(2015年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
イエメン内戦へのサウジアラビアの軍事介入は、スンニ派アラブ諸国がシーア派の競合国イランと対峙する一触即発の冷戦を激化させている。
3月26日早朝に行われたサウジアラビアの戦闘機による空爆は、イエメンの防空網や、イエメン国内の多くの領土を制圧したシーア派武装組織「フーシ」の政治拠点のほか、フーシの協力者であるアリ・アブドラ・サレハ元大統領に忠実な特殊部隊の拠点を狙った。
軍事攻撃を指揮したのは、今年1月に王位を継承したサルマン国王の息子で防衛相のムハンマド・ビン・サルマン王子だ。フーシの民兵部隊は、イエメン北部の山岳地帯の拠点からサウジアラビアにロケット弾を発射して応戦したと述べた。
対立が激化する中、イスラム教スンニ派の10カ国連合が支援するサウジの介入が地域の戦火拡大に火を付けるとの不安がある。
空爆から数時間内に、イランの外相は軍事行動を非難し、戦闘停止を求める声明を発表した。イランの代理勢力であるレバノンのヒズボラも、イエメン国内での「不当な攻撃」を非難した。
終わりの見えない紛争
「今回の介入の政治的道筋が明確でないため、事態がエスカレートする道が見て取れる」。元駐サウジアラビア英国大使で、英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)中東オフィス代表のジョン・ジェンキンス氏はこう言う。「これがどこで終わるのか、分からない」
サウジアラビアとイランは長年対立しており、イラクやシリアなどの戦場で、双方の代理勢力が戦いを繰り広げてきた。ここへ来て、サウジ軍がイランの代理人と見なすフーシの民兵組織を直接攻撃しており、この対立が他国を巻き込むのではないかという不安を招いている。
今回の空爆を受け、湾岸諸国はすでに国内の安全保障対策を強化している。例えば、石油輸出国クウェートは、国内の石油施設周辺の治安対策を強化した。やはり懸念されているのは、イエメンの混乱によってジハード(聖戦)主義者のグループがスルタン(国王)の健康不安を利用するのではないかという懸念がある隣国オマーンだ。