会社を切り盛りする取締役に社外から少なくとも2人を登用すること。東京証券取引所が6月から適用する上場企業の行動指針に、そんな内容が盛り込まれる。実施しない場合はその理由の説明が求められる。

 経歴も専門も異なる人が取締役会に入り、株主や社会の代表として経営を監視し、助言すれば、会社の発展につながるはずだ。そんな考えから、社外取締役の導入が進められている。

 昨年の通常国会で成立した改正会社法も社外取締役の導入を強く促しており、東証1部上場企業ではすでに社外取締役を置く企業が7割を超える。

 今回、東証の指針が「2人以上」とするのは、社内出身の取締役の中に1人だけ社外取締役がいても、力を十分に発揮しにくいと考えられるからだ。

 日立製作所の場合、12年6月から取締役の過半数を社外取締役にした。「取締役会では『こんな低い営業利益率でよく満足してますね』と、社内役員では考えられない厳しい指摘が出るようになった」という。14年3月期に営業利益が23年ぶりに過去最高を更新したのは、円安の恩恵もあるが、取締役会の活性化も刺激になったという。

 社外取締役が果たす役割は様々だ。社内の常識が社会とずれていないかチェックすることも、その一つ。創業者が始めた不採算事業からの撤退といった厳しい判断も、社外取締役の方がやりやすい。外国人や女性の社内登用に限界がある場合、外部から招くことで経営陣に多様性をもたらすことができる。

 もちろん、社外取締役を置きさえすればよいわけではない。最近、注目を集めた大塚家具にも、複数の社外取締役がいたが、それでも騒動は防げなかった。社内と社外とを問わず、取締役には企業統治の重い責任がある。そのうえで、社外に人を求めるなら、それぞれの企業が、自分たちの弱点を認識し、それを補うにはどんな人材が必要か考えなければならない。

 すべての上場企業が複数の社外取締役を置くには、新たに延べ数千人の社外取締役が必要になる。これまでも特定の経済人や研究者が何社も兼任する例があったが、職責を果たすには限界があるだろう。

 人材をどう確保していくのかはこれからの課題だ。経営の経験者が、次は社外取締役として別の企業の経営にかかわることが当たり前になる。そんな流れを促すのも一案だろう。各企業も社会も、より広い視野から人材について考え、経営者と経営を鍛える取り組みを進めたい。