【議会はいま】(2)改革意識 最下位の県、進む市町
25日、佐賀市役所の議会棟。「行政、医療、農業、教育…。ICT(情報通信技術)の導入事例は毎日のように報告されている。市議会もICT化による運営の効率化や積極的な広報広聴活動を速やかに構築すべきだ」。議員の全員協議会で、松永幹哉市議(53)は「市議会ICT推進基本計画」の意義を力説した。
計画は市議会基本条例に基づく議会改革等検討会の答申を受けて策定。4月以降、従来はなかった委員会のインターネット動画配信や議会資料の電子化、交流サイトを活用した市民との情報共有などを進める。
佐賀市議会は2009年、議員や議会の在り方を明文化した議会基本条例を県内で初めて施行した。これまでも本会議を動画配信し、市民に疑念を持たれないよう、各議員の政務活動費の支出明細書をホームページで公開してきた。「ICTは議会の透明性を高める有効な道具になる」と松永市議は話す。
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佐賀市議会は早稲田大学マニフェスト研究所の13年度議会改革度調査で全国1444議会中、県内最高位の62位に入った。嬉野市議会も日本経済新聞社産業地域研究所の13年の議会改革度調査で、県内トップの9位に位置付けられた。
いずれも情報公開度や住民参加、運営の在り方を数値化したランキングで、佐賀、嬉野両市議会は議会基本条例を設けていることや市民向けの議会報告会を積極的に開催してきた点も評価された。
一方、県議会は議会棟で閲覧を申し込まないと政務活動費の中身が確認できないなど、公開度は低い。議会報告会のような県民に説明する場もない。早大調査は516位で、47都道府県議会で全国最下位。日経の都道府県議会調査でも40位に低迷した。
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「転機は議会基本条例の制定。約1年かけて議員が勉強した結果、意識が大きく変わった」。佐賀市議会の石橋光事務局長は、背景にはかつての苦い経験もあったと振り返る。
1992年、議長選をめぐる贈収賄事件で現職市議6人が逮捕された。「市民の信頼回復努力が長年欠かせなかった」。発案者で09年の施行当時の議長、福井久男さん(78)は語る。
県内20市町のうち議会基本条例があるのは10市町だけだが、未制定の市や町でも改革は徐々に進んでいる。武雄市議会は、議場に資料を映し出す大型スクリーンを設け、聴覚障害の傍聴者向けに文字通訳を導入した。吉野ケ里町議会は06年の合併を機に政務活動費を廃止し、今年2月には初の議会報告会を開いた。
改革が遅れた県議会をよそに、住民により近い市や町で議会改革が進む背景には、有権者の関心の薄れに対する危機感もある。
今月8日、佐賀市内であった民主党県連の政治スクールで、講師を務めた片山善博元総務相は議会の閉鎖性を痛烈に指摘した。「日本の地方議会は、市民の発言機会が抜けた『ガラパゴス議会』。もっと市民の意見を聞く場を設けるべきだ」
=2015/03/28付 西日本新聞朝刊=