「取引先の社員が偽名を使っているらしい」。こんな風にはじまるツイートが、1万6000件近くリツイートされ、大きな反響を呼んだ。
投稿者のツイートによると、「取引先はそれなりなところなので、ウチに出入りする人間の身元をこちらで調査するような事は基本的にしない」のだが、「偽名とは穏やかではない」として、事情を調べてみたのだという。
その結果、「本名が『山田精霊(やまだふぇありい)』さん(仮名)である事、改名申請中だという事が判明」。投稿者は結局、「何も無かった事にしておいた」という。これは過去の話だそうで、問題になった人物は改名申請が無事に通り、いまは別の名前で生活しているそうだ。
ネット上では、これは「キラキラネームだ」として、そのような名前を親につけられた人に同情する声が多く出ていた。一般論として、職場で「通称」を使うことに、法的な問題はないのだろうか。鈴木徳太郎弁護士に聞いた。
●一般的には控えたほうが良いが・・・
「一般論でいいますと、合理的な理由がないのに『通称』を使うのは、トラブルを招くおそれがありますので、控えたほうがよいかと思います。
ただ、戸籍名でない名前、つまり『通称』の利用全般を規制する法律はありません」
鈴木弁護士はこう述べる。それは、通称を利用してもいいということだろうか?
「通称を問題なく使えるかどうかは、その場面によります。
たとえば、Aさんが『通称』を対外的に幅広い場面で使用していて、周囲の人が『通称=Aさん』だと支障なく特定できるのであれば、それを日常の場で利用することは、基本的に可能だと言えるでしょう」
●本名が「キラキラネーム」の場合は?
それでは「本名がキラキラネームで、改名申請中だから」という理由の場合、通称を使うのは控えたほうが良いだろうか?
「『本名がキラキラネームで、改名申請中だ』というのは、日常的に通称を使う理由として、一応の合理性があると思います。したがって、職場での日常的な呼称としてなら、通称を使っても問題ないと思います。
ただ、契約書を作る場合などは、話が別です。名前には『個人を特定する』という機能があります。簡単にいえば、『その人が誰か』ということを、対外的に明らかにする機能です。契約は『個人を特定すること』が強く要求される場面ですので、本名を使用したほうが安全でしょう。
このほか、住民登録や戸籍に関する届出書を行政に出す場合など、性質上、本名でなければならないものもあります」
たとえ個人が特定できても、契約書では「通称」を使わないほうが良いのだろうか?
「有名な作家が、そのペンネームで契約をした場合などは有効とされる可能性が高いと思います。ただ、それでも重要な書面では避けたほうが無難ですし、契約書は本名で記載するほうが常識にも合致すると思います」
鈴木弁護士はこのように述べていた。
現在、第一東京弁護士会多摩支部副支部長、府中市情報公開・個人情報保護審議会委員を務める。
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