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【国際】

内戦4年 シリア混迷 

カイロ近郊のシックスオクトーバーで、内戦のためにエジプトで生活しているムハンマド・イセドさん

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 【シャルムエルシェイク=中村禎一郎】中東の民主化運動「アラブの春」を受け、内戦につながるデモが二〇一一年三月にシリア全土に拡大してから四年が過ぎた。激しい戦闘は今も続いており、内戦が沈静化する気配はない。シリア人権監視団(ロンドン)によると、これまでの犠牲者は東京都渋谷区の人口とほぼ同じ二十一万五千人以上となっている。

 内戦では、国際社会の対立を背景にアサド政権、イスラム戦線や自由シリア軍などの反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の三勢力が互いに争う。国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」やクルド人勢力も活動しており、状況は複雑だ。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、シリア人難民は少なくとも三百万人。

◆「僕の知る祖国消えた」

 「シリアに戻るのが夢。でも、僕の知るシリアはもうない。祖国が消えた」。シリア人のムハンマド・イセドさん(20)は衣料品店に勤めながら首都カイロ近郊のシックスオクトーバーで暮らしている。シリア内戦が激化する中、二〇一三年二月に家族六人で首都ダマスカスからエジプトに逃げてきた。

 一一年三月、中東の民主化運動「アラブの春」の影響を受け、シリアでも反政権デモが広がっていた。当時高校三年生だったイセドさんもデモに参加していた。

 求めたのは「平等」だった。指導層に入れるのはアサド大統領と同じイスラム教シーア派系の人々。イスラム教スンニ派のイセドさんは差別されていると感じていたが、デモの先には輝かしい未来があると信じていた。

 だが、シリアはデモをきっかけに内戦に突入。シーア派系のアサド政権と反体制派を中心とするスンニ派勢力の間では殺りくが続き、共存することが難しいほど互いへの憎しみが深まっているという。

 「もし戦いが終わっても、憎しみはなくならない。もう平和なシリアは戻ってこない。『アラブの春』がなければ、こんなことにならなかった」。「アラブの春」は破壊の始まりだったと、イセドさんは感じている。「あの時デモに参加したことを、今は後悔している」

 UNHCRによると、エジプトには現在、十三万七千人のシリア難民が生活している。エジプトはモルシ前政権時代にシリア難民の受け入れに積極的だったが、現在は規制を強めている。 (シックスオクトーバーで、中村禎一郎、写真も)

 

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