大震災4年:「東電に奪われた」双葉町から県外避難
毎日新聞 2015年03月29日 10時20分(最終更新 03月29日 10時50分)
東日本大震災から4年が経過した今も、福島、宮城、岩手3県から5万人以上が県外での避難生活を送っている。特に福島からの避難者は、今も続く東京電力福島第1原発事故の影響に帰還をあきらめる人が多い。
とつとつとした語り口に、ときおり怒りがにじんだ。福島県双葉町長塚の稲作農家、西内重夫さん(72)は、今も避難先の茨城県つくば市並木の借り上げ住宅で妻タキ子さん(74)と暮らしている。自宅は第1原発から約4キロ。「先祖代々の田があり、家がある。戻りたい」が、帰還困難区域の中だ。
震災前、妻と花卉(かき)農家を営む長男芳徳さん(46)夫婦、孫2人と同居していた。「70歳になったら農機具のローンを返済し終わるように計画し、長男に借金ゼロで全てを譲ろう」と考えていた。
悠々自適の生活まであと2年。田植えに備え、水田でもみ殻を集めていた時、大きな揺れに襲われた。自宅は海から約2・5キロ。津波は自宅近くで止まり、ホッとしたのもつかの間、「ドーン」と地響きのような音が聞こえた。原発事故だった。長男家族と一緒に避難したが、長男が埼玉県で職を見付け、今は離れて暮らす。残留放射線による孫の被ばくリスクを考えると、もうふるさとには戻れないと思う。長男夫婦も「汚染されている双葉町には戻れない」とほぼ帰還をあきらめている。「人生、財産のすべてを東電に奪われた」。西内さんは声を震わせた。【庭木茂視】