ナイジェリア:ボコ・ハラム凶暴化 地域ごと火攻め
毎日新聞 2015年03月29日 22時28分(最終更新 03月29日 23時32分)
西アフリカ・ナイジェリア北東部のイスラム過激派「ボコ・ハラム」が最近、町や村を「火攻め」にし、地域全体を破壊するケースが目立っている。2月中旬、ボコ・ハラムが隣国チャドに初めて越境攻撃を仕掛けたチャド湖岸の漁村ヌグブアでは、草ぶきの家々が燃え尽き、黒こげになった大地が広がっていた。これまでにナイジェリアでは、ボコ・ハラムの襲撃で約150万人が家を追われ、約20万人が難民として周辺国へ脱出したと言われる。そして今、地域を焼き尽くす蛮行が、国境を越えて広がりつつある。【ヌグブア(チャド西部)で服部正法】
今月中旬、ヌグブアで出会った若い女性が地面を指さした。「ここで2人が死んだ」。その先に直径約3メートルの黒く丸い跡が点在していた。乾いた草で作った伝統的な家は、火がついたらひとたまりもない。イスラム教徒が多くモスク(イスラム礼拝所)もあるが、その垣根も焼け焦げていた。
地元の人の話などによると、2月13日午前2時ごろ、約30人のボコ・ハラム戦闘員がチャド湖を小舟で渡りヌグブアに上陸。家を失った女性ファティマ・サイドゥさん(40)は「銃声が聞こえたので外に出たら、あちこちから火が出ていた」と話した。女性のファルマタ・クレアスクさん(35)が吐き捨てるように言った。「町を焼く彼らのどこがイスラム教徒だと言うのか」
ヌグブアの詳しい被害状況は不明だが、今年1月、対岸にあるナイジェリア北東部のバガ、ドロンバガが焼き払われ、計約2000人が死亡したとの指摘もある。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「ボコ・ハラムによるおそらく最悪の虐殺だ」と非難した。また今月初旬、同じ北東部ヌジャバの村が焼かれ60人以上が死亡した。
ドロンバガを脱出し、今は国連児童基金などが支援するチャド西部バガソラのキャンプで難民生活を送る農業の男性、ナシル・サイドゥさん(37)が襲撃時の様子を語ってくれた。戦闘員は「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と唱えながら来襲し、それと同時に火が放たれ、中心部の魚市場から煙が上がった。
湖岸へと逃げ、ボートに100人ほどが乗り込んで離岸。だが、直後に頭を布で巻くなどした若いボコ・ハラム戦闘員約20人がオートバイなどで乗りつけ、銃撃した。湖に向かって逃げる男性らが、次々撃たれた。女性や子供も倒れ、岸辺は悲鳴で満たされた。