- 早朝からテンションMAXの
撮影は、ちょっと大変! - 子育てを巡る夫婦のスレ違いをコミカルに描き、笑いと共感をもたらした本作。最終回を前に、撮影も佳境を迎えています。
「キャストやスタッフが想像力を働かせてアイデアを出し合い、『面白いモノを作ろう!』という思いでひとつになっている、熱意に溢れたいい現場です。デリケートなテーマでシリアスになりがちなところに、いかにコメディの要素を入れるか、みんなが楽しみながらやっています」
玉木さんは、仕事はできるけれど、家庭のことに関してはピントがズレた夫・陽一を好演中。悩んだり浮かれたり落ち込んだりのドタバタぶりに、何度も笑いが込み上げます。
「これでも6割ぐらいで演じているんですけどね。明るい作品なので、毎日を明るい気持ちで迎えられるのは嬉しいです。ちょっと大変なのは、日の短い時季の撮影なので朝が早く、7時半くらいからテンションMAXに持っていかなければいけないこと。朝イチから大騒ぎする撮影は、血管が切れそうです(笑)」
妻・知里を演じている倉科カナさんや、上司役の岸谷五朗さんなど、共演者との軽妙なやりとりも、回を追うごとにテンポアップ!
「倉科さんは明るくて、積極性や柔軟性も持ち合わせた女優さん。前室(控え室)にベビーベッドが置いてあって、娘役の華ちゃんがそこにいるので、僕らもそばで過ごしているんです。そこで『パパが来たよ』という言葉をチョイスしてくれる。自然とやっているんでしょうけど、温かい配慮だなと思います。岸谷さんも、こちらの言葉を拾ってアドリブを入れてくれたり、助けられています。コメディはとくに、台本のセリフだけでは、その空気感を作り上げるのが難しい。現場で生まれる言葉や動きが空気を作るうえでの支えになるので、各々が必要なものを一瞬で読み取ってチョイスし、アドリブを入れるようにしています」
演じている役柄と玉木さん自身の年齢がほぼ同じ、30代半ば。作品のテーマになっている結婚や子育てについて思いを巡らせる機会も、自ずと増えてきたそう。
「僕らの世代的にはすごくリアリティのある題材ですよね。華ちゃんと一緒に過ごしていると『かわいいな』と父性がわいてくるし、子どもができるとこういう問題が起きるんだな、という勉強にもなっています。僕は写真が好きで、自宅には暗室やカメラの機材庫などがスペースを大きく占めているんですけど、『結婚したら、これをそのまま自分の部屋にしていていいのか』とか、『作業用の防音部屋は子どもに譲った方がいいのか。でも……』とか考えてしまいます。違う環境で育ってきた二人が一緒に暮らすわけだから、どちらかが折れないと。難しいですけどね」
- 人に触れていなければ
新しいモノも生まれない
コメディからシリアスまで、多彩な役柄を説得力のある演技で生き生きと演じる玉木さんには、多くの演出家や監督からラブコールが。彼が大切にしている想いを聞きました。
「いつも等身大であること。世間一般、世の中がどうなっているかを把握して生きる姿勢は、仕事に返ってくると思います。40歳になっても50歳になっても『こういう人いるな』と思ってもらえる人間を演じたいなって。そういう説得力のある先輩たちをいっぱい見ていますから、自分もそうなっていきたいです」
そんな玉木さんが"普通"でいられるのは、やっぱり友達との時間。
「最近は、ごはん屋さんにしても洋服屋さんにしても、わりと新しいところに入るんです。気に入ったらお店の人と仲良くなって、そこから常連のお客さんとも知り合い、と横のつながりがどんどんできていく。異業種の人たちと話をすると、いろんな刺激を受けられて楽しいです」
誰とでも仲良くなれるオープンな性格なのかと尋ねると、「もともとは内向的で、言葉数もすごく少ない方でした」と昔を振り返りました。
「でもセリフも言葉だし、言葉を持っていなければ先に進めない職業だなと思うようになって。人間は一人では生きられない生き物。こんなにモノが溢れていても、人によって感化されることがほとんどだと思うんです。人に触れていなければ、新しい気持ちも生まれてこない。話していて、もちろん分かり合えないこともあるけれど、簡単にわからないからこそ、面白い。『この人とは合わないな』という感情も、それはそれで人間らしい感情だと思います。個性というのも、自分が作るんじゃなく、そういう人間同士の触れ合いのなかで作られて、周りから見て初めてわかるものじゃないかな」
- PROFILE
- '80年1月14日生まれ。愛知県出身。'01年、映画『ウォーターボーイズ』で注目を集める。以降ドラマ、映画、CMなど多岐にわたって活躍。現在、ドラマ『残念な夫。』で主演中。近年の出演作に、ドラマ『きょうは会社休みます。』、映画『神様はバリにいる』など。趣味の写真は写真展を開くなど、高い評価を得ている。
『残念な夫。』
フジテレビ系 毎週水曜22:00~22:54
一級建築士の榛野陽一(玉木宏)は、インテリアデザイナーの知里(倉科カナ)と結婚。誰もが羨むような明るく、笑いの絶えない家庭を築くはずだったが、妊娠・出産を境に、二人の状況は大きく変化する。育児に追われて余裕のない妻、子どもに愛情はあるものの、どう接していいのかわからず、家事に消極的な夫。お互いへの期待や想いはスレ違いまくり、ケンカ続発! 衝突を繰り返しながらも、"最高のパパ"になるべく奮闘する陽一だが……。
取材・文/木下千寿 撮影/浜村菜月(LOVABLE) スタイリスト/上野健太郎
ヘア&メイク/渡部幸也(ELLA)
ヘア&メイク/渡部幸也(ELLA)