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 学生の2.6人に1人が受けるようになり、いびつさが露わになった奨学金。それが示すのは公教育の機能不全と、拡大する金利リスクだ。日本学生支援機構の遠藤勝裕・理事長へのインタビュー後編。(前回記事はこちら

国立大文系の授業料は1980年頃に約18万円。それが2013年には53万5800円とほぼ3倍、私立文系でも約30万円が約73万円と2.4倍になりました。多くの家計が奨学金を当てにしなければならないほどに、教育費は膨張しています。

(写真:陶山勉、以下同)

遠藤:親の世代と費用が大きく変わっています。それを予想して資金計画を立てていればいいですけど、さすがになかなかそうもいかない。今、年収が500万〜600万円、もしくは700万円と、平均水準を大きく上回っていても、どの家計も教育費でめちゃくちゃ苦しいですよね。

年収で生活の苦しさは語れない

 というよりも、年収水準では全く測れないわけです。例えば地方で年収400万円と東京で年収500万円なら、物価などが全然違うわけですから、一概には言えませんが500万円の方が恐らく暮らしぶりは貧しいですよね。でも、じゃあ地方に住むのがいいかと言えば、地方は疲弊しているし、そこの親の経済力では、東京の大学に行かせて子供の学費と仕送りを負担するのは大変です。すると、地方の子供から高等教育の機会が失われてしまう。

 高校無償化の議論があった時に、政治家が所得制限で910万円とか、900万円とか言っていましたが、正直言って「何を言っているのだろう」と思いましたよ。この人たちはサラリーマンをやっていないから、こんなことを言うのだと。東京でサラリーマンをやっていたら、900万円だろうが1000万円だろうが、子供を2人抱えていたら大変だと。子供の教育費のためにたばこをやめたなんていう仲間は、私の周りにもいっぱいいますよ。

義務教育や高校でも実際には家計負担が重く、親の所得格差がそのまま子供の学力格差になるということが指摘されています。

遠藤:そうですね。現在、公立小中学校の授業料はタダですね。所得制限がありますが高校も無償化でタダ。ですからそういう意味では、初等、中等教育段階では学校の先生の給料も含めて、かなり国のお金はかけられているのです。義務教育負担で文部科学省の予算は毎年何兆円とあります。

学力は高まっているのか

 ただ大きな問題は、そこでどれだけ子供の学力が高まっているかということです。高校の話になってしまいますが、経済同友会で提言を出した時に高校の教科書も全部チェックしました。久しぶりに読んでみたら、3年間でこれをきっちりと本当に勉強したら、社会にそのまま通用すると思いました。誰でもそう思うと思います。

 つまり学ぶ機会は今、相当程度保障されているんです。なのに、家計は教育にもっとお金を使おうとするわけですね。

 

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