黒田裕子さんNPO:震災弱者支えて20年 3月末で幕
毎日新聞 2015年03月28日 13時08分
◇阪神や東北で活動、高齢者見守り、有志が継続
阪神大震災や東日本大震災で被災した高齢者らの支援に尽力し、昨年9月に73歳で亡くなった黒田裕子さんが理事長を務めたNPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(神戸市)が、今月末で解散する。阪神大震災から20年がたち活動に区切りをつけるという。高齢者見守り活動は有志らが任意団体を組織して受け継ぐ。
同NPOは阪神大震災直後の1995年6月に医療・福祉関係者らが結成。副総婦長を務めていた病院を退職した黒田さんが中心となり、「孤独死」を防ぐため、同市西区の仮設住宅で24時間態勢の見守りを始めた。復興住宅でも活動を続けた。東日本では、宮城県気仙沼市面瀬(おもせ)地区の仮設住宅に看護師を24時間常駐させて被災者の健康相談に応じてきた。
解散は、黒田さんが亡くなって事業を支えきれなくなった事情もあり、今月3日の理事会で決定した。気仙沼市での見守りは今月末で終了する。神戸市須磨区の復興住宅「新大池東住宅」(180戸)での活動は、有志が同じ名称の任意団体を結成して継続する。
黒田さんは生前、同住宅の一室に泊まり込み独居の高齢者を見回ってきた。現在は週3回、集会所で「ふれあい喫茶」を開き、スタッフが住民の健康状態をチェック。異常があれば専門機関につなぐシステムをつくっている。同住宅は住民の9割超が高齢者で、半数が独居だ。住人の村川正徳さん(70)は「住民の居場所が残ってありがたい。住民同士の見守りにも取り組みたい」と喜ぶ。
同NPOは今月20日、閉鎖する同市西区の拠点施設「伊川谷工房」で最後のお茶会を開き、高齢者とスタッフら約50人が名残を惜しんだ。手工芸など生きがいづくりの場も提供してきた工房に、復興住宅から約15年間通い続けた濁池(にごりいけ)文子さん(76)は「なくなるのはつらいが、前向きに生きることが黒田さんへの恩返し」と涙ながらに語った。
新団体は他団体にも呼びかけ、一般公営住宅にも見守りを広げる方針。同NPO事務長で新団体代表となる宇都(うと)幸子さん(70)は「黒田さんは皆の心の中で生き続けていく。『一つの命に寄り添う』遺志をしっかり受け継いでいきたい」と決意を語った。【桜井由紀治】