インドネシアのジョコ大統領が日本と中国を歴訪した。昨年10月に就任して以来、東南アジア諸国連合(ASEAN)のメンバー以外の国を訪れたのは初めてだ。対外政策で日本と中国を重視する姿勢を示したといえよう。
一方で、インドネシアの発展に役立つ協力を日中の双方から引き出そうという、したたかな計算もうかがえた。日本は戦略的に関係を深めていく必要がある。
安倍晋三首相との会談では、海洋をめぐる包括的な協力をすすめる方針で一致し、安全保障から海洋関連産業の育成まで幅広く話し合う枠組みを設けることで合意した。両首脳は共同声明で「海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップ」をうたった。
ジョコ大統領は「海洋国家」構想を掲げている。それを踏まえ、互いに海洋国家として関係の拡大と深化をめざす新たな方針を打ち出したと評価できよう。
今後は外務・防衛担当の閣僚級協議(2プラス2)の開催や、両国の防衛相が署名した防衛装備品に関する覚書の具体化などを着実に進めていくべきだ。
ただ、南シナ海などで進出の動きを強める中国への姿勢では、安倍首相と大統領の間で微妙な温度差も感じ取れた。ジョコ大統領は中国の習近平国家主席との会談でも海洋協力の強化で一致し、習主席が唱える「海のシルクロード」構想と自らの「海洋国家」構想を連結させる方針で合意した。
日本と中国のいずれにも傾かないよう、大統領は注意深くバランスをとったとの印象だ。安倍首相からも習主席からも鉄道建設への協力を取り付けるなど、バランス外交がインドネシアの実利につながっている面がある。
インドネシアはASEANのリーダー的な存在で、アジアの安定と繁栄をめざす日本にとって大切なパートナーだ。アジア最大の経済大国となった中国と関係を深めたいインドネシアの立場に目配りしながら、日本は海洋協力を深めていかなくてはならない。
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