アイドル戦国時代に“正統派の遺伝子”「さんみゅ~」を投入するサンミュージックの挑戦
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AKB48が圧倒的な売り上げ枚数でシーンを牽引する中、ももいろクローバーZが大旋風を巻き起こし、モーニング娘。を筆頭にBerryz工房、℃-ute、スマイレージなどハロー!プロジェクト陣はハイレベルなパフォーマンスでファンを魅了し続けている。avexからは東京女子流、SUPER☆GiRLSがキレキレのダンスで切り込み、安室奈美恵やSPEEDを育てたヴィジョン・ファクトリーはFairiesをドロップ、アイドリング!!!や恵比寿マスカッツといったテレビ番組出身グループも存在感を示している。地方に目を向ければ、SKE48(名古屋)やNMB48(大阪)などの48ファミリーは言うに及ばず、新潟のNegicco、福岡のLinQらもすこぶる元気だ。
世はまさにアイドル戦国時代。中央、地方、メジャー、インディーズの垣根を越えて、数百人、数千人の“アイドル”たちがしのぎを削り合っている。
そんな中、新たに鬨の声を挙げたのが、白いワンピースに身を包んだ9人の黒髪の少女たち「さんみゅ~」だ。名門プロダクション・サンミュージックにとってそれは、21年ぶりの新人アイドルであり、初のグループアイドルだという。今この時代に彼女たちを、岡田有希子の「くちびるNetwork」でデビューさせた意味とは。そして、戦国時代を勝ち抜くための戦略は──。同社新人開発セクションのトップを務める富岡弘明氏に話を聞いた。
* * *
──アイドルでサンミュージックといえば、やはり松田聖子さんが圧倒的な存在でした。聖子さんというアイドルは、どのように育てられたのでしょうか。
富岡氏 彼女には、これといって特別なことをやらせたわけではないんです。アイドルの魅力というのは、ルックスだったりキャラクターだったり楽曲だったり、いろいろなものがありますが、大きな比重を占めるのが声だと思うんですね。その子の声を聞いたときに、元気になれる、安らぐ、優しい気持ちになる、そういう気持ちが良くなる素晴らしい声を、松田聖子という子は持っていたんです。
──なるほど。声、ですか。
富岡氏 加えて、抜群の歌唱力、それに楽曲の良さですね。耳に残る心に残る歌を提供できた。そこが強かったんだと思います。松田聖子というアイドルは、最初は男性ファンが圧倒的に多く、彼女が嫌いだという女の子もたくさんいました。ところが「赤いスイートピー」という曲から、女の子のファンがガッと増えて、普通のアイドルから、またひとつ上のアイドルになった。「赤いスイートピー」はユーミン(呉田軽穂名義)の曲ですが、当時の女の子の心にスッと入っていった。そういう楽曲の力というものが、すごくあったんだと思いますね。同性のファンを掴んだのは、本当に大きかった。
──聖子さんの他にも、桜田淳子さん、岡田有希子さん、酒井法子さんなど、その時代でのトップアイドルを多く輩出している印象があります。
富岡氏 彼女たち、それぞれ魅力が違うと思うんですけど、うちのタレントに共通して言えるのは、“清潔感”でしょうか。そういう部分はすごくあった気がしますね。それと、なんといっても曲に恵まれていたこと。彼女たちも、1作ごとに歌唱力、表現力が成長していきました。ですから、こちらからコンセプトを作り上げて云々ということではない、ストレートに正攻法で勝負してきただけなんです。
──そんなサンミュージックにとって、「さんみゅ~」は21年ぶりのアイドルということですが、それだけの期間が空いてしまったのは、どういった理由から?
富岡氏 おそらく、時代だと思います。どんどん歌番組がなくなって、バラエティが増えていって、テレビというものが、芸人のみなさんが活躍する場に変わっていった。昔は歌の前座にお笑いというものがあったんですが、ある時期から逆転していくんです。芸人のみなさんの番組に、歌手が呼んでもらうという形になる。そういったタイミングで俳優やバラエティにシフトしていったということもありますし、これという人材に巡り会えなかったというのも、またあるのかもしれません。
──では今回「さんみゅ~」をデビューさせるにあたって、岡田有希子さんの曲を使う意図を聞かせてください。
富岡氏 まず、1980年代のアイドルの楽曲の良さというのがあります。メロディが豊富な時代なんです。ここ10年、20年メロディが軽視されているようが気がしているんですよ。どちらかというと、リズム……踊る、ということが大前提になっている。そういう中で、うちがやるからには正攻法をやらなきゃいけないだろうな、サンミュージックがやるんだから「こういう正統派のアイドルってどうですか?」という、そういうプレゼンテーションをしたいと。
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