川崎中1殺害事件の被害者母批判、ベビーカー論争…この国の「母親」を取り巻く息苦しさの“正体”

2015年3月30日

「正しい母親」なんか、どこにもいない

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    川崎の中1男子殺害事件の被害者の母親、電車内でのベビーカー論争、ママタレントの子連れ居酒屋バッシングなど、「母親」という立場に対しての論争が相次いでいます。なぜ「母親」は責められ続けるのでしょうか。自身もワーキングマザーの人気ブロガー・kobeniさんに、現代の「正しい母親像」についてご寄稿いただきました。

    ■ わたしたち、ちゃんとしてない母親ですか

     川崎の中1男子殺害事件に関して、作家の林真理子さんが、「お母さんにちゃんとしてもらわなければ」と母親を責めるようなエッセイを寄せたとして、話題になっていた。事件の被害者のお母さんはシングルマザーだったようだ。林さんはエッセイの文中で、離婚の前提条件として「十分な準備をし、祖父母の協力を取りつけてほしい」と述べている。私がニュースを追った限りだと、母親は島根県のある島に住んでいたが、離婚し5人の子どもを抱え祖父母を頼って彼らの住まいがある川崎に出てきた、とのことだ。だが去年の秋から、祖父が体調を崩し、祖母がその看病で手一杯になった。母親は、仕事や子どもたちの世話で忙しい日々の合間をぬって、祖父の介護もしていたらしい。

     彼女の話、私はまったく他人事ではない。私も上の子の子育て中は、両親に手伝ってもらっていた。だがしばらくして母が病に倒れ、あっという間に介護が必要な体になり、看病などに不慣れな父はすぐ音を上げた。その時、私は下の子を妊娠中。夫の両親は遠方、日常的に子育てや介護で頼れる身内はいない。お腹はどんどん大きくなる。正直、まったく予想外の展開だった。「詰んだ…」と思った。ああ、こんなに豊かな先進国の首都に暮らしているのに、わたし、こんなに簡単に詰むんだ、と。

     ベビーカー論争はいつまでも止まないし、ママタレントが子連れで居酒屋に行ったり、髪の色を変えたりすればバッシングされ、育児ノイローゼの母親が子どもを殺めてしまう事件報道が続く。この国の「母親」は、要求されるレベルが過度に高く、奪われるものが多い。リスクばっかり大きくて、リターンが少ない。

    ■ 育児書に、「正解」は書いてあるのか

     某ママ向け女性誌には、「悪目立ちしない」というワードが頻出する。周囲から求められる常識にキチンと従い、良き妻・良き母を演じてこそ一人前であるという、無言のプレッシャー。

     思えば一人目の育児は、育児書とにらめっこし、正解を探す日々だった。私の育児法は正しいのか。子どもの命に関わるかもしれないのだから、責任重大だ。定期健診で、「他の子より太っている」と言われただけで、とても傷ついて不安になった。だって母乳で育てているし、子どもの飲みたい気持ちなんか私にはコントロールできない。「発語が遅いのは母親の愛情不足なんじゃないか」などと、私の父にアドバイスする見知らぬ他人(ただの知り合い)に激怒し落ち込んだこともある。「男女平等」の教育の元に育った我々でも、母親になった途端に「伝統的な社会規範」に翻弄されるハメになるのが現実である。

     しかし、実は二人目ともなると、子育ては雑もいいところ。そこまでナーバスになることはなかったな…と気付く。離乳食はお味噌汁でいいし(いろんな食材をバランスよくとれる)、トイレトレーニングだって、身体の成長と紐づいたことなので、焦ってもあまり意味がない。赤本みたいに分厚い育児書のほとんどが、「やるべき」ではなく「やってもやらなくてもいい」ことだったのだ、とわかった。

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