ときに政権への独自の見解をさしはさむなど、お堅いNHKの報道番組のキャスターとしては異例の存在だった大越健介氏が、3月末に降板する。唐突な異例人事の裏側でなにが起きていたのか。
前例のない交代劇
「まさに青天の霹靂でした。NHK局内の現場でも、誰もこのタイミングで大越さんが降りるとは思っていなかった。まさに異例のキャスター交代ですよ」
こう語るのはNHK報道局の記者。夜の報道番組『ニュースウオッチ9』で5年にわたってキャスターを務めてきた大越健介氏が、3月いっぱいでキャスターを降板することになった。『ニュース9』といえば、NHKの看板番組、そのキャスターである大越氏はNHKの「夜の顔」だが、今回の人事の経緯には不可解な点が多い。
「NHKでは、毎年10月か11月頃に『キャスター委員会』という会議が開かれます。『ニュース9』や『おはよう日本』『あさイチ』といった番組のメインキャスターを誰にするかを話し合う場で、翌年春の番組改編などでキャスターが代わる可能性があれば、そこで新任のリストが挙げられ議論される。
昨年の委員会では、『ニュース9』に関してキャスター交代の話が持ち上がらなかったので、当然、大越さんは留任するものだと皆が思っていた」(前出の記者)
ところが、年が明けてから突然、大越氏が交代するという報道が出た。NHK職員のほとんどが、報道で彼の交代を知ったのだ。あまりに唐突な話だったので、NHK上層部が官邸の意向をうかがって行った特別人事ではないかと見る向きも多い。NHK関連会社の幹部が語る。
「大越さんは昨年暮れ、上層部から呼び出され、降板を言い渡されたそうです。本人も寝耳に水だったので、なぜこのタイミングなのか、もう少しやらせてもらえないかと食い下がったが、決定は覆らなかった。表向きは通常の異動による交代ということになっているが、事実上の『左遷』といっていい人事で、本人も煮え切らない思いでいっぱいのようです」
大越氏は'61年、新潟県生まれ。東京大学在学中には野球部のエースとして活躍した。'85年、NHKに入局し岡山支局を担当した後、政治部記者として頭角を現していく。
政治部では自民党の旧経世会(現・平成研究会額賀派)を担当した。経世会は放送局に影響のある郵政族議員を数多く輩出してきた田中角栄系の主流派閥。その担当記者は、政治部の出世コースといえる。当時の大越氏を知る全国紙の編集委員が語る。
「橋本龍太郎首相や野中広務官房長官(共に当時)の担当記者として活躍していました。野球部出身だけあって体力には自信があるようで、とにかくガッツで取材をするタイプ。NHKの政治部記者というと、政治家にすり寄っていく官僚タイプが多いのですが、大越さんは違った。取材で疲れてくると下ネタを連発して大笑する、豪放磊落な記者でしたね」
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