載位置の透視図
バッテリーはロールトップを収納するボンネット内の収納ボックス後方に設置。搭載位置もできる限り低くしている
燃料タンクの容量は25L(レギュラーガソリン)で、キャビン後方の隔壁とエンジンの合間に設定。中央部分はフロア下からエンジンルーム内に続く導風口が通過するスペースとなっている
前後重量配分は45:55。車体重心とヒップポイントが同じ位置になるようセッティングして、車両とドライバーが一体になって旋回する感覚を演出している
S660では前後トレッド幅を最大限に広げ、重心高を低く設定することでロールを抑え、4輪がしっかり接地するようにしている
ホンダ測定による、ヨー慣性モーメントをホイールベースで割った「ヨー慣性倍率」
マクファーソンストラット式のフロントサスペンション。キングピン角を大きく設定し、ボディーに対する固定方法も工夫してボンネットを低くしている。スタビライザーは前後とも全車標準装備
リアサスペンションはデュアルリンクストラットを採用。左側に向かって続いているのが軽自動車としては初採用のアルミサブフレーム
電動パワーステアリングは十分なねじれ剛性が確保できるようフィットから流用しているが、フィットではコンプライアンスステアでタイヤ角が微妙に変化したときにアンダーステア傾向になるよう、ギアボックスをタイヤの後方から操作する配置としているが、S660ではシャープなコーナーリングとダイレクトな操舵感を目的に前方側に変更している
ブレーキディスクのサイズは前後ともにφ260mm。ブレーキキャリパーの取付位置は、フロントを後方、リアを前方として重量マスをキャビン側に寄せている
タイヤは横浜ゴムと共同開発したADVAN NEOVA AD08Rを採用。ビートと同じく前後異径タイヤとなっている
コーナーリング時のライントレース性を高める「アジャイル ハンドリング アシスト」

 このほか、発表に合わせてS660のデビューを記念する限定車「S660 CONCEPT EDITION」もリリース。αをベースに660台のみを20万円高で販売するこのモデルは、ボディーカラーに「プレミアムスターホワイト・パール」、シートに「アシンメトリーカラー」を設定。ロールトップがボルドーレッドに変更され、ステアリングやシフトノブ、シートなどにレッドのステッチが使われスポーティなイメージが強調されている。

モデル エンジン 変速機 駆動方式 価格
α CONCEPT EDITION 直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ 6速MT 2WD(MR) 2,380,000円
CVT(7速モード付+パドルシフト) 2,380,000円

 純正アクセサリーブランドのモデューロでは、空力性能をさらに高めるエアロパーツやスポーツサスペンション、内外装の雰囲気を変えるドレスアップパーツに加え、電動式のアクティブスポイラー(16万2000円)を開発。アクティブスポイラーは車速が約70km/hを超えるとリフトアップしてリアタイヤの接地感を高め、減速して約35km/h以下になると自動格納される。

モデューロアクセサリーの装着車
アクティブスポイラーは車速に合わせて自動的に上下するほか、インパネに設置されるスイッチで手動操作も可能。ダックテール形状となっており、格納時にも存在感をアピールする
外観の雰囲気をがらりと変えるボルドーレッド色のロールトップは4月上旬に発売予定
S660にモデューロのアルミホイール「MR-R01」を装着した状態に合わせてセッティングしたサスペンションもラインアップ
ドアトリムの上から追加するだけで内装イメージが大きく変化するドアライニングパネル。左右セットで3万240円

(編集部:佐久間 秀)